☆「今時の若いもんは!・・・」というのはいつの時代もあったけれど、最近のは困る。「今時の若者」を非難するのは今回だけは的外れだからである。彼らは確実に時代を拓く役割を引き受けているからだ。
☆もちろん、65%は従来の考えに従っているだろう。5%はそこには居辛く逃走しているだろう。しかし、この逃走は闘争を迂回しているだけで、創造の閃きがある領域だ。
☆さて残りの25%。この「今時の若者」はクリエイティブ・クラスで、団塊・断層の世代が理解できないライフ観を持っている。従来型の学校社会や企業社会に興味と関心を持っていないし、かといって、逃走も闘争もしない。迂回もしない。ワープしてしまうのである。すべてリソース。それだけである。新物好き、好奇心旺盛、刺激がなければすぐ飽きるという、人間の本性まるだしの新教養人なのである。
☆まずはそのことを理解するためにも、レッテル貼り「若者論」の幻想を打ち砕くのはよいことだ。
☆しかし、65%の中には、すでにその幻想の虜になっている、つまりオリエンタリズム化している若者もいることも確かである。大人の「若者論」の幻想を打ち砕くことも誠に重要だが、催眠術にかかっている若者の救済も肝要である。
☆本書の著者と対談している本田由紀さんが、それほど若者はこのレッテル貼りにメンタルにダメージを受けていない、迷惑は被っているがと語っている。「若者論」なんてそんなものと言いたいのだろうが、実際にはこの「若者論」を鵜呑みにしている教師の言動がダメージをあたえていることも否めない。
☆著者と本田さんは社会学者だからデータにないものは取り扱わない。しかしデータは、現象を造るが、すべての現象を分析できない。本書は重要な視点だし、検証の成果だが、現場に働きかける気概は感じられない。それでよいというスタンスなんだろうが・・・。