教育のヒント by 本間勇人

身近な葛藤から世界の紛争まで、問題解決する創造的才能者が生まれる学びを探して

沖縄と秋田の教員交流 経済効果のトリガーになる?

2008-10-15 08:51:25 | 経済
☆学力テスト最下位の沖縄 秋田に教員の人事交流申し入れ(10月15日6時13分配信 河北新報)によると、

「成績トップのノウハウ教えて」。全国学力テストで小学校の全教科で2年連続1位だった秋田県に、2年連続で最下位に甘んじた沖縄県が、教員の人事交流を申し入れている。全国トップの好成績を生んだ秋田の指導方法を経験し、沖縄の学力向上に役立てるのが狙いだ。秋田県教委に打診があったのは9月。沖縄県教委の幹部から、小中学校の教員を1人ずつ相互に派遣したいと伝えられた。派遣期間は1年間で、3年間の継続を希望している。

☆よいことではないだろうか。沖縄と秋田だけではなく、全国の市町村に働きかけてみてはどうだろう。18,00弱の市町村から沖縄と秋田に1年間の研修として参加する人数が多ければ、両県の経済効果は向上するはず。

☆観光立国と教育立国の両方のコンセプトが協調し合うのはよいこと。開かれた学校づくりの拡大版でよいのではないかな。80億円ほどの経済の流れが生まれるはずだが、国家予算に比べたら、あまりに少ないかなぁ。

アイスランドの行方?

2008-10-14 07:14:21 | グローバリゼーション
☆「アイスランドが身売り?  グローバル資本階級の到来?」の記事は興味深い。

☆人口30万人ほどで、軍事力も持たず、他国をステイクホルダーとしている経済ベース国家ならではのジョークではあるが、ジョークはある真理を射抜くメタファーでもある。

☆何を見通しているのか?国家が企業同様の法人だとしたら・・・。そんなわけはないのだが、国家とは何か?20世紀型ではない国家。中世→ルネサンス→近代の経過の中に、アイスランドのような事態が起きているケースがあるはず。

☆近代化の行きつく先は、国家もたんなるシステムに過ぎないということ?

参照)Iceland For Sale On eBay

In the meantime, the entire country and all its assets were jokingly put up for grabs on the Internet auction site Friday, with bidding starting at 99 pence.The ad read, quote, "Iceland will provide the winning bidder with a habitable environment, Icelandic Horses and admittedly a somewhat sketchy financial situation." By mid-morning the top bid surpassed 17-million dollars.


広田照幸氏のわかりやすい教育ビジョン

2008-10-13 21:49:19 | 
21世紀の社会と教育
広田 照幸
アドバンテージサーバー

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☆本書は、前回紹介した苅谷剛彦さんの講演などを収めた岩波ブックレットとは好対照。あの全体集会中止という事態となった第57次教育研究全国集会の全体会で話されるはずだった広田照幸さんの講演内容ですね。

☆広田さんは教育組合の人にまっすぐに提言しています。今のままではダメですよと。今までのように、野党慣れしていて、反対・抵抗していればよいというわけにはいかんですよ。政権交代なんてことがおこれば、与党側に立つことになるかもしれない。そのときに21世紀の長期ビジョンを見据えて、政策提言しなければいけないこともある。だから、そのときのための準備をしましょうということのようだ。

☆政治的な問題は高度で、私はわからないが、広田さんのビジョンや、外部環境の変化の説明はわかりやすい。一読をお勧めしたい。

☆それにしてもビジョンを押さえる時に、これからは21世紀において自己選択判断できる賢い市民をつくる教育が重要なのだから、賢い市民をつくらない教育を考えておくことが肝要というのは、わかりやすい。

☆それは次の3つ。

1)イデオロギー的な教え込み
2)価値相対主義
3)私生活主義

☆だというのです。教条的で、何やってもつまんなーいとか、得をすればそれでよいとかという感覚を抱き、自分の身の回りだけにしか関心を持たないような教育はダメだということですね。

☆つまり、官僚近代教育、つまり従来の教育がそれだということです。これは結構キツイ。教員組合の方々に、あなたたちも賢くない市民をつくるのに荷担してきたのですよというパラドクスを投げかけているのです。

☆しかし、実行委員長の高橋睦子さんは、それを寛容に受け入れています。これには少し驚きました。21世紀の教育はどこか変わる可能性があるのかもしれません。

☆ところで、東浩紀さん的な、ポストモダンのメディアやコミュニケーション、宮台真司さん的なサブカルチャー的な具体例をエピソードとして話してもよいのではないかなと思いますね。

☆苅谷さんにしても広田さんにしても、教師の現場という共同幻想の領域でしか分析されないでしょ。子どもの領域は、家庭と学校とメディアに広がっています。地域よりメディアです。なぜそこを避けるのでしょうか?不思議です。タブーの領域なのでしょうか・・・。

苅谷剛彦氏の格差社会と教育改革の隠れたアイデア

2008-10-13 19:05:33 | 
格差社会と教育改革 (岩波ブックレット NO. 726)
苅谷 剛彦,山口 二郎
岩波書店

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☆苅谷さんは格差社会とは要は不平等社会だという。格差社会とは機会均等の社会を前提にするから生まれる社会だろう。不平等社会は、封建社会を前提に市民が頭にきたこんな不平等社会というときに使うのだろう。

☆格差社会と不平等社会とを同一視することによって、いまだ残っている封建的な現象を仮想敵国にし、平等社会のパラドクシカルな欠点を隠ぺいすることに役立つアイデアを苅谷さんが教育社会学者として語るのはなぜだろうか?

☆ポジティブリストだけだして、教育の全体の改革を実行しようとしない中教審や教育再生会議に、こんなリストアップ改革は、予算をどこから持ってくるのか、教員を過労死させることになるぞと批判する苅谷さんは、そもそも教育改革はガス抜き戦術だとなぜストレートに論じないのか?

☆岩波ブックレットとしてはなんだか寂しい。複眼思考提唱者の苅谷さんのアイデアを萎縮させたのは何なのだろう。本人はそんなことはないと言うかもしれないが・・・。

南部さんと下村さんが語る日本の教育環境

2008-10-13 09:30:30 | 授業
☆「ノーベル賞受賞4氏 自由な論争が磨いた理論 世界に挑んだ独創の気風(産経新聞 2008.10.13 08:28)によると、昨年の取材で、南部陽一郎さんは、こう語った。

「物理を勉強しようと思った動機は湯川博士。だが当時の東大物理学科(の専攻)には、素粒子物理がなかった。『素粒子をやりたい』と教授に言ったら、『そんなの天才にしかできないぞ』といさめられたが、それを無視して朝永博士らのグループに行って話を聞いていた」。昨年、取材に応じた南部さんは、笑顔でこう振り返った。

☆今でもそういう環境ではないのだろうか?そんなの天才にしかできないぞというフレーズは格差社会をつくる優勝劣敗イデオロギー。今もあるでしょう。

☆「化学賞は意外」「クラゲ85万匹採取」下村さん語る(朝日新聞 2008年10月8日21時24分)によると、下村脩さんは米国に居続けた理由についてこう語った。

「昔は研究費が米国の方が段違いによかった。日本は貧乏で、サラリーだってこちらの8分の1。それに、日本にいると雑音が多くて研究に専念できない。一度、助教授として名古屋大に帰ったんだけど、納得できる研究ができなかったので米国に戻った」

☆21世紀金融大恐慌の影響で、米国もかつてのように研究費をだせるかどうかわからないが、日本に比べりゃあ、雑音は多くはならないだろう。ともかくこの話も今の日本では変わらないでしょう。

☆大学の話だけれど、初等中等教育の先生にもあてはまる。夢を見続けられる授業にできるだけ先生方が集中できることが、教育改革の大反省点。文科省も教育委員会もそして家庭もそういう望みを持ってくれるとよいのに。

☆そんなの理想ジャンというのは「そんなの天才にしかできないぞ」と南部さんがいさめられた当時の思考回路に通じているし、そういう雑音が子どもたちの才能をヘコませる。



福山雅治主演「ガリレオ」とノーベル賞

2008-10-13 08:53:17 | 授業
福山雅治さん主演のドラマ「ガリレオ」が映画化する。福山さんは「湯川」という名の天才物理学者で・・・、あっストーリーの紹介をする必要はないなぁ。

☆とにかく視聴率が高いそうだ。そんな折、日本出身者4人が、ノーベル物理学賞と化学賞を受賞。メディアとしては利益増の大チャンス。

☆しかし、学校にも久々によき影響を与えてくれるだろうと期待したい。「湯川博士」つながりで、再び理数への興味がわいてほしいし、授業でも福山雅治さん扮する「湯川博士」は「論理とは何か」と語っている。

☆「論理」とやはり「創造力」これを再びキーワードに授業をデザインしてほしい。学習指導要領や教育の改悪があっても、授業が生き生きしていれば、子どもたちは救われる。

☆それとノーベル賞を受賞する方々のキャラクター分析をみんなでするとよい。どうもリクルート的人間とは違う。あっと驚くことを考える夢を見続ける人やゴルフよりも読書好きとかあれっと思ったらどこまでも追求するとか気が遠くなるような実験回数を重ねるとか、一般に排除されがちなキャラクター。

☆もっとも小林先生の家系には総裁や天文学者、医学博士がいたりして、やはり階層社会の影響は大?いやいやそういう階層社会のフラット化のためにも、「論理」と「創造」は大事なキーワードであるはず。

英国「タイムズ(The Times)」誌、「世界の大学ランキング200」を公表

2008-10-12 10:54:55 | 文化・芸術
☆「日本の高等教育力、世界6位=大学トップ200に10校-英情報会社(10月11日15時51分配信 時事通信)」によると、

英国の大学情報会社タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)とQS社は11日までに、高等教育力の国別世界ランキングを初めて発表し、日本は6位に入った。今年5年目となる世界大学順位では、上位200校から慶応大が外れ、前年の11校から10校に減少。国内トップは引き続き東京大だが、昨年の17位から19位へ低下した。 

QS社のサイトにはいると、200位までのランキングがずらりと公表されている。そのうち20位までを表にしてみたが、知の英米世界戦略は貫徹したということか。

☆東大や京大はなんとかがんばっているということかもしれない。北京大学は36位から50位に下げたというから、なんとも経済動向と知の拠点は連動しているのか。

☆世界危機を引き起こすのも、克服するのも英米・EUそして少し日本。まだまだ受容する大国は、知の時代に後塵を拝するというのが世界大学ランキングの表現方法・・・。なんともやりきれない。

☆2013年都心にハーバード専願の中高一貫校構想を、新日本科学の社長永田良一氏が進めているというのも、こういう背景があるからだろう。

☆軍事力・経済力・情報力のヘゲモニーを英米が握る・・・。いや近代化の一側面としてすでに握っている。この中にあってどうやって自由にそして幸せに生きるというのか。格差社会について国内で議論することは英米世界戦略を支援することになりかねない。仕掛けられたパラドクスをいかに解くのか、あるいは・・・。

中学受験「勝ち組」という認識以外はないのか?

2008-10-10 08:38:19 | 文化・芸術
☆AERA(2008年10月13日)には、3つの教育記事が掲載されている。その中に、≪中学受験「勝ち組」の挫折感≫というレポートがある。

☆世の中のあこがれる私立中学に入っても必ずしもハッピーではないよという意味で、中学受験「勝ち組」の挫折感と表現しているのだろうが、これは≪官学の系譜≫の優勝劣敗思想の見方。

☆≪私学の系譜≫のものの見方だと、そういう優勝劣敗思想そのものが誤りで、つまり社会ダーウィズムではなく、啓蒙思想的な社会正義という価値に基づけば、勝ち組も負け組もない。あくまで価値の選択の自由が学校選択であり、中学入試である。選択の結果入学した学校だ。「勝ち組」も「負け組」もあるまい。

☆要は世評やマスコミに押しつけられた価値で競争するか、選択の自由意思によって競争するかの大きな違いがある。受験生も保護者も塾も学校もマスコミも、学校選択の意味について脱構築することが大切。

公立学校の底力が映し出す今日の教育問題

2008-10-09 03:39:52 | 
公立学校の底力 (ちくま新書 742)
志水 宏吉
筑摩書房

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☆12の公立の小学校・中学校の事例があげられていて、公立学校が多様で多元的な課題に取り組んでいる様子がわかる。おそらくこの12の事例ケースのいいとこどりをしているのが公立中高一貫校の姿勢だろう。

☆だから、12校すべての試みを整理すると公立学校の理想の姿が現れる。しかし、同時に著書の志水宏吉氏も語っているように、現実はどうなのだろうか。理想に向かう現実の学校に通わさざるを得ない子どもたちの教育環境は絶望的ではないだろうか。

☆文科省・教育委員会は、本書を熟読玩味し現実的な教育改革プランを立てるべきである。

☆さて、そのうえで、本当の問題が解決されないまま厳然と横たわっているということも見逃してはならない。志水氏は、4つの学校の夢を挙げている。

1)能力主義の夢
2)平等主義の夢
3)統合主義の夢
4)民主主義の夢

☆そして、この4つの夢・理想に明確な異論をさしはさむ人はいないだろうと言っている。これは問題だ。能力主義の能力とは何か?その基準について議論がなされず、IQや偏差値という相対主義的能力価値が根底にある。身分社会に比べ能力社会はましだが、この基準が論議されない以上、能力主義は悪夢だ。

☆平等主義は、機会均等や社会的正義を言っているのであろうが、官主導の配分・分配の量の平等以上のことを言っていない。市場の正義と公共の正義を、市民の内発的競争的共生で作っていくシステムでない限り、形式的平等どころではなく、コントロールされてた配給平等である。このような平等主義もまた悪夢である。

☆統合主義で階層・階級間の格差を無化しようというのだろうが、多文化・共生というのは果たして、葛藤なき生活圏なのだろうか?むしろ脱統合主義でない限り、多文化の調和や共生など不可能のではないのだろうか?多文化の調和や共生は無限の差異を生み出す創造主義でなければならない。その真逆の統合主義など息苦しい悪夢に過ぎないのではないだろうか。

☆民主主義の夢は、シチズンシップ教育に収束するのだろうが、日本の国家自体が国家と市民社会の区別をしない構造になっている。自治体の都市デザインでさえ、市民の声は反映されない。ガス抜きはいっぱいやっているだろうが・・・。役人主導の都市づくりから抜けきらないのに、いかにして民主主義の概念を教育できるのか?議論なき民主主義、参加なき民主主義、責任回避の民主主義などこれまた悪夢だろう。

☆公立学校を支える基盤は、この4つの悪夢、4つのコントロールシステムの手中にある。本書は志水氏の近代教育のアイロニーのレトリックで埋め尽くされている。本書と時同じくして発刊した拙著「名門中学の作り方」と併読されると、公立と私立、≪官学の系譜≫と≪私学の系譜≫の差異の理解が深まるだろう。

橋下知事も抜け出せない現代教育の枠組み

2008-10-07 08:12:47 | 文化・芸術
☆教育委員問われる存在価値 橋下知事発言で注目(10月5日23時35分配信 産経新聞)の記事の中に、おもしろい三者の議論がある。

橋下知事が1日付で教育委員に任命したのは、陰山英男氏(立命館小副校長)と小河(おごう)勝氏(大阪樟蔭女子大講師)。この2人の考えは生野委員長ら他の委員とは異なり、知事の持論に近い。小河氏は「公立学校の最大の課題は(生徒・児童の)学力を守ってあげること」。陰山氏も「受験テクニックは現代社会を生きる力だ」。これに対し「大阪の教育は、学力面はともかく人間教育では信頼を得ている」というのが生野委員長の主張だ。・・・・・・1日に知事室で行われた橋下知事と生野委員長、陰山氏、小河氏らの懇談。両氏の教育論を聞きながら押し黙ったままの生野委員長を横目に、橋下知事はこう語った。「お二人の力で、大阪の教育界にある『学力がすべてではない』という誤ったスローガンを改めてほしい。教育委員主導で号令をかけてほしい」

☆まさにここには、「きっちり型」優等生vs.「のびのび型」周縁生の現在の抜けられない教育パラダイムがある。橋下知事らは、のびのびもいいけれど、きっちりねと言っているわけだ。生野教育長は、いややはりのびのびでええやんかと。

☆どちらもタコツボ内でのお話なのだが・・・。まっ、しかし両者がぶつかれば第三の道は拓けるかぁーっ。