栄光イレブン会

栄光学園11期卒業生の親睦・連絡・活動記録

ブログ開設:2011年8月23日

再生可能エネルギーの現状と、電力のベストミックス想定(その2)(Kojima_Shiro)

2015年04月03日 | 黒川・小島(四)・後藤

再生可能エネルギーの現状と、電力のベストミックス想定(その2)>

(5)各種発電の設備利用率比較

発電設備の利用率は既存発電では、大規模水力発電を除いて非常に高い。導入が順調に拡大している太陽光発電は、天候・日照時間に影響され12%と利用率は特に低くい。試算として、利用率70%の原子力発電一基100万kwを太陽光発電で賄った場合、これをカバーするには、約5.8倍の580万kwの設備を要することになる。一日24時間平均が12%なので、発電する昼間を約12時間とすると、2倍の24%となる。従って2.9倍の290万kwの設備で対応できることになる。

表-2は色々な種類の発電設備の利用率比較である。

既存発電

再生可能エネルギー発電

火力

原子力

水力

地熱

太陽光

風力

地熱

中小

水力

バイオマス木質

LNG

石炭

石油

80%

80%

50%

70%

20%

~30%

80%

12%

陸上20%

洋上30%

80%

60%

80%

    表―2 発電設備利用率比較    

出典:コスト等検証委員会及び水力は経済産業省.資源エネルギー庁電量調査統計(平成22年7月) 

(6)固定価格買い取り制度の概要

国は平成21年に余剰電力買取制度を施行、平成24年7月には固定価格買取制度を施行し、再生可能エネルギーの拡大を図っている。固定価格買取制度の内容は下記の通りである。

(a) 太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスについて、電気事業者に、国が定めた調達価格、調達期間での再生可能エネルギー電気の調達を義務付け。

(b)調達価格・調達期間は、調達価格等算定委員会の意見を尊重し、経済産業大臣が決定。

(c)調達価格は再生可能エネルギー電気の供給の効率的な実施に通常要する費用等を基盤に、再生可能エネルギー発電業者の適正な利潤を勘案し算定される。 また、集中的に再生可能エネルギー導入拡大を図るため、法律の施行から3年間は、特に利潤に配慮することとされている。

(d)電気利用者(家計や企業)にとって賦課金が過剰な負担にならないよう、①新規参入者向け買取価格の毎年見直し、②定期的な法律の施行状況の検討、平成33年3月31日までの抜本的な見直し、③電力多消費産業に対する賦課金の軽減処置(その補填として、平成25年度は191億円を処置)を法定している。

表―3は各種再生可能発電の平成25年度26年度の調達価格と調達期間である。                 

太陽光

 

価格(円)

調達

期間

(年)

地熱 

 

価格(円)

調達

期間

(年)

 

25年

26年

 

25年

26年

10kw以上非住宅用

36

32

20

1万5000kw以上

26

26

15

10kw未満住宅用

38

37

10

1万5千kw未満

40

40

15

10kw未満ダブル発電

31

30

10

 

 

 

 

  注)ダブル発電(自家発電併用)

   風力

 

 

 

中小水力

 

 

 

陸上20kw以上

22

22

20

1千kw~3万k未満

24

24(14)

20

陸上   陸上20kw未満

55

55

20

2百kw~1千kw未満

29

29(21)

20

洋上

 

36

20

2百kw未満

34

34(25)

20

 注)中小水力25年の( )内は既存水路活用の場合、( )なしは総て新設の設備。    

バイオマス

(25年を据置)

メタン発酵ガス

(バイオマス由来)

間伐材料等由来の

木質バイオマス

一般木質バイオマス、

農産物残さ

建設材料廃棄物

 

一般廃棄物その他

バイオマス

価格(円)

39

32

24

13

17

調達期間(年)

20

    表―3 各種発電平成26年度の買取価格  注)太字は平成26年3月26日公表の値、その他は据え置きの値

     出典 経済産業省資源エネルギー庁 平成26年度買取価格.期間(平成26年4月~27年3月)

4.各種エネルギー発電の特徴、課題

前述のようにいろいろな種類の再生可能エネルギー発電が導入拡大、開発されているが、主要な発電についてその特徴と課題について概要をあげる。

(1)太陽光発電

 (a)他の発電システムに比較して、コスト安、設置上の規制が少ない、設置場所が広範囲に存在するなどで順調に拡大している。平成24年度末の実績では729万kwに拡大、それまでの集計は住宅用が80%を占めている。しかし平成25年に運転開始した設備は、10月末時点で、住宅用が87万kw、非住宅用が312.3万kw。今後は遊休地の活用規制緩和等で、大型プラントの開発が加速すると予想される。大型プラント例では長崎県宇久島では43万kw(計画)、岡山県瀬戸内23万kw(開発中)等がある。近い将来、これ等を筆頭に大型プラントが次々に稼働を始め、太陽光発電の比率が高まることが想定できる。尚、現在稼働中の最大プラントは鹿児島県七つ島の7万kwである。

 (b)日本製太陽光パネルは住宅用、非住宅用も含めて国内では80%のシェアを占めている。住宅用は高効率、軽量で屋根の形状に合わせた設置、非住宅用では保守サービスの優位性などが挙げられている。

(C買取価格は,2000年(平成12年)に固定価格買取制度を開始したドイツでは2012年(平成24年)以降買取価格が家庭用電気料金を下回り始めている。日本でも、量産効果、技術開発などで年率1割の水準でシステム単価が下落しており、今後もこの  ペースでシステム単価の下落が続いた場合、5~6年程度で発電コストが家庭用電力料金を下回る事になる。加えて国は次世代の太陽発電モジュール(太陽光発電パネル)の技術開発支援で発電コストを現状では30円~40円/kwhと言われているが、2020年(平成32年)迄に14円/kwh、2030年(平成42年)以降に7円/kwhを目指すほか、モジュール以外の周辺機器のさらなるコストダウンを目指す。一方海外勢も日本市場に進出し、関連製品販売から発電所建設にも参入している。韓国、カナダ、中国、ノルウエ-などが進出している。1~4割安い価格を武器に拡大してきたが、円安で一部値上げに動き、日本メーカーもコストダウン強化で価格差は少なくなっている。この他海外ファンドの投資が多くなり、太陽光バブルの恐れもあると言われている。

 (d)固定価格買取制度導入後、多くの企業が稼働認定を受けたが、①稼働実施率が低い、②資金の問題、③土地確保の問題、④太陽光パネルの値下がりを待っている等の理由で未着手の企業も多い。

また認定書の売買も有り、経産省は2月に実情調査結果を報告し、認定取り消しの検討に

入っていた。稼働前認定件数4699件(1332万kw)の内、3月時点で条件を満たしてない672件(393万kw、総認定の23%)について取り消した。また条件の一部を満たしていない案件は8月31日までに聴聞して決定する。今後、認定条件は早期実行率向上に向けて厳しくなると考えられる。しかしながら、多くの認定済案件の開発が進んで居り、大きな伸び率が予想される。

(2)風力発電

 (a)大規模開発した場合そのコストは、既に火力、水力と比較し遜色ない水準とされている。風力の適地は、北海道、東北に集中して、2地域で全国適地の66%を占めている。出力が変動する太陽光発電や風力発電の電気を、各地域内の需給調整力を超えて受け入れるには、充分な調整電源を持つ他のエリアとの広域連系が必要。北海道-東北エリアについては、北海道-本州連系線追加増強を進めている。地域内では電力系統の強化や太陽光、風力発電の受電能力を高めるため大型蓄電池導入実証事業の実施などが進んでいる。

(b)拡大策として、風力発電適地には、国有林、保安林、農地等立地規制が多いが、これらの規制緩和や、環境アセスメントの迅速化があげられる。現状の3~4年程度要する環境アセスメントの手続き期間を半減する対策が進んでいる。

(c)今後期待されている洋上風力発電は適地が広範囲で、設備利用率が高い。

国が中心となり洋上風力発電の実証実験を始めている。洋上風力発電には水深50m未満の遠浅海岸に適した着床式(基礎を海底に固定して建設)及び水深50m以上に適した浮体式(沖合に浮かべた浮体上に設置)の2種類が有る。日本近海には水深50m以上の海洋が広がっており、今後浮体式が有望視されている。着床式は銚子沖・北九州沖で、浮体式は福島沖・長崎県沖などで実証実験が始まっている。福島沖では第一次は2000kwで検証し、続いて7000kw次世代機を設置、大型タンカー並の浮体構造、固定用のチエーン、ライザーケーブル、揺れても安全な浮体式変電設備技術など、オールジャパンで技術の総合力を問はれるプロジェクトが進んでいる。メンテナンス、漁船の航行安全、漁礁効果による漁獲量の向上など漁業と共生についても実証予定。新しい方式で課題は多いが、実用化されれば大容量で、高い設備利用率(30%)、海上では風力が強く適地が多いなどで大きな発電量が期待出来る。 

(3)地熱発電

(a)古くから実用化されている発電であるが、いろいろな規制で開発が進んでいない。固定価格買取制度が平成24年度導入され地熱も対象にとなった。火山国日本の地熱資源量は世界第3位で2,340万kwを保有しているともいわれているが、既存発電容量は約52万kwで新しい開発はしばらく実現していない。地熱資源の8割が国立公園内で一部開発の規制緩和がなされ、支援制度創設などで、北海道、東北、九州で開発が進捗している。   (b)地熱開発は10年程度と開発期間が長期にわたり、開発投資も約260億円と大きな初期コストがかかるので、国は調査の支援や出資、債務保証、技術開発など開発段階に応じた支援を実施。加えて、開発の為には地域の理解が必須。このことから、地熱熱水を活用したハウス栽培など、地熱開発に対する地元の理解を促進する為の事業を展開している。(地方公共団体との地熱資源活用連絡会議発足)

(c)先に述べたように設備利用率は80%で、国の支援、温泉地との共生対策などで開発が進めば、安定した大なベース電源になる。

(4)中小水力発電

(a)安定した設備利用率の高い電源で、分散電源として大きなポテンシャルを持っており、2011年(平成23年)環境省の(再生可能エネルギー導入ポテンシャル報告書)によると1,525万kwであり、多くの未開地点がある。しかし高コスト構造、水利権の調整などが課題となっている。

(b)水利用手続きの簡素、円滑化に向けた検討が進んでいる。国土交通省で既に水利用を得ている農業用水などを活用した小水力は、水使用を許可制から登録制度へ変更。

(c)規制改革実施計画(平成25年6月閣議決定)に則り、①慣行水利権が設定された水路における設置の簡素化、②豊水時における最大取水量の増量における水利手続きの簡素化、③非かんがい期間における水利権取得の簡素化など、水利権手続きの簡素化や円滑化の取組み推進が必要。

(5)バイオマス発電

石炭火力混焼や廃棄物発電等大規模発電から、チップボイラー、畜産糞尿ガス発電に至るまで、種類、規模は多岐にわたり設備利用率は高い。ただし規模メリットの追求と、原料安定供給の確保、既存マテリアル利用との競合の調整などが課題となる。原料供給が安定している製紙企業や商社などが大規模発電所を保有し、平成28年度電力完全自由化に向けて数万kwの発電所建設を表明している。設備の稼働率は80%で地熱と同じく大きな安定電源になる。

            (その3に続く)

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