松本清張に同名の短編があります(こちらの短編集に収録されています) 。
Wikipediaから引用すると。
古代ギリシアの哲学者、カルネアデスが出したといわれる問題。「カルネアデスの舟板」ともいう。
舞台は紀元前2世紀のギリシア。一隻の船が難破し、乗組員は全員海に投げ出された。一人の男が命からがら、一片の板切れにすがりついた。するとそこへもう一人、同じ板につかまろうとする者が現れた。しかし、二人がつかまれば板そのものが沈んでしまうと考えた男は、後から来た者を突き飛ばして水死させてしまった。その後救助された男は殺人の罪で裁判にかけられたが、罪に問われなかった。
現代で言えば緊急避難ですね。
それをやったのがこちら
資産の取得中止《パシフィックロイヤルコートみなとみらい アーバンタワー》及び平成20年11月期(第10期)の運用状況の予想の修正に関するお知らせ
(2008年11月18日 日本レジデンシャル投資法人)
10月末のエントリで触れたように11月末までにみなとみらいにあるタワーマンションを117億円で取得する契約を結んでいましたが、これを違約金を払ってキャンセルすることにしました。
これにより今期の当期純利益は80%近く減ることになりますが、手元資金で違約金が支払えるのであれば、融資がつかずに黒字倒産というニューシティレジデンス投資法人の轍( こちらのエントリ参照)は踏まないですむわけです。
一方で投資法人や運用会社の善管注意義務違反の追求を念頭に置いて慎重な説明をしています。
・H19年9月に契約した理由
・その後の外部環境の変化
・物件取得中止を判断した理由
を説明した上で
・利害関係人取引であること
・20%の違約金は不動産取引としては特殊なものではないこと
・契約時点では違約金による解除制限条項を付してでも本物件を取得することに意義があると判断したこと(外部環境の急激な変化までは予測していなかったこと)
を説明しています。
このへん少なくとも金融庁とは民事再生よりは投資法人の存続を優先するということで何らかの根回しをしているのでしょう。
あとは投資主が代表訴訟を起こすかでが、契約当初の意思決定の是非を除けば、現時点ではベストの選択(といっても選択肢はあまりなかったでしょうが)だったのではないかと思います。
そうなると問題は海に落とされてしまった売主の「特定目的会社PDみなとみらい」です。
違約金分を吐き出して2割引きで別の買主に売れれば当初の計画通りなのですが、(さすがに11月末にはしていないでしょうが)リファイナンスの時期が迫っていれば投げ売りするかデフォルトして債権者に委ねるしかなくなります。
(PDみなとみらいは資産流動化法に基づく特定目的会社(TMK)なので、借り入れも特定社債という社債の形で行っているのではないかと思うのですが、社債だと融通が利きにくいのでデフォルトしてしまったときにどうなるのか、というのは別の意味で興味があります。)
その結果TMKに出資しているパシフィック・ホールディングスへの影響が気になりますが半期報告書を見ると(p22)PDみなとみらいは連結子会社でなくて持分法適用会社になっています。
そうすると他にも巻き込まれる投資家はだれかと パシフィックロイヤルコートみなとみらいのサイトを見ると、賃貸の募集は大和ハウスグループの大和リビングがやっています。
ということはPDのDは大和ハウスだったのでしょうか(確かに大和ハウスは「ロイヤル○○」という商品名を使ってますし)。
ただ、大和ハウスの有価証券報告書には持分法適用会社として明記はされていません。出資していないのか、出資額が企業規模に比べて軽微なので「その他○社」のうちなのかもしれません(たとえば簿価が100億円で借入が70%、エクイティの30%のうちの1/3を出しているとするなら10億円ですから)。
もっとも出資額をあきらめればいいや、というだけでなく、このTMKのアセットマネジャーをやっている会社(多分パシフィック・マネジメントの子会社ではないかと)は、ここでデフォルトさせると他の運用しているファンドのローン契約条項にひっかかってしまったりする可能性もあるし、契約違反にならなくともリファイナンスはより難しくなるでしょうからそっちのほうの影響は大きそうです。