2022年5月26日(水) ウクライナのこと その13
アメリカのバイデン大統領が初めて来日し、日米首脳会談が持たれ、引き続き24日には、印、豪の首相を入れて、QUAD首脳会議が開催されるなど、この所、慌ただしい動きだ。
本稿では、ウクライナをめぐる最近の状況について取り上げたい。
◇北欧2国がNATO加盟へ
フィンランドとスエーデンが、長年の軍事的中立政策を変更し、NATO加盟に舵をきったようだ。
中立政策を取る国は、
・スイス 軍事、経済両面で中立
・オーストリア、スエーデン 軍事面で中立(経済面では、両国はEUに加盟)
で、一方、フィンランドは、中立政策ではなく、ロシアへの配慮から、NATOに加盟していないようだ。
NATO加盟国の拡大状況を、下図に示す。
上図の後の2020年3月に、北マケドニアが30番目として加盟
特にフィンランドは、1300kmものロシアとの国境線があり、ロシアのウクライナへの軍事進攻は、直接的で具体的な脅威となっている。
以前、第二次世界大戦時に、当時のソ連軍の侵攻を受け、カレリア地方の一部を放棄せざるを得なかった、という、苦い経験があるようだ。
また、スエーデンも、加盟申請を決定したようだ。 バルト海に面した、ロシアの飛び地のカリーニングラードからほど近い、スエーデン領のゴットランド島では、ロシアからの侵入に備えた動きが慌ただしいようだ。
次の図で、カリーニングラード(下部)と、ゴットランド島を示す。
6月に、スペインのマドリッドで予定されている、NATOの首脳会議で、両国の加盟が承認される見通しという。
◇トルコの反対
NATOに加盟するには、現加盟30か国すべての賛成が必要という決まりのようだが、 加盟国であるトルコの、エルドアン大統領が、北欧2国は、クルド人テロ組織を支援している、と加盟に反対を表明している。
(トルコ大統領、北欧2か国のNATO加盟に難色崩さず - 記事詳細|Infoseekニュース.html)
反政府のクルド人テロ組織問題は、トルコにとっては、重要な問題だろうが、NATO軍事同盟とは、筆者には、少し異なる問題と思われる。強硬に反対を続けると、トルコは、加盟各国の総スカン、を喰らい、孤立するリスクもある。
一時、トルコが、ウクライナ問題で、パイプのあるロシアとウクライナとの、仲介役を買って出て、国内のアンタルヤで、休戦に向けた会議を、2回、開催したことがある。結局、両国は主張を譲らず、成果はなかったようだが、ブログの下記記事で触れている。
ウクライナのこと その1、その5 (2022/3/16、 4/2)
エルドアン体制は、国内的には、強権的、専制的と言われているようだ。
◇ロシア外交官の抗議の辞任
ロシア外交官が、抗議の辞任をした、というニュースが流れた。ジュネーブの国連欧州本部のロシア代表部に20年も勤務していた、ベテラン参事官のボリス・ボンダレフ氏である。
(ロシア外交官が抗議の辞任 「主戦的で、うそと憎悪だけ」(共同通信) - Yahoo!ニュース.html)
国外の出先の国際機関で仕事していると、客観的な動きがよく見えるようで、ロシアのウクライナ侵攻については、「主戦的で、うそと憎悪だけ」、と非難しているようだ。
この動きは、筆者にとっては希望の光で、ロシアにも、発言の自由と良識が残っている、と思えることだ。
◇終結の姿
長期化が避けられないウクライナ情勢について、素人ながら敢えて、最終的な、「終結の姿」を、幾つかのケースに分けて想定して見た。
△1 ロシアの完全撤退(クリミアからも)
ウクライナが領土の主権を完全回復
ウクライナがNATO加盟へ
世界が、長年望んでいる状況だが、実現は非常に難しい。
△2 クリミアは現状 ドンバス地方からのロシアの撤退
ドンバス2州での反政府勢力の存在などから、実現は難しい。
△3 ロシアが、ロシア本土からクリミアまでの陸路を制圧
東部の、ドンバス地方(ルガンスク州、ドネツク州―マリウポリを含む)と、クリミア半島の付け根のヘルソン州
等を対象に、クリミア並みに、東部一帯をロシアへ編入。
編入時は、地域の住民が選択した、という筋書きにする。
△4 ウクライナの消滅
ウクライナ全土をロシアが制圧し編入(ロシア内では、ウクライナ自治共和国となる)
この時、世界はどうするか? 力による現状変更に対抗する措置が問われる!
第三次世界大戦や核戦争の可能性もあるのだが、このケースまでは行かないだろう。
筆者の想定では、この数年では、可なりの確率で、△3の状況になりそうに思える。
ウクライナの5/24時点の戦況地図は、下図のようで、ロシアからクリミア迄の陸路が縦断するのだろうか?
このような状況に、世界はどう対処できるのだろうか?