「CD」が登場する前の「LPレコード」全盛時代、ベートーヴェン「第9」の1枚ものLPのほとんどは「第3楽章」が裏面にまたがり筆者は鑑賞中に楽章の途中でレコード面を変えることに時には鬱陶しさをよく感じたものである。そんな中でも今回紹介する3枚の「1枚もの第9」のレコードは「第3楽章」が裏面にまたがらない数少ない存在だった。
先ず写真(上)は「日本ビクター」が1960年代末頃に「RCAレーベル」発売記念特別新譜としてリリースしたアルトゥーロ・トスカニーニ/NBC交響楽団ー1952年録音モノラル盤/SX-2019(M)でこのLPはレコード第1面の冒頭に「コリオラン序曲」を収録その後に「第1楽章」・「第2楽章」、「第2面」に「第3楽章」・「第4楽章」が収録されている。因みにトスカニーニの同録音の「第9」のこれ以外の1枚ものLP盤は「第9」のみ収録だが「第3楽章」は裏面にまたがってカッティングされていた。今改めて「モノラル専用カートリッジ」で再生してみると音質の違和感はほとんど感じられなかった。
次ぎに写真(中)はヘルベルト・フォン・カラヤン/フィルハーモニア管弦楽団による1955年EMI録音の当時の「東芝音楽工業ーエンジェル・レコード盤」(AA-7382/1960年代中期発売)である。このLPは「第1面」の冒頭に「エグモント序曲」を収録、「第3楽章」と「第4楽章」はトスカニーニ盤と同様「第2面」に収録している。オリジナルはモノラル録音だがこれは電気的にステレオ化した「擬似ステレオ盤」であった。
最後のアンドレ・クリュイタンス/べルリン・フィル盤は「独エレクトローラ」の外盤でこれは「第9」のみが収録された1枚ものとしては珍しく「第3楽章」・「第4楽章」が「第2面」にカッティングされたLPである。(独Electrola/7 69394 1)こちらは1957年録音のオリジナル・ステレオ盤だがクリュイタンスの棒が全体的に遅いため全曲の演奏時間も約72分を要している。従って「第1面」(第1楽章・第2楽章)が約30分、「第2面」(第3楽章・第4楽章)が約42分)の収録になっている。この写真のLPがリリースされた1988年は世はすでにCD時代、LP盤のプレスもヨーロッパが中心でその生産量もCDに押され減少傾向にある中、「第2面」の長時間収録もカティング技術の進化よるものかレコード内周の音質劣化は気にならない1枚であった。
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