つつましやかで、凛と美しい。
そんな佇まいの映画です。
「マイ・ブックショップ」73点★★★★
*********************************
1959年、イギリスの海辺の小さな町。
戦争で夫を亡くしたフローレンス(エミリー・モーティマー)は
夫の夢でもあった書店を、この町に開くことに決めた。
古びた建物を買い取り、開店準備を進めるフローレンス。
だが、思わぬ横やりが入る。
町の有力者・ガマート夫人(パトリシア・クラークソン)に
「あの建物は、町の芸術センターとして使おうとしていたの。
書店はいいけど、あの建物は諦めてほしい」
と言われたのだ。
町の人々の冷たい視線のなか
それでも書店をオープンさせようと奮闘するフローレンス。
そんな彼女を
町で唯一の読書家で、世捨て人の老紳士(ビル・ナイ)が
そっと見守っていた――。
*********************************
サラ・ポリー主演の
「死ぬまでにしたい10のこと」(03年)「あなたになら言える秘密のこと」(05年)、
そして
最近では「しあわせへのまわり道」(13年)などで知られる
イザベル・コイシェ監督が
英国ブッカー賞受賞作家ペネロピ・フィッツジェラルドの原作を映画化。
1959年、戦争で夫を失った主人公が
保守的なイギリスの海辺の町で、書店を開こうとする話で
地味、に思えるかもしれませんが
テーマとこの宣伝ビジュアルに、掴まれる人多し!なのです。
そして内容も違わず、実につつましやかで
品と美のある良作でした。
まず素晴らしいのは
ヒロイン役のエミリー・モーティマー。
控えめで、しかし強い意志を持つ女性を「ハシッ!」と掴んだ音がするかのように
見事に演じています。
衣装にも細やかな人物造形が現れていて、
「ここ一番」のとき、あえて着飾らず
ブローチをひとつだけつける、
そのセンスがたまらない!
さらに、小さな町で四面楚歌になる彼女の
力強い後援者となる読書好きの世捨て人、ビル・ナイがいいんですよねえ!
孤独な彼とヒロインは、本を通じて心を通わせ、
惹かれつつ、しかし、触れない。
そのギリギリの寸止めの品性が、まあ、ジリジリとたまりません!w
書店を手伝うことになる町の少女とのやりとりもほほえましく、
それが、この物語のさらに先の「希望」となっていく点も
とてもよかった。
なにより
街からリアルに書店が消えているいま、
この映画を描いた意味は、見ると感じられると思う。
おなじみ「AERA」にて
イザベル・コイシェ監督にインタビューさせていただきました。
いま、この題材を描いた理由、そして
ワシも大好きな「あなたになら言える秘密のこと」を描いた監督の社会への目線についても
じっくり伺ってます。
掲載は公開後、3/18発売号になりそうですが
AERAdot.にも転載されると思います。
ぜひ映画と併せて、コイシェ・ワールドを味わってみてください!
★3/9(土)からシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開。