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高橋源一郎「日本文学盛衰史」

2008年05月23日 11時28分50秒 | 読書
高橋源一郎「日本文学盛衰史」            講談社文庫

 ソッ、ソッ、ソークラテスかプラトンかあ、ニイ、ニイ、ニーチェかサルトルかあ、みーんな悩んで大きくなったっ!
 覚えてる?
 この本は、そんな風に悩んでいた人たちの物語。
 ふざけんな、内面ってものがあるだろう? どこにあるんだ? え? 白状しろよ、と近代ってものをいきなり突きつけられて、内面を探す旅に出た人間、出たっきり帰らなかった人間、途中であきらめた人間、どこにも行かずに言葉を探した人間、さまざまな人間たちが、「小説を書くためにはまず言語を作り出すことからはじめなければならない時代であり、国家というものがまだ手で触れることのできるものであると信じられた時代」を生き、さらに「もうそのどちらもほんとうには理解できなくなっていた」啄木の世代に至るまでの苦悩、煩悶、苦しみ、悩み、欲望と希望と絶望がここにある。
 ここは、だからなのか、なぜかとても寂しく悲しい世界だ。
 幸徳秋水と啄木とを交互に登場させるシーンの悲しい美しさ、独歩が二葉亭四迷の翻訳にようやく言葉を見つけたときの清新なきらめき、北村透谷の切々とした告白、漱石の「こころ」を巡る推理と啄木の悲しい決別、ぼくの読んだ文庫本では660ページの大部だったけれど、どこも退屈することなく読み通してしまった。
 ずいぶん前に出た本なので、いまさらって感じなのだけれど、最近読んだ本の中でも出色の小説。

 この時代を描いたマンガに、以前アップしたのだけれど、「坊っちゃんの時代」というものがあり、それも秀逸。お勧め。これを先に読んでからだとよりイメージがつかみやすいかもしれない。
コメント
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