一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

ビールの味は国内では同じになってもいいのか?

2009-07-14 | 乱読日記

今朝は日経のスクープが話題になりました。
キリンとサントリー、経営統合へ 持ち株会社統合で交渉

食品最大手のキリンホールディングスと2位のサントリーホールディングスが経営統合の交渉を進めていることが明らかになった。両社持ち株会社の統合案を軸に最終調整、年内の合意を目指す。実現すればビールと清涼飲料で国内首位に浮上。世界でも最大級の酒類・飲料メーカーとなる。統合で国内市場の収益基盤を強化、成長が見込まれる海外市場を共同開拓し、世界的な勝ち残りを目指す。  

キリンとサントリーの統合、公取に打診へ 週内にも  

キリンホールディングスとサントリーホールディングスは13日、経営統合に向けた詰めの協議に入った。週内にも公正取引委員会に統合後の国内シェアが高くなるビール系飲料やワインなどを対象に、独占禁止法に抵触しないか打診する。また、サントリーは90%近くの株式を持つ大株主の創業家一族などに統合への賛意を確認する方針だ。

こういう記事を見ると、段取りを狂わせたのはあんたじゃないか、とかスクープ至上主義の是非について考えてしまうのですが、それはさておき「成長が見込まれる海外市場を共同開拓し、世界的な勝ち残りを目指す。」というフレーズが、どうも今読んでいる『コークの味は国ごとに違うべきか』にかぶってしまいました。

この本は(まだ読み終わってないのですが)「グローバル化」をドグマティックに信奉することでは企業の成長はおろか業績向上も見込めない、大事なのは、どのような価値が創造できるかの分析と適切な戦術の選択による戦略の策定が必要であるということを説いています。
カジュアルなタイトルなのですが、著者のハーバード・ビジネススクールでの講義をまとめた中身の濃い経営学の本です。

本書で取り上げられているうまくいかなかった事例を見ると、「大事な意思決定ほど不十分な時間とデータに基づいてなされる」という典型のように感じますが、事後的に見ればそうなのであって、意思決定の時点で「十分」てなに?というのは永遠の問題でもあります。
本書は安易な処方箋は提示していませんが、拙速な意思決定の前に冷静になって分析するツールを提供しています。

本書で国ごとの独自性への対応の必要性の例としてコカコーラの世界統一の戦略に対する日本での缶コーヒーや茶飲料の独自の展開について(缶コーヒーの「ジョージア」というネーミングは、ずっと反対を続けていたアトランタの本社へのあてつけでつけられたなどという逸話も含めて)触れられているように、特に飲料品については国ごとの嗜好の差が大きいでわけで、素人にはキリンとサントリーの件についても「世界的な勝ち残り」を目指さなければならない差し迫った(または中期的な)脅威があるようにも思えませんし、規模の拡大と世界進出が成長を約束してくれるとも思えないところがちょっと疑問です。
サントリー自体、日本のビール市場で利益を出すまでに何十年もかけたわけですし。

また、ずっと非上場を貫いてきたサントリーにとっては、より大きな方針転換だと思います。
(けっこう、サントリーのオーナー一族の相続税対策などというあたりに動機があったりするのでしょうか?)

この動機のところはもう少し詳しく知りたいところです。


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