一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

美大出身者は弁護士に「デザイン」について語られたくはないだろうなぁ

2009-07-30 | あきなひ

カブドットコム証券のインサイダー取引に関する調査報告書が公表されました。

調査委員会のメンバーは、創業社長のワンマンぶりに相当な悪印象を持ったようで、かなり筆が走っています。

第7 再発防止策の提言 
 2. 再発防止策
  (1) 社長の意識改革 

こうした状況を打破するためには、当面齋藤氏が社長を務めるとしても、何よりもまず齋藤社長自身がこの限界を意識し、「齋藤商店」という個人商店的な色彩を払拭する改革を断行することが強く求められる。 

また、齋藤社長の経営手法は、美大出身であることが影響しているのか、形式(デザイン)偏重型であって、そのことが実質を軽視する傾向を生んできた。ワンフロア・オープンスペース体制や委員会設置会社へのこだわりなどが、その例として挙げられる。その結果、外形的には組織が整っているように見えるが、その実質は、「組織」による管理というよりは、齋藤社長という「個人」による管理に陥っていた。しかし、いくら稀有な能力の持ち主であっても、個人の能力には限りがある以上、このままでは業容の拡大や企業の健全な成長は望めない。

美大出身だからというのは偏見だと思うし、デザイン=型式というのは「それこそ本質を理解せずに型式論理をあてはめようとする弁護士的な発想」などと反論されそうですね。


それはさておき、形だけ作っても機能をしていなければ意味がない、意思決定の早いフラットな組織もいいが、社長の誤りを是正する仕組みは最低限必要、という指摘は、新興企業にとっては耳の痛い指摘かもしれません。

ただ、ちょっと昔に新興市場に上場した企業は、当時は証券取引所はそんなこと言ってなかったぞ、という文句も言いたくなるところかもしれません。
そのへん、金融商品取引法・証券取引等監視委員会だけに任せるのでなく、証券取引所が自主ルールや上場審査をどう行うかというのも重要だと思います。
特に証券取引所自体が株式を上場しているとなると、収益と公益性のバランスをどうとっていくかについて、自ら明確な指針を出していく必要があると思います。


この件は当初の報道のときから、「普通しないだろ?」ということが引き金になったということで話題を呼んでいました。

本件の特殊性は、第1回目取引と第2回目取引のいずれにおいても、齋藤社長自身の不用意な行為が元社員Aに重要情報入手のきっかけを与えたという点にある。すなわち、第2 の2.で述べたように、第1回目取引については、齋藤社長のメール(会議招集通知)をきっかけに社員Xが重要情報の保存されているフォルダを発見し、そのフォルダを見せられた元社員Aがその周辺のファイルを物色したことが重要情報の入手につながった。また、第2の3.で述べたように、第2回目取引においては、齋藤社長が役職員全員に宛てて送信したメールがインサイダー取引の直接的なきっかけとなった。
 (第5. 2. 社長自身によるきっかけの提供)

それが、この会社の組織体制の特殊性に起因しているというあたりを、報告書は厳しく指摘しています。

こうしたメール文化は、リアルの世界で構築された会社の組織(とりわけ部長等の中間管理職の役割)を無機能化させ、すべての役職員が社長と直に繋がっているといった企業風土を作り出していた。会社が急成長を遂げたために、創業時代の企業風土を引きずっている面があるとともに、信頼の置ける部下が十分育っていなかったため致し方ない面があるとの評価も聞かれるが、かかる企業風土が醸成された背景には、多分に社長の性格が影響を与えているものと考えられる。一言で言えば、社長は部下を信じ切れずにいた。そのため、社長は社内(時にはアフター・ファイブ)の出来事をすべて掌握したいという思いが強く、これがメール文化を生み出し、ひいては管理される役職員の側にも、社長の顔色や社長の評価を気にする風潮をもたらしていた。
( 同 )  


役職員に対するヒアリングの結果を総合的に判断すると、山下会長は、本来ならば齋藤社長の業務執行に対して強く監視・監督を行うべき立場にあったにもかかわらず、齋藤社長と机を並べながら、あたかも社長の協働者であるかのような振る舞いに終始していた。このことは同氏が監査・報酬・指名の三委員会の全ての委員長を兼ねていたことを考えるとガバナンス上致命的と言える。  
第二に問題となるのは、磯崎哲也氏と佐藤丈文氏の2 名が、社外取締役として十分な牽制機能を果たせていたかどうかという点である。  
(第5. 3. 社長を牽制する仕組みの弱さ)  


当社には、人事に関する組織や機能が存在していない。そのためか、当委員会が実施したアンケートにおいても人事制度に対する不満が噴出しており、「この会社は社長のイエスマンのみ旗本として生き残れ、言論統制・文民統制の締め付けが非常にきつい。」、「社長個人の気質としていらだつと手がつけられず、『病院行くまでやれ』、『死んでもらう』、『イヤならさっさとやめろ』などの発言は日常茶飯事的にあり、何か失敗をすると簡単に社内処分が下される。それに怯え全くヤル気がなくなる者もおりイエスマン以外は淘汰される。」、メールが1 日に何百通も飛び交うにもかかわらず「上席からの指示が全てメールで、メールを見落としていると見ていない者が100%悪いということになる。ミスをした場合、その本人の責任だが、上からのフォローなどはなし。」、「このアンケートに真面目に答える(真実・感じたことを忌憚なく伝える)こと自体が、恐怖であると強く感じることを付け加えさせて頂く。」などの声もみられた。また、役職員の評価方法も不明確で、役職員ごとにその評価結果を一覧できる仕組みにもなっていない。他方で、齋藤社長の形式に対する過度なこだわりなのか、役職員に対し様々な外部の認定試験等を受験させ、その結果で能力を評価するといった傾向が強かった。
(第5. 6. 会社に対する忠誠心を失わせる環境)  

調査委員会のメンバーを見ると、大企業をクライアントにしている有名弁護士が名を連ねています。
かなり厳しい筆致とあいまって、さながら「俺たちゃJ-Soxだ、みなし管理職だなんて真面目に対応してんのに」という大企業を代弁して新興企業にお説教をしているような印象でもあります。

でも、これを読んで「だから委員会設置会社にすればいいとか社外取締役を増やせばいいとかいうのはおかしいんだ」と鬼の首を取ったように言う社長さんがいるかもしれませんが、そういうことを声高に言う方の会社の取締役会・監査役会のガバナンスも要注意かもしれません。


 

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