栄光イレブン会

栄光学園11期卒業生の親睦・連絡・活動記録

ブログ開設:2011年8月23日

きよちゃんのエッセイ (116) ”アンカレッジ空港”(Okubo_Kiyokuni)

2020年01月28日 | 大久保(清)

アンカレッジ空港

いまではアンカレッジ経由の航路は貨物便以外では利用されていないらしいが、昔の欧州路線では必ず、この空港に着陸し給油を済ませてから飛行を続けていたものだ。冷戦が終結し、シベリア上空の飛行許可が降りると、ヨーロッパへの直行便が主流になり、あの懐かしい光景が見られなくなってしまったが、あれからもう何年経ったのだろうか。

 成田を出発し。機内での食事に舌ずつみを打ち、一服しているうちに機体のエンジン音に包まれて心地よい夜の眠りに入りこんでゆく。どれほど時間が経過したのか、突然、機内の照明がパッと明るくなると、周りで騒がしい話声が聞こえてくる。眠りの続きをするのもいいのだが、機内待機も味気ないなあと、しばし悩むのだが、結局、物珍しさの興味心が勝り、寝ぼけ眼で渋々ながらもドアに向かう乗客の列についてゆくと、どこか、あの昭和のレトロのにおいが漂う、天井からぶら下がる裸電球に照らされた狭い空間に押し込まれてゆく。そこはアンカレッジ空港の免税店。

人いきれでムンムンする上野のアメ屋横丁のような、どこかのアーケード商店街のような、とても懐かしい雰囲気にのみ込まれたまま、息を整えていると、強い照明を浴びてまぶし気に輝くガラスケースの向こうから売り子のおばさんたちの威勢のいい呼び声が飛んでくる、

彼女たちは日本語を操るエスキモーなのか、外国人の訛りも感じられるが、外見は日本人そのもの。昔馴染んだあの運び屋のおばさんたちを彷彿させる生き生きとした生活臭がただようとても親しみのある顔で、安いよー,買っていってよーと声をかけられると、思わず足が止まってしまう

海外出張のたびに娘の人形を買い求めるのが習慣となり始めたころで、ビーフジャーキーやメイプルシロップ、ウイスキーなどの定番を買い求める人たちの間を押し分けるようにして奥に進んでゆくと、可愛らしい真っ白な毛皮に包まれたお人形さんが並んでいた。近づいて顔を覗き込む、鼻が上に向いた、インデアンのような赤顔の女の子が口をつぼめて、きょとんとした顔つきでこちらを見ていた。店内の人形はこのタイプしか見当たらず、アラスカの北極圏のお土産と迷わず購入した。

袋に詰めて、機内でボストンバックにそのまま放り込み、ホテルであらためて赤顔のエスキモーの女の子を取り出すと、親指の爪ほどの,おなじ毛皮の小物入れがお母さんの毛皮のお腹からポロッと落ちてきた。つまんで確かめてみると、それは赤ちゃん人形。お母さんと赤ん坊の親子人形だったのだ。

アンカレッジのエスキモー人形を見るたびに、新幹線での旅で味わうことのできない、あの駅弁を窓から買い求めていた急行列車に乗っているような空の旅が、なぜかとても懐かしく思い出される。

 

 

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