一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

映画「靖国」上映中止に関して

2008-04-02 | あきなひ

<映画>中国人監督「靖国」上映中止 「抗議で近隣迷惑」5映画館自粛
(2008年4月1日(火)13:00 毎日新聞)  

靖国神社を描いたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」をめぐり、4月12日からの上映を決めていた映画館5館が31日までに上映中止を決めた。相次ぐ自粛で、当面、公開のめどが立たなくなった。
 (中略)  
3月18日に東京・新宿のバトル9が上映取りやめを決定。その後、銀座シネパトス、渋谷Q―AXシネマ、シネマート六本木、シネマート心斎橋も中止を決めた。銀座シネパトスを経営するヒューマックスシネマは「上映中止を求める電話がかかったり、周辺で抗議行動があった。近隣や他の観客に迷惑がかかるため、中止を決めた」としている。一方、Q―AXシネマの営業責任者は「具体的な抗議や嫌がらせはないが、不特定多数の人が集まる施設なので、万が一のことがあってはならない」と、上映見送りの理由を語った。  

個人的には映画が反日的というだけで反対するのでなく懐の広さを見せるべきだと思うのですが、今日はちょっと別の切り口から。

今回の上映中止がいわゆる反社会的勢力による抗議行動の結果だとした場合、それらの勢力の要望に従った不作為も「反社会的勢力との関係」にあたってしまうのではないか、という疑問です。

企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について(平成19年6月19日 犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)の別紙企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針には、「反社会的勢力」の定義として、 

暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である。

とあります。

そこで、一定の政治的主張を持っていて、特定の企業活動をやめさせたい人が上の「社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ」に金を渡して抗議活動を行った場合、それらの活動に屈すること自体が、企業にとっては間接的に反社会的勢力を利することにならないか、という疑問です。

「企業の不作為の結果間接的に反社会的勢力が利益を得るのは企業のコンプライアンス上問題はないか」、と一般化した論点を立てた場合は、「絶対に問題ない」と言い切れる人は少ないと思います。 

そうはいっても、抗議行動の活動主体が誰なのかを常に把握することは困難ですし、抗議行動自体は合理的な主張だった場合、結果的に抗議行動の意に沿うような不作為をしたからけしからん、と言われてもたまりません。  

たとえば金融庁の中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針(抄)において

なお、(3)から(6)の行政処分を検討する際には、以下の①から③までに掲げる要因を勘案するとともに、それ以外に考慮すべき要素がないかどうかを吟味することとする。
① 当該行為の重大性・悪質性
(中略)
チ.反社会的勢力との関与の有無反社会的勢力との関与はなかったか。関与がある場合には、どの程度か。  

とあります。

たとえば、金融機関の窓口である国の外貨預金や投資信託を扱うことについて街宣車などによる抗議活動が起こった結果それを取りやめたような場合も、報告徴求とか業務改善命令などの行政処分の対象になるんでしょうかねぇ。


一般に「反社会的勢力には毅然とした態度で臨むべし」と言われていますし、そのとおりだと思うのですが、突き詰めて考えると結構難しい問題かもしれません。

コメント
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