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一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

「脛のキズ」の賞味期限

2006-03-16 | よしなしごと
「電柱と電信柱の違い」というトリビアがあります。

電柱というのは電力会社の建てた送電用の柱で、トランスが乗っていたりするやつです。(東京では区別のために「東電柱」などと言ったりもします)
電信柱は、NTTの電話用の柱のことをいいます。
最近は道路にいっぱい立っているのも邪魔だ、ということで共有したり共同溝で地下化されているところも多いようです。

ただ、昔から電柱と電信柱を区別なく利用していた会社があります。


USEN、フジ保有のライブドア全株買収へ
(2006年 3月16日 (木) 06:09 朝日新聞)

USENはもともとは「大阪有線放送」という社名で、店舗などに有線放送を提供する仕事をしていました。
「有線放送」というだけに各店舗までケーブルを引かなければならないのですが、それには電柱・電信柱を使う必要がありました。
ただこれを大阪有線は東京電力やNTTに無断で使用していることで有名でした。
(そのへんの経緯はWikipedia参照、書きぶりが批判的ですが。)

大阪有線放送は2004年4月に過去に遡って無断使用について電力会社とNTTと清算に合意すると共に社名を有線ブロードネットワークスに変え、2001年4月にはナスダックジャパンに上場します。


今や自前のインフラを持つプロバイダになっているわけですが、もともとのインフラは違法な既成事実を積み上げたものなわけです。

創業が1961年なので40年近くも違法行為を続けられたということは相当の政治力やその他の影響力があったはずだし、繁華街の飲食店をメインの営業ですから、まあ、その筋との関係も噂されていた会社でした。

USENは今やあのフジテレビも認める(認めたのは金の力だけ?)真っ当な企業、ということになったわけですが、考えようによってはライブドアも虚業で資金を集めた後M&Aで本当の実業を買収して業態転換すればエスタブリッシュメントの仲間入りができていたかもしれません。


「出る杭は打たれる」と言いますが、それこそ電柱くらいまで伸びれば、誰も打たずにかえってぶら下がってくるようになるわけです。


まあこれはUSENだけの話しではなく、大企業も創業当初は反社会的なことをやっていたところは多いわけです。ただそのときに「アウト」と言われなかっただけで。

たとえば鉱山会社の鉱毒問題とか、繊維会社の女工哀史とか。
大塚製薬などは出入り先の顧客名簿をこっそり書き写して営業したなどと創業者が書いていました。


コンプライアンスが叫ばれていますが、「過去は過去として再発防止に全力を尽くす」というおきまりの姿勢は実は既存の企業に有利なスタンスで、逆にシェアを取ろうと一発勝負にかける新興企業は「コンプライアンスは後からついてくる」という発想になるのもそれなりに合理的な発想なのかな、と思ったりもしたもので。
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没ネタ

2006-03-15 | ネタ
4代目スケバンは、ミニスカあやや (スポーツニッポン)

今朝これを報じるテレビを見ていて思いついたネタを、どうやって人様にお見せできるように料理してやろうか、と考えつつググッてみたところ、既に真正面から取り上げられていました。

http://gakitaka.hp.infoseek.co.jp/sukepandeka.html


まだまだオリジナリティも精進も足りない、という自戒を込めて・・・
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ドタキャンな弁護士

2006-03-15 | 法律・裁判・弁護士

山口・母子殺害の上告審、弁護人欠席で弁論延期
(2006年 3月14日 (火) 23:58 朝日新聞)

山口県光市で99年に母子が殺害された事件で、14日に予定されていた当時18歳の被告(24)の上告審の弁論は、弁護人が「弁護士会の仕事がある」として出廷しなかったため開かれなかった。弁護人は2週間前に選任され、「準備の時間がない」と期日延期を求めていた。最高裁第三小法廷は4月18日に改めて期日を指定。浜田邦夫裁判長は「正当な理由なく出頭しないのは極めて遺憾」と異例の意見を述べた。

被告は一、二審で無期懲役とされた。刑事訴訟法上、重大事件では弁護人がいなければ開廷できない。検察官は「遅延目的だ」と抗議し、遺族の本村洋さん(29)は「これほどの屈辱を受けたのは初めてだ」と会見で怒りをあらわにした。

第三小法廷は死刑を求めた検察側の上告を受理し、昨年12月に弁論期日を指定。二審判決が見直される可能性が出てきた事態を受け、当時の弁護人は今年2月になって死刑廃止運動のリーダー格・安田好弘弁護士らに弁護を依頼し、自らは今月6日に辞任した。安田弁護士は「記録を精査して事実を究明するには3カ月はかかる」とし、遅延目的を否定している。

刑事事件ではどうなのか知りませんが、民事事件だと上告されても受理されるかどうかはしばらくわからず、ある日突然に不受理通知がきたり、受理されて弁論期日が指定されたりするので、被告人側としたら受理されまい、と高をくくっていたので準備をしていなかったのかもしれません。

そうだとしても、昨年12月に弁論期日が指定されたのに3月6日にいきなり辞任というのは、前任の代理人弁護士は相当無責任だと思います。
そもそも上告が受理されることを想定していなかったとしたらプロとしてズサンですし、上告審での弁護に自信がなければとっとと辞任すべきです。
土壇場になって放り出されては、依頼者が一番困るでしょう。

新しく選任された安田弁護士としては、非難されても上のようにしか答えようがないでしょう。

テレビなども含め、報道は「被告人側」や当日欠席した弁護人を非難する、というトーンですが、被害者の遺族の気持ちはわかるものの、報道の視点としてはちょっと公正さに欠けているように思います(今回は事件の悪性を非難するのでなく、手続きの不当性を非難するという立場でしょうから)。
被告人としては、今回の辞任劇が意図的なものではないということを明らかにするためにも、前任の弁護士の懲戒請求でもしたほうがいいのではないでしょうか(最高裁まで来ると、この手のゴタゴタの心証はほとんど斟酌されないとすると意味がないかもしれませんが)


*********************************
(3/15追記)

矢部善朗弁護士の「元検弁護士のつぶやき」では

今朝の読売新聞を読んでみますと、本件を審理している最高裁第3小法廷の浜田邦夫裁判長が5月下旬で定年退官するんですね。
弁護側の意図が120%明瞭になりました。
浜田裁判長の定年退官前に結審していなければ、浜田裁判長の後任者を含めてあらたに合議をして死刑か否かを決めることになりますから、死刑に消極的な裁判官が浜田裁判長の後任者になることを期待して、死刑判決を考えている現在の合議体による判決を回避しようとしているわけです。
つまり訴訟遅延行為であることは明白です。

という指摘をされています。

私のエントリは犯罪の罪状云々を別にして公平なスタンス(のつもり)で書いてみたのですが、安田弁護士は死刑廃止論者の代表選手のような方のようなので、矢部弁護士の推測のような意図もあるのかもしれません。

ところで、こういう行為は弁護上の技術として許容されるべきなのでしょうか。(アメリカでは当然に許されそうですが)

個人的には、遅延行為が効果的な主張の準備に必要であれば許容されるけど、単に判決を引き伸ばすだけ、というのは不適当だと思います。

ただ、矢部弁護士の記事中に

最高裁が必要的弁護事件で弁護人抜きで審理した事件の上告を棄却した例もあります。

ともあるので、裁判所の心証を害するリスクを承知でやっているとすれば、弁護活動としては「あり」なのかもしれないなぁとも思ったりしてます。

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着地失敗により減点

2006-03-14 | 自分のこと
都合の悪いことは都合の悪いときに起きる。


ちょうど地下鉄の自動改札を通ろうとしてプリペイドカードを取り出したところで電話が鳴った。

先程コールバックをお願いした相手だとすると、このまま放っておいて留守電にしてしまうのはまずい。

しかし、後ろには人がつかえているし、横も他の自動改札の列がびっしり並んでおり、列をはずれることもできない。

しかも花粉症用のマスクをしているので、このままでは電話に出られない。

なおかつ、カバンを持っていて片手はふさがっている。


そこで咄嗟に

① プリペイドカードを中指と人差し指でつまむように持ち替える
② カードを手にはさんだまま、携帯電話をポケットから取り出す
③ 小指をマスクのゴムに引掛けてマスクをはずす。
④ 親指で折畳式の携帯電話のカバーを跳ね上げる
⑤ 通話開始
⑥ 通話しながら一瞬の隙をついて自動改札を通過

と、イナバウアーからの連続ジャンプばりの妙技を披露したはずだったのですが


通話が終わってホームの隅に佇んでいたのは、マスクを片耳からだらしなく垂らして、人差し指と中指がはさんでいるカードのせいで自由に使えないために携帯電話を閉じる事すらできないでいるヘンなおっさんでした。


メダリストへの道は険しい・・・
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ウエストサイズの虚偽記載について

2006-03-13 | ネタ


写真はブランド物のジーンズ売り場で見つけた注意書きです。


「表示されているサイズは1~2インチ程度小さいです」


「26inch」の表示は通常の28~29inchにあたるそうです。

でも、サイズが表からは見られないデザイン物のジーンズで、なぜわざわざそんなことをするのでしょうか?

① 私は○○インチのジーンズがはける、という自己満足
「自分へのご褒美」?

② 無意識に体もそのサイズに合わせるようになるピグマリオン効果
ないだろ、そりゃ(笑)

③ 男性へのアピール
嘘をつく後ろめたさが減るとか、プレゼントとしておねだりするときにちょっと見栄を張れるとか。

でも、男って女性のウエストサイズを1,2インチにそんなにこだわるのだろうか・・・

④ 女性同士の会話での見栄
会話の中でウエストのサイズの話が出たときに、ちょと胸を張れる。

女性は厳しいので、サイズ表示の甘めのブランドだということをチェックされてしまえばそれまでだと。



いずれにしろ、「時価総額」の維持・向上にはあまり効果を発揮しそうにはない類の虚偽記載のようですね。
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おばあちゃんパワーと為替相場

2006-03-12 | あきなひ
昨日の記事で、米国企業への投資(および投資した米国企業の売却)が「国家安全保障」を理由にして規制されるとすると、外国投資家が米国に投資をしなくなるんじゃないか、(いやいや余剰資金の受け皿としては米ドルがやはり一番じゃないか)というような議論もされているという話をしたのですが、そうなると為替はどうなるんだろう、昨日は118円台までドル安にふれたのはそのせいか、などと考えていたら、モルガンスタンレー証券の"Weekly International Briefing"(3/7号)で、アナリストのロバート・フェルドマンが面白い事を書いています。(この人はたまにテレビにも出てますが堪能な日本語でわかりやすくウイットに富んだ話をする人です)

曰く

「おばあちゃん対ヘッジファンド」

「おばあちゃん」というのは金利格差を重視する投資家を指しています(まあ、外貨預金をする個人の代表ということですね)
もう一方のヘッジファンドは金利格差の「変化」を重視するプレイヤーです。

ここ数年は双方の利害が一致し、ドル高に動いてきたのですが、最近になって金利格差重視の投資家(おばあちゃん)は円高の可能性に対する懸念をやや強めているが、金利格差はなお大きいとみている(円高って言ったって、定期預金で0.何パーセントじゃつまんないわよね~)
一方、ヘッジファンドはFRB の利上げ打ち止めと日銀の引き締め開始を見込んでいる。
そこで、両者の綱引きが始まった、というわけです。

そのため当面はイベントごとに相場は神経質な動きをするだろう、と予測しています。


この例えで思い出したのが、バブル期の一番の勝者はお金を銀行の定期預金にずっと入れていた人だ、つまり、1400兆円の個人資産の大半を銀行預金・郵便貯金に置いていた日本の庶民の投資センスは実はすごいのではないか、という話。

借金をして不動産を買った人だけでなく、期間トータルの運用結果では定期預金以上のパフォーマンスをあげる事のできた投資信託はほとんどなかったとか
(誰が言ったのかも忘れてしまったので、定期預金の期間の設定とかそもそもの分析の信憑性などについてはまったく保証できません)

たしかに、バブル期に痛手を負わなかったのは、堅実だったり、逆におっとりしていて欲のあまりない人や会社が多いような気がします。


ということなので、「金利格差重視のおばあちゃんの投資戦略」というのもあなどれないのではないかなあと。


実際「おばちゃん」世代は年金もちゃんともらえるので、貯金を当面取り崩す必要はないとすると、「元本はいざと言うときのための保険で最後は子供に相続すると考えれば為替差損リスクはそんなに意識しないで、その代わりに高い利息を小遣い代わりにしてちょっと贅沢をする」という戦略は十分成り立つわけです。
(米ドル1年定期で3.5%とすると、1000万円置いておけば税引き後でも年間30万近くになるので、孫の小遣いと月一美味しいものを食べに行くくらいはできてしまいますから。)

そのような腹の据わった長期投資のスタンスに立っているとするなら、ドル高(円安)圧力というのは相当大きいかもしれませんね。


もっとも、あまり極端な高金利志向はリスクと裏腹ということも考えておいたほうがいいと思います。ニュージーランドは高金利目当ての外貨流入が続き、経済の実態から乖離した為替レートになってしまっていると政府も嘆いているくらいです。
また、格付けを取れないような政府の国債や架空の外債投資詐欺などが出てきそうですので、おばあちゃんたちが被害に遭わないような広報・教育活動や監視も必要ですね。
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まだ解決したわけではなさそうです ("Port Deal" その3)

2006-03-11 | あきなひ

米港湾管理進出、UAE企業が撤退 米議会の猛反発で
(2006年 3月10日 (金) 13:03 朝日新聞)

アラブ首長国連邦(UAE)の国営企業「ドバイ・ポーツ・ワールド」による米国の港湾業務への進出問題で、ド社は9日、「米国内の業務すべてを米国の組織に移す」との声明を発表した。

ホントは昨日取り上げたかったのですが、先週取り上げた"Port DealL"ですが買収側のDPWが一歩引いた展開になりました(過去記事はこちらこちら参照。)

NY Timesの記事によると

議会の超党派での反対が相当に強烈だった。今回のDPWの声明の後も、国家安全保障の観点から外国企業の投資を制限しようという法案が目白押し(some two dozen)とのこと。

今回の声明はドバイ政府の政治的配慮の反映であり、DPWのビジネス上の判断ではない。(ドバイの政府高官によれば"We have to save our friends."だそうな。)

一方で米国とUAE,自由貿易協定をめぐる交渉を延期という話もあり、アメリカ政府はアラブ諸国との関係悪化を懸念している。

今回の騒動がアメリカへの海外からの投資に悪影響を与えるかことが懸念される。
もっともこれが致命的な影響を及ぼすか否かについては意見は分かれている。
ちなみに外国企業の米国への直接投資は昨年第3四半期で388億ドルと前年同期比4%増。国際や株式の投資は昨年1年間で1兆ドルを超え、その大半がアラブと中国の資金で。

ただ、最近各国で外国企業による自国の企業買収への反対の動きがあり"nationalist sentiment "が高まっているのではと懸念する声もある。
たとえば最近だけでも
・ 米国の石油会社ユノカルに対する中国企業の買収提案への反対
・ インド系のミタル・スチールによるルクセンブルクの製鉄会社アルセロール社買収への反対(阿呆な過去記事でよければこちら参照)
・ イギリスのガス会社セントリカに対するロシアガスプロム社の買収への反対
などがありこれが加熱する危険がある。

一方、今回の声明で港湾の安全問題が一段落した訳ではなく、実は他の港の多くの監理が外国企業の管理下にある(それ自体は国際海運業としては普通のことなのだが)。

一番の問題は、「米国内の業務すべてを米国の組織に移す」といっても引き取り手が現れるかの問題。港湾管理作業は利の薄い商売だし、上述の通り多くの管理会社が外国会社なので、投資した場合の出口戦略も描きにくい。

また、DPWの声明では「"transfer" the leases to a "United States entity" 」の定義を明確にしておらず、たとえば信託を使うなどの方法を否定している訳ではない。
また、DPWは「この撤退で損失は発生しない(DP World referred to an understanding that it "will not suffer economic loss,")」と言っており、アメリカ政府との損失補填の約束があるという噂もある。(財務省関係者は「完全な売却」を希望しており、損失補てんの約束もない、と言っている)

(参考)
Under Pressure, Dubai Company Drops Port Deal
</NYT_HEADLINE>Dubai Deal's Collapse Prompts Fears Abroad on Trade With U.S.
</NYT_HEADLINE>Port Deal's Collapse Stirs Fears of Repercussions in Mideast Ties

買収対象のP&Oの事業の中でアメリカの港湾監理業務がどの程度の価値を持っているのかが分からないですが、もし損を覚悟での判断だとするなら、国営企業として損失を上回る
メリット(アメリカ政府への「貸し」など)があるという計算があるのでしょうか。

諷刺画問題でイスラム諸国の反応を行き過ぎと非難したキリスト教国家に対して「相手の機嫌をそこねる」という理由だけから遠慮する、というのも考えにくいと思います。

今回の声明、「言ったはいいが・・・」ということになりかねないのですが、逆に"will not suffer economic loss,"と留保をつけることで、まずは自分が「いい子」になっておいて、解決策がなければ仕方ないじゃないか、そもそもイギリスの会社の株を買うのに何で損してまでアメリカの文句を聞かなきゃならないんだ、と開き直る(または困ってみせる)、という余地を残しているのかもしれません。
(少なくともその方が政治的には悪者にならないで済みそう)


また、今回の事件でアメリカへの投資が減るかどうかについては、貿易黒字による外貨を潤沢に持っているアラブ産油国と中国は資金の置き場所としては今のところ投資先のキャパシティなどからも米ドル(ちょっと遅れてユーロ?)しか事実上選択肢がないと思うので、企業への直接投資がリスキーとなると米国債に流れる事になるのでしょうかね。


まだまだ波乱やいろんな波及がありそうです。

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津軽な弁護士

2006-03-10 | 法律・裁判・弁護士
ちなみに「気軽」「手軽」の誤植ではありません。
また、「三味線」「冬景色」(失礼!)という話でもありませんので念のため。



先日某弁護士事務所(ローファーム系でなく一般民事)の若手の弁護士先生に電話したところ、「今日は一日中弁護士会館にいます」ということでした。

ちょうどその日は日弁連の選挙の日だったそうで、若手先生は事務所のボス弁(注1)が弁護士会の派閥(注2)の幹部のため、ちゃんと投票にきているかをチェックする役を仰せつかっていたそうです。

「先生、それじゃまるで津軽選挙(注3)じゃない」と冷やかしたのですが、どうも若手先生は津軽選挙をご存じなかったようで、通じませんでした・・・


日弁連会長というのは対外的には弁護士の顔になるわけで、単になりたい人を据えればいいというだけでなく、見識とか人望とかいろんなものを考慮して選ぶ必要があるし、それぞれの弁護士会の利害もあったり、(毎度の弁護士職務基本規定の第2条にもあるように)そもそも弁護士は「自由と独立」の気風のある方々の集まりだったりもするので、選挙運動もなかなか難しいそうです。

もっとも弁護士会の役員というのはなったはなったで時間をとられるので、本業は収入減になるため、なかなか大変なようです。


※ 「津軽選挙」の揶揄は「見張っている」ことについてで、さすがに弁護士会では買収や供応はないそうですので、弁護士先生の名誉のために申し添えます。


余談ですが、商工会議所の選挙になると末端の自営業者のオヤジの集合体では供応は普通のようで、私の父親のような町工場にも年に1回ごちそう(一応会員の飲食店での打ち合わせ名目らしいですが)のお誘いをいただいていたようです(笑)


どんな組織・団体でも役職者を選ぶというのは大変なようです。



PS
「〇〇な弁護士」シリーズですが、タイトルにも無理が目立ってきてネタ的にも苦しくなってきたので、今回でひとまず終わりにしようと思います。



(注1) 一般民事の事務所は事務所の代表者を「ボス弁」雇われている弁護士を「イソ弁」(「居候弁護士」の略称だそうで、「イソギンチャク」ではないそうです)と言います。
渉外系やローファーム系は「パートナー」「アソシエイト」とやはりバタ臭い言い方をしています。最近は一般民事の事務所でも「パートナー」という言い方が増えているようです。

(注2) たとえば東京では3つの弁護士会があるのですが、その中でいくつかのグループがあり、それを「派閥」と言うそうです。具体的に何をやっているのかは存じ上げないのですが、どうしても自民党の「派閥」を連想してしまいます。

(注3) かつて津軽地方は政争が激しく、選挙のたびに買収や供応が横行し、しかも投票を依頼した人が実際に投票するかどうかを監視するために、集落の入り口や投票所にチェックするかかりまで置いていたということがあったそうです。(こちら参照)


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悩ましい弁護士

2006-03-09 | 法律・裁判・弁護士

注:フェロモン系の女性弁護士の話ではありません。
シリーズ風なタイトルを意識して、記事内容と整合しない日本語になっていましたがご容赦ください。


昨日の記事にいただいたコメントや、昨日も紹介した弁護士職務基本規定を改めて読むと、逆に依頼者側の要求にこたえようとするとかえって抵触してしまうような部分もあり、難しい問題がありそうだな、と思いましたので、そのへんを書いてみたいと思います。

第九条 弁護士は、広告又は宣伝をするときは、虚偽又は誤導にわたる情報を提供してはならない。
2 弁護士は、品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。

弁護士の紹介業が弁護士法で禁じられているので、依頼者側からみるとどの弁護士がどのような事件が得意なのかはよくわかりません。なのでホームページ等で具体的にどういう分野が得意かなどがわかるといいのですが、弁護士会のHPなどでも「企業法務・一般民事」程度の書き方にしかなっていません。
「離婚訴訟(特に妻側で慰謝料を取るのが得意)」などと書いてしまうのは品位を損なう行為なのでしょうか。
また、過去の事件については守秘義務があるのでなかなか語りにくいというのもあるかもしれませんね。

もっともこれは医者も同様で、医者は医療法でより厳格に広告内容が規制されていて、診療科目などの事実関係をうたうことしかできなかったと思います。
なので「医療法人慶友会」などと自分の出身校やコネクション(「〇〇病院提携」というのもいけないらしい)を示唆するような名称をつけることにつながっているようです。

第十四条 弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。

詐欺・暴力・不正を助長するのはとんでもないですが、判例がなく学説が分かれているような分野(いわゆるグレーゾーン)でリスクを承知で新しいフロンティアを開拓しようという企業があった場合、それにアドバイスするのも弁護士の重要な役目だと思います(そうでないと進歩がない)なので、この「違法」というのが事後的・かつ形式的にあてめられてしまうと結構厳しいな、と思います。

第二十一条 弁護士は、良心に従い、依頼者の権利及び正当な利益を実現するように努める。

「依頼者の権利及び正当な利益を実現」という部分が微妙ですね。
これは、反社会的な行為により得た利益を法的手段で実現するのに手を貸しては行けない、という例えば昨今従前の業界慣行と比べて厳しい判決が続いている貸金業法のグレーゾーン金利のようなものは「依頼者の正当な利益」といえるのか、という指摘もありえるのではないでしょうか。

第二十九条 弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。
2  弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。
3  弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならない。

これは、依頼者に「大丈夫でしょうか?」と聞かれたときに「負けるかもしれません」と言ってばかりいては商売にならない、という部分とどう折り合いをつけるか、という問題になりそうですね。
依頼者側から見ても、最初から言い訳を探しているような人も困りますが、やたら威勢だけいい人も頼りにならないことが多いのですが、個人相手の受任においては(昨日も述べたように)消費者保護的な考え方に基づいて説明義務が加重されることもあっていいかもしれません。

もっとも、この規定の最後には

第八十二条 この規程は、弁護士の職務の多様性と個別性にかんがみ、その自由と独立を不当に侵すことのないよう、実質的に解釈し適用しなければならない。第五条の解釈適用に当たって、刑事弁護においては、被疑者及び被告人の防御権並びに弁護人の弁護権を侵害することのないように留意しなければならない。
2  第一章並びに第二十条から第二十二条まで、第二十六条、第三十三条、第三十七条第二項、第四十六条から第四十八条まで、第五十条、第五十五条、第五十九条、第六十一条、第六十八条、第七十条、第七十三条及び第七十四条の規定は、弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めたものとして解釈し適用しなければならない。

とあるんですね。この辺かなり柔軟な運用ができるようで、「角を溜めて牛を殺す」ようなことにはならないようになっているみたいです。
まあ、これを骨抜き、と捉える方もいらっしゃるかもしれませんが、一般企業におけるコンプライアンス態勢や内部統制制度と企業活動の効率性・自由度の関係を考えるひとつの参考になるかもしれませんね。

※「弁護士職務基本規程」の逐条的解説が「自由と正義」の臨時増刊号(2005年Vol.56)として出版されているようなので(私はそれを読まずにこのエントリを書いてます)、興味のある方はそちらをご参照ください。


ところで今日ちょっと気になったのが、最近話題の「ライブドア株主被害弁護団」。HPがであったので覗いてみたのですが、「弁護団方針 今後の方向性」として方針らしきものは「はじめに」の

私達は、証券市場の公正さを信じてライブドアなどの株式を購入したところ、ライブドア、ライブドアマーケティング及び堀江貴文ほかの会社役員が虚偽の有価証券報告書などの方法により、イカサマ、インチキをしたことから不当に高い価格で株式を買わされたことによる損害を問題としています。
 株価が下落したことが損害というのではなく、ホリエモンらによる不公正な方法での虚偽情報、いわばイカサマの情報による株価を問題としています。

  また、私達は、株式取引の価格変動についての見込みちがいによる 損害を回復することを目指してはいません。

とあるだけで、これだけでは(少なくとも私は)「虚偽記載により不当に高い価格で買わされた」というのが本当に損害として立証できるのかというのが素人にはわからない一方で

そこで、今回の事件での被害実態を把握するためにも、現時点で原告として参加する意向のある方は、当弁護団で作成した資料を検討された上で、同資料添付の「登録カード」にて、ご登録をお願いいたします。(資料の請求は、資料請求まで)。

  「登録カード」にて当弁護団に被害者として登録して頂いた方のうち、当弁護団が原告としてご参加頂けると判断した方には、改めて当弁護団からご連絡いたします。その後、原告としての参加を希望される方には、当弁護団と受任手続を行って頂きます。
(以下「受任手続きまでの流れ」の説明)

と、何となく「事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明」がないままに依頼者を勧誘しているようにも思えます。
もっともこの説明は規定上は「受任にあたり」求められるものなので勧誘時に説明しなくてもいいのですが、アメリカのクラス・アクションのように完全成功報酬制ならさておき、受任時に着手金等を取るのであればそれらについて一定程度の説明はあるべきではないか、と思いました。(1000円払って資料請求すると3/5の説明会資料が入手できるようですが、そこには書いてあるのでしょうか)

多数の個人投資家相手にトラブルにならなければいいですが・・・



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問題な弁護士

2006-03-08 | 法律・裁判・弁護士
昨日のエントリにコメントをいただき、もう少し考えてみようと弁護士の懲戒処分の事例をググってみました。

***********************

テレビ局の番組制作者の依頼を受け、戸籍謄本や住民票などを不正に取得
2004年1月 東京弁護士会 業務停止4月

毎月数十件受任した債務整理で法律の説明や返済計画立案を事務員に任せ、弁護士任務を怠った。
2006年1月 東京弁護士会 業務停止4月

自己破産などの依頼を長期間放置した上、着手金の返還に応じなかった
2006年2月 熊本弁護士会 業務停止1年2ヶ月

パソコンソフトの説明をさせようと青葉区上杉6丁目の事務所に呼んだ出版社の男性社員に対し、「商品知識が足りない」と腹を立てて暴行を加え、胸に4週間のけがをさせた
2005年8月 仙台弁護士会 業務停止2月

相続放棄の手続きに絡み東京家裁名義の文書を偽造
2005年7月 東京弁護士会 業務停止1年

会社から任意整理を依頼されたが同10月解任され、その後1年近く預かった約3427万円を返還しなかった
2005年7月 東京弁護士会 業務停止2年

依頼人から「連絡がつかない」などの苦情が相次いだ。実際に音信不通となっていたことなどから失踪したと認定
2005年12月 福岡弁護士会 退会命令

上記の業務停止2月の懲戒請求期間中に、タクシー運転手を殴ったとして傷害容疑で逮捕され、起訴猶予処分
2006年2月 仙台弁護士会 退会命令

交通事故の保険金請求手続きで支払われた保険金約5800万円を依頼者に渡さなかった
2006年1月 第一東京弁護士会 除名

訴訟相手から受け取った和解金を依頼人に渡さず着服
2006年1月 横浜弁護士会 除名

依頼者の債務整理に当たり消費者金融から回収した金を無断で引き出したり、依頼者から預かった和解金を流用した
2006年2月 沖縄弁護士会 除名

*************************

googleでヒットした(=新聞報道された)だけでも結構あるものですね(整理していてちょっとめげました・・・)

ざっと見ると、被害金額の大小が処分の軽重に反映されているように見えますね。
でも、被害額の多寡の問題よりは依頼者の無知に乗じたかどうか、という悪性を基準にするほうが、個人的には納得する感じがします。

たとえば企業が依頼人で、相手方から受け取った和解金を弁護士が着服したような場合は、企業であるなら当然訴訟の経緯は見守っているはずですし、和解金が入金されなければおかしいと思うべきです。
一方で、個人が生まれて初めて弁護士に依頼するようなときは、何がどういう順序で進むか分からないのですから、そういう人には特に誠実にサービスを提供すべきではないでしょうか。

つまり、弁護士への依頼についても依頼者の自己責任を問えるケースと、消費者保護的な視点を考慮すべきケースに分かれるのでは、ということです。


でもそうすると、少額の個人事件はなおさら割に合わないので引き受けてがいなくなってしまうのかもしれませんね(労多くして診療報酬は少ない上にトラブルも多い小児科医の減少と似ているような・・・)


ところで上の事例を見ると、2006年になって立て続けに重い処分がなされていますが、これは世の中のコンプライアンスへの注目を反映して厳罰化が進んでいるのでしょうか、それとも悪い弁護士が増えているのかしら・・・


(おまけ)
日弁連のHPで弁護士職務基本規定というものを見つけました。

ご参考まで。
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負けない弁護士

2006-03-07 | 法律・裁判・弁護士

提訴せず「勝訴」判決文偽造、弁護士を業務停止2年 (読売新聞) - goo ニュース
(2006年 3月 6日 (月) 20:18)

依頼者に「勝訴」したとうそをつき、偽造した判決文を渡したとして、東京弁護士会は6日、同会所属の石川勝利弁護士(40)を業務停止2年の懲戒処分にした。

同弁護士会によると、石川弁護士は2003年5月、都内の女性から、勤務先に未払い給与の支払いを求める訴訟の代理人を依頼された。ところが提訴を怠って放置し、女性の再三の問い合わせに、「12月に判決がある」「勝訴した」などと虚偽の報告を繰り返した。  

さらに翌04年1月には、請求全額の約235万円の支払いを命じる内容で、東京地裁の現役裁判官の名前が入った判決文を偽造し、女性に渡した。

石川弁護士は、女性を信じ込ませるため、弁護士費用を差し引いた約203万円を自腹で支払ったが、女性が同年5月、同地裁に判決文の再交付を求めたため、提訴していなかったことが発覚した。

ご本人のお名前といい、嘘のつきかたの脇の甘さといい、最後は自腹を切る気前の良さ(?)といい、ブロガーのために作ったかのようなおいし過ぎるニュースです。


でも、これって嘘のつき方の間抜けさとか損害を補填したことはさておき、依頼者の信頼の根幹を裏切っていると思うのですが「業務停止2年」というのは懲戒のランクで言うとどれくらいの厳しさなのだろうか、と日弁連のHPをみると

弁護士に対する懲戒の種類は、次の4つです(同法57条1項)。

1.戒告(弁護士に反省を求め、戒める処分です)
2.2年以内の業務停止(弁護士業務を行うことを禁止する処分です)
3.退会命令(弁護士たる身分を失い、弁護士としての活動はできなくなりますが、弁護士となる資格は失いません)
4.除名(弁護士たる身分を失い、弁護士としての活動ができなくなるだけでなく、3年間は弁護士となる資格も失います)

懲戒請求事件の処理状況というページもあるので見てみると

懲戒請求事件処理の内訳(弁護士会)

新受 既済
懲戒 不相当 除斥満了 却下・終了
戒告 業務停止 退会命令 除名
1年未満 1~2年
1995 576 17 14 1 5 2 39 422 9 80
1996 485 16 6 1 3 1 27 402 7 52
1997 488 11 19 4 1 3 38 381 9 23
1998 715 19 16 4 2 2 43 440 4 40
1999 719 17 20 7 5 3 52 479 11 24
2000 1030 17 12 4 7 1 41 690 25 26
2001 884 34 20 4 4 0 62 778 19 38
2002 840 28 22 10 3 3 66 674 22 49
2003 1127 27 23 2 3 4 59 822 ※1 却下69
終了23
2004 1268 23 19 2 3 2 49 1023 - 却下1
終了19

※1=除斥満了については2003年より「却下」・「不相当」に含めた。

と、「2年の業務停止」は実際に下された処分の中では重いほうなんですね。
でも、この程度では退会命令とか除名のような「弁護士として失格!」という判断でないのか?というのはちょっと意外でもあります(では退会命令とか除名ってどんなことやったんだろうか、というのは興味がありますね)


ところで、これを見て驚くのは懲戒処分の件数はほぼ横ばいなのに、ここ数年の新規受理件数が急増している事です。

弁護士の先生方も無理筋な訴訟を引き受けたあげくに、敗訴したら懲戒請求されるのではたまったものではありませんね(テレビ番組で庶民の「訴えてやる!」という権利意識を高めた副作用では?)

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Mardi Gras !

2006-03-06 | ネタ

といってもブラジルではなく、オーストラリアのお祭り

「今年はやっぱり"Brokeback Mountain"だぜ」と言ったかどうかはわかりませんが、イケてるカウボーイのお写真です。

http://www.nytimes.com/imagepages/2006/03/06/international/06sydneyCA01ready.html

NY Timesの記事でも、

As dusk fell, Mr. Sellers and his group ・・・ were geared up (or, in some cases, geared down in bare buttocks) ・・・
(夜が更けるにつれギアがあがり、(また時にはギアを下げて尻を丸出しにしたりしながら))

と、楽しさが伝わってきますね^^


昔シドニーに駐在している友人のところに遊びに行ったときにも聞いたのですが、このパレードは世界的にも有名で、世界中からゲイの人が集まるそうです。
記事によるとこのお祭りは今年で28回目を数え、参加者も30万人にのぼるそうです。

シドニー(オーストラリア?)は比較的ゲイに寛容で、普段でもゲイの人の集まるにぎやかな一角があり、そこは街中でも特に治安が悪いというものでもなく、ちらっとながめただけでしたがけっこう健全な雰囲気でした。


一方NY Timesの記事は続いてハワード首相のゲイに対する無理解な姿勢を揶揄しています。オーストラリアの事情には疎いので詳しくは知らないのですが、どうもハワード首相というのは、右、というか、伝統的・白豪主義的価値観強硬派、というような文脈で語られることが多いですね。

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女に本を貸してはいけない

2006-03-05 | 余計なひとこと
ちょっと前のneon98さんのblogで、ニューヨークの自然史博物館が紹介されていました。

私はまだ行ったことはないのですが、昔この博物館についての「屋根裏の恐竜たち」という本を読んだことを思い出しました。

この本では、自然史博物館の創設以来、輸送手段が確立する前にマンモスや恐竜の骨格をいかにして持ち帰ったかなど、世界中の化石や標本を集めようとするスタッフの常軌を逸した努力を中心にこの博物館の歴史が語られています。
蒐集する狂気と整理・分類する狂気がないと博物館は生まれないのだな、と思わせられる本でした。


この本はもう10年以上前に出版されたもので、既に(日本版は)絶版なのですが、実は私の手元にはありません。

この本の話をしたときに「面白そう!貸して!」と言った女性に貸したまま、返してもらっていないんですね。


そもそも、女性には、話題になった本については読む気もないのにとりあえず「貸して」と言い、借りたが最期、読みもせず、そのうち借りた事すら忘れてしまう、という性向があるように思います。
これは、付き合っているあいてに限らず、単なる知り合いとか会社の部下・同僚などにも見られます。

こっちも貸した手前、しつこく催促するのも気が引けているうちに、相手と疎遠になって結局返してもらえなくなった本が何冊かあります。
特に、付き合っていた相手だと、完全に回収不能・貸倒処理ということになります。

なので、ここ数年は女性に本を貸すのは止めにしています。
どうしても、といわれたときは、新しく買ってプレゼントしてしまいます。



じゃあ、男はどうなんだって?



私は男に本なんか貸しませんよ。

「読みたかったら自分で買って読め」、以上、です。
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血液型ブームと景気の関係?

2006-03-04 | よしなしごと
血液型による性格判断は日本ではかなり昔からのようでして、最初は1927年、東京女子高等師範(今のお茶の水女子大学)教授古川竹二『血液型による気質の研究』に遡るそうです。

これにより1930年頃第一次血液型ブームが起き、無料で血液型の診断を行う百貨店も現れたり、古川教授は「血液型で職業と結婚の適否が分かる」という文章を雑誌に書いたりしていたそうです。

もっとも古川論文は、戦後統計的な分析手法の誤りが認められ、心理学者の間では、学術的には気質と血液型の確たる相関関係は見出せない、というのが定説だそうです(もっともそれには「気質を測定する方法が確立していない」ということもあるようです)

しかしながら「血液型本」は1970年代後半からまたブームになり、衰える事を知らない状態です。

このネタ元は永田良昭(学習院大学長)『血液型性格診断はなぜ世に受け入れられるのか』(学士会会報No.855)なのですが、永田氏が1990年代前半に行った調査では

「平均年齢45歳の女性を対象とした調査では、主婦という範疇であれ、他の範疇であれ、集合的範疇に自己を帰属させ得ている者と、客観的には主婦やその他の範疇に属する場合でも、そこに自己を帰属させる意味を見出しえていない者との間には、いわゆる血液型による性格判断への関心や信頼感に顕著な差異があることが見出された。後者のほうが関心が強く、また、信頼感が高いのである」といいます。

そして永田教授は1930年は世界恐慌、1970年代後半はオイルショックと経済的に不安定な状況のときに血液型ブームことを指摘し、「血液型で性格がわかるとした通俗書は、書名にあるように本来の意味の性格診断によって個人的同一性を確認させていただけでなく、仮の姿としての現在ではなく、あり得るかもしれない社会的役割を示す事によって、集合的同一性の確認の手懸りを提供するという人生診断、存在証明を補完する情報を提供していたのではないか」と分析しています。

まあ、これ自身も短い文章なので、なぜ「45歳平均の女性」を調査対象にしたのか、とか、「自己を帰属させる意味を見出す」ことの測定というのは厳密にできるのか、とか、「血液型による相性診断」とか血液型による他人の分類のように行動指針としてまで取り込んでいるかのように見える若者はどうなのかとか、もうちょっと踏み込んで欲しかった感じもしますが、世の中不景気になると占いが流行るというのはあるかもしれませんね。
バブル期のようにユーフォリアにあるときは心配事もないでしょうから。

となると、景気回復と共に下火になるのでしょうか。それとも階層化が進み「自分探し」ブームも続いている中では、恒常的な人気を保ちつづけるのかもしれませんね。


ところで、この文章を見ると「血液型による気質/性格の分類」というのは日本のオリジナルな発想のようなのですが、外国ではどうなんでしょうか?


で、かく言う私は、血液型とか星座占いとかおみくじなどは、都合のいいことしか信じないというタイプなので、何型/何座がどういう性格などというのはてんで疎く、その手の話になると(世の中に一定数存在する「アンチ血液型・星座派」仲間がいて共闘を組む場合以外は)いつも蚊帳の外になっています(笑)
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「理解」ではなく「受容」が大事

2006-03-03 | 乱読日記

※ 女性の方、食事前後の方には不愉快になりかねない内容がちょっと含まれておりますのであらかじめおことわりしておきます。

今、通勤用と寝る前用に2冊の本を並行して読んでいるのですが、実はこの2冊が根っこのところで共通する部分があるので、まとめてとりあげます。

<通勤用>
今までは、「人間には越えてはいけない一線があるんだよ」「よっぽどの事情がないと越えられないものなんだよ」という物語がそれなりに有効に機能してきた。でも、それを繰り返し語っているうちに、その「越えられない一線」があたかも科学的事実であるかのように受け取られてしまった。それは科学的事実ではなく、人間が作為的に構築した道徳に過ぎないんですけどね。

<寝る前用>
人はそれぞれ、体内に自分自身の基準を測るメーターを持っている。
法律も統一基準もあてはまらない、その人だけのレンジとレッドゾーンがあるのだ。
つまり、自分が普通とか当たり前と思っていることが、他の人にとっては全然普通じゃないという事があるということだ。


<通勤用>
一人の人間が人格として成り立っているのは、数え切れないほどのファクターの複合効果なわけでしょう。「実はオレがこんな風になったのはね、六つのときにこんなことがあったからなんだよ」って言う人間の話を聞くと、「嘘つけ」って思うんです。そんなことあるはずないと。お前がそんな風な人間になっているのは、さっき食った海老が不味かったからじゃないかって

<寝る前用>
人は心掛けていても机上の論理に陥りがちである。かくいうボクもそうだ。聞きかじりの話とか、想像とアドリブで構築した話に説得力を持たそうといろいろ小細工する。
街の飲み屋は、そんな机の上の話が駆け巡るところだ。自分の眼で、足で確かめる事もなく、ただ憶測と知ったかぶりで声を荒げる。


通勤用は最近お気に入りの内田樹先生と児童精神科医の名越康文先生との対談「14歳の子を持つ親たちへ」
寝る前用はリリー・フランキー「増量・誰も知らない名言集」 です。


「14歳」は子育て本ではなく、タイトルの字義通り「親自体の問題」を語っています。
そのとおり!と膝を打つことが多く、膝に痣ができるくらいです。

「名言集」はシモネタのオンパレードで、上の引用でも「一線」はそのあとに「中に出してないからヤッてない」という線引きをした男の話、「机上の論理」はそのあとに食糞についてのMのAV男優の話に続きます(このテの話は嫌いではないのですが以下自粛・・・)


「14歳」で言うとおり

【内田】
「何でも話し合える明るい家庭」という標語があるじゃないですか。これは間違っていると僕は思うんですよ。家の中で絶対口にしちゃいけない話題ってあるじゃないですか。僕は政治とセックスと宗教の話は、家庭ではしちゃいけないと思うんですよ。
(中略、そういう当否の検証できない話題であるところの)政治も、宗教も、セックスも、そういう根源的な話題は家の中では「うーむ、なかなか難しいもんだねえ」くらいでさらっとスルーしとくほうがいいんですよ。

家庭ではしてはいけないネタを、リリー・フランキーは家庭外で縦横無尽に繰り広げてくれているわけですね。


ただ、この2冊が根っこのところで通じているのは、思考の定型化・視野狭窄=判断停止することの危うさ、という部分です。
名言集においてはそれが自由で融通無碍であることの面白さ、という形で現れています。

判断停止・自分で考える(悩む)ことを放棄することの危なさについては、「14歳」で以下の指摘がされています。

 【名越】
 子どもさんの場合には、色々話をしてもちろん通じ合った場合には、その話の全体から僕の言いたいことを摑んでくれてるな、という感じがあるんですよ。「だから、これはこうしておこうね」っていう軽い結論だけ言えば、「他に聞きたいことある?」って聞いても、「うん、今日はこれでいい」って言います、子供は。でも、親御さんに同じ話をすると、「結局だから私は、こうしたらいいんですね」って、その話を百分の一ぐらいにまとめてしまう。それはそこしか聞いていないってことでしょう。
 僕ね、今まで何千人かの子どもと話して、「先生、結局こうしたらいいんですね」って聞いてきた子どもって一度も会ったことがない。ところが、「結局こうしたらいいんですね」っていう親御さんには、少なくとも数百人は会ってると思うんですよね。

「14歳」では、言葉だけでない、相手の存在全体を受け止めるコミュニケーションの重要性や身体感覚の重要性を語り、さらにそれを名人同士の対談で顕現しています。

そして「名言集」では、その人なりの「真実」を語る言葉(とても「世間」では容認されないような)をリリー・フランキーという名人がフトコロ深く包んでいます。


「理解しようとする」ことの限界・難しさと「受け容れる」ことの大事さと力量について、笑わせられながらも深く考えさせられる2冊です。





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