toshiさんのブログ でも紹介されていましたが
健全なM&Aを促す法改正を
(経済同友会 企業・経済法制委員会 2008年4月14日)
なんかこのタイミングで妙なことを言っているな、という感じではあります。
経済産業省の北畑事務次官とのコラボかな、と思わせます。
提言の細かい内容はさておき、冒頭のスタンスがいちばん引っ掛かりました。
1.企業の存在意義と企業買収
企業は、法律的観点からは「株主のもの」であることは言うまでもないが、また同時に「財・サービスの生産・提供にとどまらず、そのプロセスにおいて社会のあらゆる範囲での人間の活動に大きな関わり合いを持つ『社会の公器』」(当会「第15 回企業白書」)としての性格も有している。
(中略)
その意味で企業経営者は、企業活動にかかわるあらゆるステークホルダーとのバランスをとりつつ、企業価値を持続的に向上させ、利潤を追求する事業体としての機能を果たしながら、社会に対するミッションを実現し、それを通じて生活水準・利便性の持続的な向上をもたらし、ひいてはグローバルな経済発展に貢献するという、きわめて重大な責務を負っていると言えよう。
(中略)
通常、上場企業の少数株式を有している株主には、経営の才覚が求められる必然性はない。しかしながら、一旦買収によって支配的株主となった瞬間に、その投資行為を通じて、企業にかかわる様々なステークホルダーとの関係が生じ、社会に対する責任を負うこととなる。2.「健全な買収」と排除すべき「悪質な買収」
敵対的買収の脅威は経営に規律を与え、また買収によって企業価値の向上をもたらす場合もあり、こうした敵対的買収まで阻止する防衛策は認められるべきではない。あくまで、企業価値の向上に向けた努力を阻害し、企業価値を毀損しかねない「悪質な買収」に対してのみ、企業が適法にこれに対抗できる手段を保持し得るべきではないか、との考えに基づくものである。
そして悪質な買収の例として
- いわゆるグリーンメーラー等の濫用的買収者による略奪的な経営支配
- 短期的な運用利益の獲得を重視するあまり、中長期的な企業価値の向上、企業のミッションの実現を疎かにしかねない経営支配
をあげています。
しかし企業経営者の責任を支配株主の責任に転嫁しているところに論理の飛躍があるように思います。
「健全な買収」と排除すべき「悪質な買収」を言うなら、その前に「健全な株式公開」と「悪質な株式公開」についての規律の強化が先にあるべきだと思いますし、支配株主が「企業にかかわる様々なステークホルダーとの関係が生じ、社会に対する責任を負う」というのであれば、種類株式の上場のほうに切り込んでいった方が説得力があったように思います。
また、この論は「経営者の首をすげ替えるなら株主も責任を持てよ」というロジックにつながりかねない危うさを持っているようにも思います。
ところで、経済同友会のサイトの経済同友会とは を見ると
経済同友会は、企業経営者が個人として参加し、自由社会における経済社会の主体は経営者であるという自覚と連帯の下に、一企業や特定業種の利害を超えた幅広い先見的な視野から、変転きわまりない国内外の経済社会の諸問題について考え、議論していくところに最大の特色があります。
(下線は私)
とあるので、まあ、経営者の自由な発言、くらいに考えて聞き流した方がいいのかな、と思います。