毎日が観光

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彩湖

2009年08月14日 18時12分28秒 | 観光
 2009年夏は、きっと「法」という字の読み方に「のり」があることを日本国民に周知徹底させた季節として長く記憶されることだろう。テレヴィつけりゃ、「酒井法子容疑者がどうたらこうたら」、チャンネル変えりゃ、「東名高速道路、こちらが崩落した法面です」。「法面(のりめん)」は馴染みの薄い専門用語だろう、一般的には。ところでぼくにはもう亡くなってしまったが、大変愉快な祖父がおり、その名を憲之(のりゆき)といった。つまりさ、たとえば日本国憲法って、読み方によっちゃ、「日本国ノリノリ」って、なんだか愉快じゃありませんこと、奥様。


 あだしごとはさておき、いつもの通り、彩湖。羽倉橋まで右岸を走り、羽倉橋で対岸に渡り左岸へ。もちろん遠回りだけれど、これでちょうど60kmの道のりになる。
 彩湖に着くと、そこでトライアスロン大会が開催されていた。着いた頃にはレースも終盤、やがてレースは終了し、いい体をした皆さんは三々五々談笑している中、タイムアウトの選手たちが帰ってくる。彼らには順位はつかない。全部泳いで、こいで、走っても完走とは認められないのだ。それでも笑顔で。励ましの拍手に手を振りつつ。
 ああ、こういうのっていいな。スポーツの楽しさだな。
 まあ、そんないい感じで彩湖をあとにし、荒川を再び東京方面に走っていると、戸田橋を過ぎたところでポツリ、と雨。自転車の旅慣れをしてるaquiraさんは、こんなことでは慌てません。数枚用意してあるコンビニ袋に携帯電話とデジカメと財布を入れ、密封してフロントバックに入れます。これなら濡れない。一度電気ものは入れたのに、財布を入れなかったら大変なことになってしまったので、お財布も。
 ところが雨はそんな甘いものじゃなかった。バケツをひっくり返したような雨とかそんな表現があるが、東京の方ならおわかり、先週の日曜日の夕立はそんなもんじゃありませんでしたな。普段走ってるときもボトルの水を頭からかぶり、ジャージにわざと垂らすことで熱を奪っているので、濡れること自体にそれほど抵抗感はないんだけれど、あまりにも強い雨は走ってて、目が痛む。めがねかけてるのに、直撃だもの。
 しばらく走って新荒川大橋で雨宿り。橋の下には行き場を失った多くの人々。
 そのうち、降り始めと同様、唐突に雨が上がる。人々は半信半疑で空を眺めたりしている。一人が橋を出て走り始めた。顔を見合わせる人たち。また誰かが続く。それを見ていて、激甚な災害などで非難した人々の姿ってこういうものなのかもしれない、と思う。爆撃を避け、防空壕にこもっていた人たちが爆撃が収まった後、しばらくしてどうなんだろうと出てくる、それをものすごく小さなスケールで表現した感じだ。
 普段なら人のパンクなんか気にもしないのに、たぶんそのとき誰かがパンクしたらみんなで手伝う、そんなメンタリティがそこにいるぼくたちを支配していた。敗戦後、懸念されたより餓死者がずっと少なかったのは、負の状況をともに乗り切る集団のもつこうしたメンタリティによるものかもしれない。
コメント
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