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先週の読書

2008年07月07日 13時14分50秒 | 読書
 もういい加減まずいんじゃないか、このままじゃ。出生率の低下と自殺率の高さと、そしてFマリノス。出生率の低下と自殺率の高さは、この国が住みにくい国だということの証であるから、政治家たちはもっと問題にしてもいいと思うのだが、やつらの考えてることはよくわからないな。Fマリノスに至っては、何も改善しようとしないところがすごい。14位。J2がすぐそこに見えている。

岡野宏文/豊崎由美「百年の誤読」    ぴあ
 最高。
 大笑いして、ワクワクしながらページをめくった。明治以来100年間のベストセラーを論評する二人。豊崎由美は「文学賞メッタ斬り!」でも歯に衣着せぬ毒舌が楽しかったが、名作に臆せず、権威に媚びず、テンションそのまま全開で日本文学史(ベストセラー史、か)を駆け抜ける様は快感。
たとえば高村光太郎の「智恵子抄」。
 岡野「この高村光太郎の『智恵子抄』ってのどうなの? 世評は高いんだろうけども、詩の技巧としてどうなの? 繰り返しが多すぎやしないか」
 豊崎「リフレインが叫んでる(C松任谷由実)」
 岡野「とにかく同じことを何度も何度も何度も……くどいっ!」(略)
 豊崎「この『人類の泉』には光太郎の傲慢さが端的に現れてますよね。〈あなたは私の為に生まれたのだ〉だって! バカこいてんじゃねーっつーの」(略)
 岡野「有名な『あどけない話』だって、よく読むと非道な詩なんだ。〈智恵子は東京に空がないといふ。〉ってあるけど、普通の亭主だったら自分の奥さんがそんなあやしげなこと口走ったら、かなり精神的に追いつめられてるんじゃないかって心配するだろ。なのに、光太郎ときたら〈あどけない空の話である。〉なんて能天気に締めくくってる」

 ちなみにトリを勤めるベストセラーは「世界の中心で、愛をさけぶ」。その下品なタイトルを聞いただけで(いや、タイトルが下品なんじゃなくて、そのパクリ方が下品きわまりない、と。「世界の中心で愛を叫んだけもの」をパクったのか、「世界の中心でアイを叫んだけもの」をパクったのか、どっちなのかは知らないが。いずれにしても下品)、たぶん、一生読まないと思ったけれど、二人の評を見て、書評って大変だな、とほとほと感じた。
 あと、競艇の親玉曽野綾子って、今まで読んだことなかったけれど、生理的に受け付けないことがわかったことも収穫。
 とにかくこの本は多くの人に是非読んでもらいたい。


火坂雅志「天地人」(上下)     NHK出版
 兜の前立てに「愛」と書いた上杉家家老直江兼続の物語。
 うーん、普通の歴史小説。とりたててどうの、というものではなかった。
 あと、変なページ稼ぎはいらない。
 「春日山城は、
  為景
  謙信
  景勝
  とつづいてきた」
 って、これ、1行で済む話だろ、どう見ても。こういうの多すぎ。


辛酸なめ子 訳・絵「『新』訳 星の王子さま」       コアマガジン
 訳ったって、誰かが日本語訳したものを、彼女が味付けしてるってことで、訳でもなんでもないだろ、それって。
 と、のっけからいちゃもんつけたが、まあ、でも、一応目を通す。味付けで個性を出さなければならないため、なんだかその独自部分が浮いてしまっている。
「偏差値至上主義の大人たちによって、私の夢、そして才能は潰され、6才にして絵筆を折り、絵描きの道はあきらめざるを得ませんでした」
 1940年代のフランス人の話に偏差値至上主義者たちはとってつけたような気がする(こんなんばっか)。
 百歩譲ってそれもよしとしよう。
 しかし、どうしても「よし」とできないのは、3本のバオバブ(サンテックスもちゃんと3本のバオバブの絵を描いている)を、よしゃあいいのに、わざわざ、「3,4本のバオバブ」と変えて、4本のバオバブの挿絵をつけたことだ。このバオバブは3本でなくてはならないのだ。4本じゃ何の隠喩にもならないだろう。日独伊三国同盟というものを知らないのか、こいつは。
 自分の個性を出したいのなら、サンテックスの話ではなく、自分の話で個性を発揮すればいいのである。これを読んだ人が「星の王子さま」はこういう話だと思いこまなければいいのだけれど。

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