一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『ビジネスで失敗する人の10の法則』

2009-07-21 | 乱読日記

著者のドナルド・R。キーオ氏は1980年代にゴイズエスタCEOの元で12年間にわたりコカ・コーラ社のCOOを勤め、その後投資銀行の会長やバークシャー・ハザウェイの取締役(ウォーレン・バフェットとは50年前オマハで向かいに住んでいたとき以来の友人らしい)などを勤めているアメリカでは有名な経営者のひとりのようです。

本書は長年の講演をまとめて10(+1)の教訓と印象的なエピソードにまとめています。

法則1 リスクをとるのを止める
法則2 柔軟性をなくす
法則3 部下を遠ざける
法則4 自分は無謬だと考える
法則5 反則すれすれのところで戦う
法則6 考えるのに時間を使わない
法則7 専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する
法則8 官僚組織を愛する
法則9 一貫性のないメッセージを送る
法則10 将来を恐れる
(おまけ)法則11 仕事への熱意、人生への熱意を失う

と、いろんな人が繰り返し語っていることではあるのですが、逆に言えば企業活動も人間の営みなので、陥るところはそんなに変わりはない反面、それを避けるのも難しいということでしょうか。

著者は数多くの講演もこなしているようで、その経験も生かし、自らや他の会社の事例などを印象的に盛り込んでいます。
「あるある」と手元にボタンがあったら押したくなるようなエピソードが満載でもあります。
たとえば、「法則6 考えるのに時間を使わない」では  

企業の合併・買収(M&A)の分野では、何億ドルときには何十億ドルもの案件で競争がはじまり、勢いがついてくると、参加者の間の対抗意識が前面にでてきて、戦い方が白熱し(そう、まさに戦いになって)、なんでもありの勝負になる。何が何でも勝たねばならないと考える。勝利は目の前にあるのだ。そうなると、積み上げた現金も、案件を裏付けるとされていた健全なはずの理由も、多数の利害関係者も、すべて問題ではなくなる。勝つことだけが目標になるのだ。「突き進むのだ、邪魔はさせない」と、とりわけ我の強い人物が叫ぶ。記者会見でスポットライトを浴びる夢があり、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の一面トップを飾る夢があるのだ。魅力的な夢が実現すると思えば、金額を引き上げても十分に採算がとれると思い込む。占星術と変わらぬ程度の信頼性しかない予想であったとしても。ジョン・メイナード・ケインズがいう「血気」はほとんどの経営者が認めたがる以上に強烈だ。  

付け加えるなら、これが「法則4 自分は無謬だと考える」トップ主導で行われ、それに(経営者ではないですが)「法則1 リスクをとるのを止める」ご追従の中間管理職と、ファイナンシャルアドバイザーに作らせた数字を「法則7 専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する」と、かなり悲劇的なことになったりします。


もともと本書は『コークの味は国ごとに違うべきか』 (参照)と一緒に買った本で、こちらで語られているコカコーラ社はゴイズエスタCEO下でのグローバルな展開とその一面的な方針がその後の地域での適応で苦労した、というあたりに本書でも触れられているかと期待していたのですが、コカ・コーラ社については、1985年の「ニュー・コーク」の失敗について触れられているだけでした。
著者もゴイズエスタ氏のときに退任したようなので、それ以降内部の状況を知る機会はなかったのかもしれません。
また、『コークの・・・』では「(ゴイズエスタは)人気の終盤時に製造販売会社を売買する粉飾まがいの会計手法を用いた」という記述があるのですが(p41)、その辺についても触れられてはいません(そもそも著者は在籍していなかったか、粉飾だとは全然思っていないのかもしれませんが)。  


とりたてて目新しいことを言っているわけではないが、斯界で実績を積んだ人が、豊富なエピソードと魅力的な語り口で引き込む、面白い本だと思います。

その意味では「勝間本」(といっても僕はほとんど買ってないし、立ち読みレベルの知識しかなくて言っていますが)と似ているかもしれませんね(いい意味でも)。

コメント
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