毎日が観光

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古密教展

2005年08月27日 16時33分21秒 | 観光
 たとえば村に病院を1つ作ることができるとしたら、どんな病院がいいだろう? 同じ予算でできうるならば、眼科を1つ作るのではなく、総合病院を1つ作った方がいい。
 まさに仏像伝来の日本がそうなのだ。大変な手間をかけて大陸から仏像を運んでくる。だったら、何かに御利益のあるものではなく、いろんなものに御利益があるものがいい。というわけで、古密教の時代には、様々な特色をすべて表現しようと、多面多臂の像が多い。この時代の造形には、インドの様式がそのまま現れているような奥眼で、はっきりとした二重の顔があったりしてなかなか興味深いものがある。
 そして東大寺二月堂のお水取りで有名な悔過(生きる上で犯した罪を本尊の前で告白し、懺悔すること)での本尊たちが見事。吉祥天悔過で用いられる薬師寺の吉祥天。すっげー、きれー、と改めて眼をまんまるに。また、法隆寺の吉祥天立像。装飾が美しく、残っている朱が当時の鮮やかさをしのばせてくれる。ころもの表現も見事。
 時代を追っていくと、忿怒相の明王が奈良時代にはないとか面白い発見がある。ホントに仏教フロンティア期だったと感心する。
 興味深い展示だった。
 そして常設も見たのだが、これもいい。ただ廻りながら、博物館で仏像を見ることへの違和感も感じた。なんというか、絶滅間近の野生動物を動物園で保護しているような感じか。手を合わせ頭をたれた当時の人々の心情は伝わらないが、ここで手厚く保護されることによってきちんと維持されることも大切なんだろうと思う。

 奈良国立博物館 ~9/4まで
コメント
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