つれづれの記

日々の生活での印象

柿のある風景

2010年01月30日 14時33分29秒 | 日記
1月30日(土) 柿のある風景  
 昨年の11月頃、デジタルテレビ 7チャンネル、TV―TOKYOの番組で、「日本の原風景」として、和歌山県葛城町の「串柿」つくりが紹介された。皮をむいた柿を、10個づつ、長い串に刺し、専用の干し台に、次々と連ねて吊り下げた光景は、まるで、橙色の玉簾のように鮮やかである。初めて目にするだけに、今の日本にも、こんな風景があったのか、と、新鮮な驚きであった。機会があれば、その最盛期に、是非、訪ねて見たい場所の一つである。
 以下の葛城町のサイトに、温もりのある写真が、紹介されている。 
 串柿の里

 番組の中で、並んだ10個の柿が、何を意味するかの説明があり、成る程と思い、すぐメモしておいた。
    左端の2個と、右端の2個は   いつも にこ(2個)にこ(2個)
    真ん中の6個は         仲(中)睦(6つ)まじく
という事で、夫婦や家庭が円満であるように、との願いが込められているようだ。7・7調の素晴らしい掛け詞(ことば)になっており、先人の知恵に、脱帽した次第。

 自分は、これまで、串柿というものの存在を、聞いたことが無かった。ネット情報によれば、この串柿、家を守る刀を象ったものだそうで、関西方面では、正月に、これを、鏡餅の上に乗せて飾るそうな。正月用の各種飾りの一つとして、注連縄(しめなわ)、橙(だいだい)、裏白(うらじろ)などと同じく、この串柿も、ちゃんと紹介されている。関西地域には、串柿を取引し流通させる、市場もあるという。干している時の串柿の鮮やかな橙色が、干した後は、どんな色になるのか、又、飾り終わった後は、どうするのか、少し気になるところではある。

 柿といえば、お馴染みの「干し柿」がある。こちらは、“へた”の柄に、小枝を付けたまま、柿の皮を剥(む)き、小枝を縄の撚り目に挟んで、数珠繋ぎにして、家の軒端などに下げて干す。この光景も、東北地方の山里などの、秋の風物詩の一つである。以下の写真が素晴らしい。
干し柿風景 

 干して暫くすると、白い粉が浮き出してくる。これは、中の糖分が結晶化したものだそうな。渋柿にも、甘柿と同じように、元々、糖分も含まれているのだが、渋味の素であるタンニンに、抑えられているという。干す事によって、可溶性のタンニンが、不溶性になり、渋抜きされるようだ。干し柿の、ほの甘~く、しこしことした食感は捨てがたい。
 干す事によって、柿の渋味が、正反対の甘味に変化していく化学的過程は、不思議でもあり、人間社会の出来事にも出てきそうで、面白い。
 渋柿を甘柿にするのに、干す他に、
    “へた”の付け根に焼酎を染込ませ、暫く、袋や缶に入れて置く
    ぬるま湯の中に漬けておく
なども、以前の田舎では、どの家庭でも、よくやったものだ。
 雪国では、柿の実を、木の枝に成ったままに残しておくと、冬場になって、甘く軟らかくなる。柿の実のオレンジと、上に被った雪の白さとの対比が、素晴らしい風景となる。これは、渋味を甘味に変える、天然の冷蔵庫と言えるだろうか。この柿は、人間様だけでなく、鳥たちにとっても、冬場の、美味しいご馳走になる。

コメント
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