最近話題の下流社会--新たな階層集団の出現--を読みました。
著者はパルコのマーケティング誌『月刊アクロス』の元編集長。
『アクロス』」といえば、「第4山の手」などのキーワードや街角での「定点観測」(通行人のファッションを世代別にサンプリングする)などで80年代においてはかなり注目されていた雑誌です。
アンケート・統計データ、特徴的なサンプルのインタビュー内容、年表を三種の神器にして、大胆な仮説を「私はトレンドリーダーよ」というような、ちょいと高みから見下ろすような断定的なトーンで論証し、キャッチーなキーワードにまとめる、という特集記事が特徴でした。
この本は、アンケート調査結果をベースにして、若者(団塊ジュニア世代)の中で
「コミュニケーション能力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲、つまり総じて人生への意欲が低いのである。その結果として所得が上がらず、未婚のままである確率も高い」
という層が形成されつつあるという説を唱え、結果的に階層分化が進む状況を「下層社会」というキーワードで表現しています。
キャッチーなキーワードとデータをもとにした断定的な分析は「アクロス」同様ちょっと鼻につく部分もあります。
特にそれが、「・・・ということで下層社会ができる(階層分化)するのも必然なのだ」と言っている風に受け止めたくなる言い回しがけっこうあります。
しかし、本書は新たなマーケティング・セグメントの定義をする、というのがテーマであり、そのためのデータからの論証と考えれば、そこで言われていること自体はなかなか考えさせられるものがあります。
さらに、筆者も最後の方で階層分化する社会の問題点や対応策について言及していますので、途中まで読んでカチンとこられた方も、最後まで辛抱して読んでください。
そこで、本書を読んでの感想。
若年層の地域定着化が進んでいること
「都心居住」と言われていますが、実際に都心に移転してきているのは団塊世代と地方からの流入者、それに一部(自己評価が「上流・中流」)の若年層に限られている。
今や郊外ターミナル都市でもデパートや専門店ビルがありブランド物や流行物も買えるし、レンタルビデオ、ファミレスなど生活のインフラも十分。しかも大学も郊外にある(or高卒で地元に就職する)ので、生まれてからずっと自宅または自宅近辺にいても何の不都合もない、ということらしい。
それだけ郊外が便利になっているわけです。
(商業顧客の動きで言えば、世田谷・杉並のいわゆる高級住宅地区はマイナス(地元より他地区で消費する人の方が他地区から来る人より多い)になっている)
なので、埼玉県南部や神奈川県横浜・川崎地区、東京都多摩地区では、人口の移動が少ないそうです。
その中で親元から通い(=生活費もかからず)好きなことをしながら気楽に暮らそうという若者が増えているということです。
これが一概に悪いこととも言えませんし、経済成長の結果、郊外でも一定の生活基盤が整備されているというのは、日本という国の豊かさを象徴しているのかもしれません。
また、これは都心部居住者の独居・高齢化=自治体の負担増をもたらすことになるのかもしれません。
「階層化」について
僕は脊髄反射的に「階層化はいけない」と思ってしまう(世代orうけた教育のせい?)のですが、自発的に「まったり」した人生を選択すること自体を否定するのもおかしいと思いますし、
(国としての活力・競争力維持という観点からはある程度必要かもしれませんが)国民全員が上昇志向を持って競争社会に身をおかなければならない、というのが適当だとも思えません。
結局、機会の平等とセーフティーネットと所得再配分の議論なのだと思います。
語り口が嫌でなければ、なかなか示唆に富むほんだと思います。
PS こういう本がはやると「支配層が庶民を洗脳して無害化している」とかいう陰謀論がまたぞろ出てきそうな気もしますが・・・
著者はパルコのマーケティング誌『月刊アクロス』の元編集長。
『アクロス』」といえば、「第4山の手」などのキーワードや街角での「定点観測」(通行人のファッションを世代別にサンプリングする)などで80年代においてはかなり注目されていた雑誌です。
アンケート・統計データ、特徴的なサンプルのインタビュー内容、年表を三種の神器にして、大胆な仮説を「私はトレンドリーダーよ」というような、ちょいと高みから見下ろすような断定的なトーンで論証し、キャッチーなキーワードにまとめる、という特集記事が特徴でした。
この本は、アンケート調査結果をベースにして、若者(団塊ジュニア世代)の中で
「コミュニケーション能力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲、つまり総じて人生への意欲が低いのである。その結果として所得が上がらず、未婚のままである確率も高い」
という層が形成されつつあるという説を唱え、結果的に階層分化が進む状況を「下層社会」というキーワードで表現しています。
キャッチーなキーワードとデータをもとにした断定的な分析は「アクロス」同様ちょっと鼻につく部分もあります。
特にそれが、「・・・ということで下層社会ができる(階層分化)するのも必然なのだ」と言っている風に受け止めたくなる言い回しがけっこうあります。
しかし、本書は新たなマーケティング・セグメントの定義をする、というのがテーマであり、そのためのデータからの論証と考えれば、そこで言われていること自体はなかなか考えさせられるものがあります。
さらに、筆者も最後の方で階層分化する社会の問題点や対応策について言及していますので、途中まで読んでカチンとこられた方も、最後まで辛抱して読んでください。
そこで、本書を読んでの感想。
若年層の地域定着化が進んでいること
「都心居住」と言われていますが、実際に都心に移転してきているのは団塊世代と地方からの流入者、それに一部(自己評価が「上流・中流」)の若年層に限られている。
今や郊外ターミナル都市でもデパートや専門店ビルがありブランド物や流行物も買えるし、レンタルビデオ、ファミレスなど生活のインフラも十分。しかも大学も郊外にある(or高卒で地元に就職する)ので、生まれてからずっと自宅または自宅近辺にいても何の不都合もない、ということらしい。
それだけ郊外が便利になっているわけです。
(商業顧客の動きで言えば、世田谷・杉並のいわゆる高級住宅地区はマイナス(地元より他地区で消費する人の方が他地区から来る人より多い)になっている)
なので、埼玉県南部や神奈川県横浜・川崎地区、東京都多摩地区では、人口の移動が少ないそうです。
その中で親元から通い(=生活費もかからず)好きなことをしながら気楽に暮らそうという若者が増えているということです。
これが一概に悪いこととも言えませんし、経済成長の結果、郊外でも一定の生活基盤が整備されているというのは、日本という国の豊かさを象徴しているのかもしれません。
また、これは都心部居住者の独居・高齢化=自治体の負担増をもたらすことになるのかもしれません。
「階層化」について
僕は脊髄反射的に「階層化はいけない」と思ってしまう(世代orうけた教育のせい?)のですが、自発的に「まったり」した人生を選択すること自体を否定するのもおかしいと思いますし、
(国としての活力・競争力維持という観点からはある程度必要かもしれませんが)国民全員が上昇志向を持って競争社会に身をおかなければならない、というのが適当だとも思えません。
結局、機会の平等とセーフティーネットと所得再配分の議論なのだと思います。
語り口が嫌でなければ、なかなか示唆に富むほんだと思います。
PS こういう本がはやると「支配層が庶民を洗脳して無害化している」とかいう陰謀論がまたぞろ出てきそうな気もしますが・・・
最初の方に出てくる「下層階級度チェック」のようなものをやってみたら、10個ぐらい質問があって、「気ままに生きたいと思う」とか「服装は地味」「食事が面倒だと思う事がある」などというのが並んでいて、私は8割ほどマルでした。正真正銘の下層階級っていうことかな~。
かなり「決めつけ度」の高い書きぶりなのですが、自発的に上昇志向のない人、というカテゴリーが生じつつある、というテーマで、そうなると、それを肯定するのか否定するのかという立ち位置から考える事を迫られるのでなかなか考えさせられます。
「ボディーシャンプーで顔を洗える」なんていうのがあったら、100点満点だったかも!