昨日の朝日新聞の夕刊「働く人の法律相談」を見ての疑問
内定取り消し 合理的理由なしには許されない
採用内定は、口頭も含め通知された時点で、労働契約が成立したと考えられます。これを取り消すのは解雇と同じことで、合理的な理由がない限り許されるものではありません。
景気悪化を受けての内定取り消しとなると、整理解雇に当たります。有効とされるためには・・・[以下整理解雇の4要件の解説]
これらの要件を満たさない場合は解雇権の濫用にあたり、内定取り消しは無効といえます。学生は来年からの就労を認めるよう会社に要求する権利があります。または、少なくとも就職が1年遅れてしまうのですから、せめて1年分の給与相当額を会社に請求することを検討しましょう。
執筆者は弁護士なのですが、本当にそうなのでしょうか。
内定通知で労働契約が成立するとすると「内定」ってなんなのでしょうか(そうだとすると労働契約法上は内定の時点で就業規則を書面で提示する必要があります。)。
正式な採用通知、または正式な採用の申し込みと承諾といえるような事実行為が必要なのではないでしょうか。
当然「内定だから勝手に取り消してもいい」というわけではなく、契約成立のための信義則上の義務違反として取消した企業側にも一定の責任は生じると思いますが、整理解雇の法理が適用されるというのは言い過ぎのように思います。
そのうち(何事も後追いの)格付け機関は、採用内定もニューシティレジデンス投資法人の倒産の原因になり、 日本レジデンシャル投資法人が剰余金をすっからかんにして命からがら逃げ切った「フォワード・コミットメント」(最近なんでもカタカナで言うのはどうにかしたほうがいいと思うのですが、将来の物件の売買義務を負うこと)の問題と同じとして「採用内定者が多すぎる」というのを理由に格下げするようになるのかもしれません。
それは冗談として、内定を取り消された学生は気の毒なのですが、逆に言えば本来企業の継続的成長には従業員の新陳代謝も必要なのにもかかわらず現在いるコストの高い社員の早期退職させるとかする前に内定取り消しをするような企業は①そこまでの体力・信用力すらない②その程度の見識の経営者、かのどちらかなので、入社して後悔するよりはよかったとも考えられないでしょうか。
ただ、タイミング的には就職活動は難しい状況で、1年留年するとしても年齢とか留年数や経済的に後がない人もいるという問題はあると思いますし、途中で破綻してしまったとしても就業経験があるのであればかえって中途採用のチャンスがあるので、内定取り消しのダメージは実質的にはかなり大きいのかもしれません。
その辺は今の企業の採用の仕組みの横並びや雇用の流動性のなさの問題が根本にあります。
そしてそれは労働契約の終了についてかなり厳しい判例が原因のひとつになっていることも否定できないと思います。
内定取り消しを受けた学生に対して応分の補償は必要だとは思いますが、上のように整理解雇の4要件を振り回すことは、かえって企業の採用意欲を減退させてしまうことにはならないでしょうか。