一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

オリンピックと人権問題

2008-04-29 | よしなしごと
聖火リレーが妨害されたり開会式をボイコットされたりしている北京オリンピックですが、中国としてみれば言いたいこともあると思います。


そもそも近代オリンピックの始まりと欧米列強の中国領土への支配が強化されたタイミングはほぼ同じです。

イギリスは1898年7月1日から99年の期限で香港を租借しました(参照
そしてフランスは1900年から同じく99年の期限で杭州湾租借地を租借しました(この租借地は1945日本軍の敗戦とともに中華民国に返還。(参照))

ちょうどその頃、近代オリンピックの第1回アテネ大会は1996年に開催されました。
そして第2回パリ大会(1900年)第4回ロンドン大会(1908年)と順に開催されています。(近代オリンピックの歴史はこちらを参照


その意味では開会式ボイコットなどと言われると、歴史と面子を重んじる中国は「自分のことは棚に上げて何を言う」と思うのでかもしれません。
英仏は条約に基づいた租借だとか植民地支配はしたが人権侵害はしていなかったというのかもしれませんが、自治権の主張を否定している今のチベットと同じともいえます。

確かにオリンピックをからめることは、逆にオリンピックくらいしか交渉ルートがない、ということでもあるので、きちんとした国がとる外交姿勢としてはどうかな、と思います。
(そう思ったのかどうか知りませんが、イギリスの首相はこういうスタンスのようです。
英首相、五輪閉会式は出席…開会式欠席「ボイコット」を否定


逆にチベット独立支持派のような他にアピールする術のない人々は聖火リレーで(またはそれに限らず)世界の注目の集まるところでアピールするのも仕方ないでしょうし、それぞれの国で違法行為にならない範囲であれば自由なわけです。

しかしこのへんは、「自発的意思に基づくデモ」というのが中国政府にはいまひとつピンと来ていないのかもしれないので「国を挙げての内政干渉」という風に思うのかもしれません。
(でも何年か前の中国での日本大使館へのデモもけっこう日本でも大きく取り上げていたのでいい勝負か。)

********(追記)************

韓国、中国人留学生の過激行動に抗議 聖火リレー(2008年04月28日23時17分 朝日新聞)
の続報で、今朝のBS世界のニュースでKBSが中国大使館が電子メールで中国人留学生をデモに動員していた疑いがあるという話をしていました。
なかなかこのへんの温度差を埋めるのは難しいかもしれません。

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いずれにしろ、チベット問題ではオリンピックを人質にとることはできませんし、そうしたとしてもオリンピックが終わったら(人質が解放されたら)かえって弾圧が激しくなるかもしれないので、独自の人権問題として取り上げたほうがいいと思います。
その意味では今回の騒動はダライラマ14世にとっては「北京オリンピックには賛成する」という姿勢を堅持したことで、各国が「オリンピックがらみ以外の外交的働きかけ」をする契機になったことでプラスになったことは確かのようです。

ただ、チベットのほかにも新彊ウイグル自治区のイスラム系部族の問題もあるので(天然資源的にはこちらのほうが大きい?)人権問題として取り上げるのであれば本来は「チベット=ダライ・ラマ問題」にとどめずに議論すべきだと思いますが、世界の注目度を考えるとそこまで一気にはいかなそうですね。


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