玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

就職氷河期

2010年02月12日 | 日記
 ある学生は「高校卒業間際になって履修単位不足が発覚して、ひどい目にあった。今度は大学を卒業する時になって就職氷河期に直面している」と“不運”を嘆いた。“ああ、あの時の子供達なのか”と納得した。
 確かに“不運”である。自分が生まれる年を選ぶことはできないし、日本が大不況の真っ只中にあることも、彼らの責任ではまったくない。新潟産業大学で開かれた「就活激励会」を取材していて、少し彼らのことを気の毒に思ってしまった。
 広川学長によれば「“就職に強い大学”をキャッチフレーズにしている本学も、今年は厳しい」という。四年生の就職内定率は七割ほどで、例年就職率九割以上を誇る産大にとっても、異例の事態である。しかし、それでも他の大学に比べれば“いい方”とのことで、いかに今年の大卒者が苦労しているかが分かる。「来年は、今年よりは良くなる」と学長は見ていて、少しは明るい展望もある。
 しかし、ある教員が大学で出している「就職だより」を読んでいるかと訊ねたのに対し、手を挙げた学生が一人もいなかったのには驚いた。まだ二月とはいえ、あまりにも危機意識が薄いのではないか。大学側の開催意図が、三年生を激励することだけではなく、“危機意識を持たせよう”とすることにもあったことが、よく理解できた。
 もうひとつ、別の教員が「毎日、新聞を読んでいるか」と訊ねたのに対し、これもまた手を挙げた学生が一人もいなかった。それほど驚きはしなかった。自分もまた、学生時代に新聞を読むことはなかったからだ。まず、新聞を購読するほどの経済的余裕がなかったし、お金があれば本を買い、時間があれば本を読むという生活だった。
 一人の学生が言っていたことが印象に残った。「今まで本気で頑張ったことがない。今回ばかりは頑張りたい」と正直に発言した。その言葉を聴いて、日本の若者は頑張らなくても生きてこられたし、これからも生きていけると思っているのではないかということを思った。若者の学力低下は、そのあたりに起因している。就職氷河期がそんな若者を奮い立たせることになるなら、それも悪くない。

越後タイムス2月5日「週末点描」より)

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