ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ペーパーボーイ 真夏の引力

2013-07-22 23:45:19 | は行

暑い!熱いですねえ毎日。
いまこそ・・・この映画でしょ!(笑)


「ペーパーボーイ 真夏の引力」76点★★★★


*************************

1969年、うだるように蒸し暑い夏。

フロリダで育った青年ジャック(ザック・エフロン)は
人生のレールをはずれ
父が営む地元の小さな新聞社で
新聞配達(=ペーパーボーイ)をしている。

そんなある日、
大手新聞社に勤める兄ウォード(マシュー・マコノヒー)が
ある事件を追って帰郷する。

その事件とは
人種差別主義者の保安官がメッタ刺しにされたもの。

容疑者ヒラリー(ジョン・キューザック)がすでに逮捕されていたが、
ウォードは彼のえん罪を疑っていたのだ。

そしてジャックは
兄の連れてきたヒラリーの恋人(ニコール・キッドマン)
瞬間に悩殺されてしまい――?!


*************************


「プレシャス」(09年)で超注目を浴びた
リー・ダニエルズ監督の新作。

いや~期待にちゃんと応えた
すごい熱量を感じる作品でした。

宣伝によくある
「熱に浮かされた――!」(potuo紙)みたいな感じすよ(笑)

ファーストシーンから前置きなしで
単刀直入に切り込み、

蒸した空気の匂いまで
伝わってきそうな絵作りもすごい。

ピアノ曲の単調な繰り返しも
ミステリ要素に最大な効果をもらしている。

実際、ミステリはそれほどでもないんですけど
とにかく
映画自体の熱っぽさが特筆すべき点。

で、役者が熱いのがまたよくて。

はすっぱなビッチ役のニコール・キッドマン
オトナな彼女にメロメロになるザック・エフロン

そしてまたもいけすかないけど(笑)
しかしそれだけではない
マシュー・マコノヒー!

メイドのアニタ役、メイシー・グレイなんて
アカデミー賞助演女優賞ノミネートは間違いなくないか?!
と思いましたけどね。

原作は1995年に大ベストセラーになった小説だそう。

なーんか古臭さいんだけど
でも新しい。

そんな何かを見たい人にオススメす。

★7/27(土)から全国で公開。

「ペーパーボーイ 真夏の引力」公式サイト
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

31年目の夫婦げんか

2013-07-21 16:47:13 | さ行

試写室、大爆笑でした。
おすすめ!(笑)


「31年目の夫婦げんか」80点★★★★


***********************

結婚31年目の夫婦
アーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)とケイ(メリル・ストリープ)。

子どもたちもみな巣立ち、
二人だけの暮らしは一見平穏だが、ケイは悩みを抱えていた。

寝室も別にして久しいある夜
ケイが覚悟を決めて夫の寝室を訪ねると
夫は「ギョッ」とした顔。
で、やんわり、いやキッパリ拒絶。

さすがにショックを受けたケイは
カップル専門のカウンセラーである
医師バーナード(スティーヴ・カレル)を訪ねたいと夫を誘うが――?!

***********************


「プラダを着た悪魔」監督の最新作。

熟年セックスレス夫婦がセラピーに通う話です。

いくらでもドタバタに出来そうな題材を
そうはせず、
繊細に、しかし笑わせてくれるのが素晴らしい。


「問題なんてない!」と直視しようとしないガンコな夫と
問題に向き合おうとする妻。

夫婦のデリケートな問題を
役者がデリケートな演技で支え、

余白をたっぷり持ち、「間」だけでおかしみを出し
痛いところをつき、
品を失わず、ジンとさせる。

ヒューマンドラマのなかでも、かなり高度な映画だと思います。


それにキャストが絶妙。
おとなしい(!)メリル・ストリープ、
普通のオヤジすぎるトミー・リー・ジョーンズ、
そして穏やか光線出しまくりのセラピスト役、スティーヴ・カレル(!)

誰もが一瞬「え?」な役を、丁寧に自然にこなしてる。
これぞ役者を「観る」醍醐味ですねえ。


特に
セラピーに通うのがイヤでたまらない
トミー・リー・ジョーンズが
「円満な夫婦に問題を作って儲けてるんだ」と
数々の悪態(笑)を繰り出すシーンがおかしくて。

ロマンチックなことのまるでなくなった家庭を
「労働者二人が生活してるみたい」と描写する
メリル・ストリープにも苦笑いが込み上げました。

カップルで一緒に観るのは
あまりにズバリで恥ずかしいかもしれないので

別々に観て、「あるある」ネタを持ち帰り
共有するのがいいかもしれない(笑)


★7/26(金)からTOHOシネマズ・シャンテ、新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「31年目の夫婦げんか」公式サイト
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最後のマイ・ウェイ

2013-07-20 17:27:36 | さ行

本人の映像みたら、
ホントにそっくりでしたわ。


「最後のマイ・ウェイ」69点★★★☆


************************

1939年、エジプトで
裕福なフランス人の父とイタリア人の母のあいだに生まれた
クロード・フランソワ(ジェレミー・レニエ)。

しかし父の失業で
一家はモナコに移住する。

17歳になった彼は、苦しい家庭を支えようと
ある楽団のドラマーに採用され、
ヴォーカルとしても頭角を現す。

ミュージシャンへの夢を描くようになったクロードだが
しかし、厳格な父はそれを許さず――?!

************************


フランク・シナトラの名曲「マイ・ウェイ」を作り、
1960年代~1970年代のフランスで超人気だった
スーパースターの人生を描く話。

149分あります。

フランス発の長い伝記モノって
正直、おもしろくないのが多くて(「ジャック・メスリーヌ」とか「カルロス」とかね~)
期待度、ちょっと低かったんですが
これは退屈はせず、ウトウトともしなかった。

スターの誕生から生い立ち、
亡くなるまでをすらすらと描き
「こういう人がいたんだ」というフムフム度は高い。

日本人で彼を知っている人はほとんどいないそうですから、
どんな年代でも「へえええ」という驚きがあると思います。

ジェレミー・レナーが
本当にがんばっているのも印象的。

まあ17歳を演じるのはさすがに無理があったけど(失笑)


クロード・フランソワという人は
潔癖症で神経質で、すべてをコントロールせずにはいられず
嫉妬深い人だったようで
(女に対してはマジでストーカー!失笑
そんなスターの人物像はよく現れていると思う。

ただ実際、ミュージシャンが自己チューなんてのはありがちなことなんで
もっと
「なぜそこまでスターになりたかったのか?」
「彼は音楽の何を、そこまで愛していたのか?」が
ディープに探られるとよかったなと思いました。

本人のルックスといい
ちょっとバタくさいのもフランス味かな(笑)


★7/20(土)からBunkamuraル・シネマで公開。ほか全国順次公開。

「最後のマイ・ウェイ」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クロワッサンで朝食を

2013-07-17 20:17:24 | か行

タイトルはなんか
中山美穂さんが出てきそうなステキ話ふうですが

ぜんっぜん違います(笑)


「クロワッサンで朝食を」73点★★★★


************************

雪深いエストニアの町に暮らす
50代のアンヌ(ライネ・マギ)は

夫とも離婚し、子どもたちも巣立ち、
2年間介護していた母親を看取ったばかり。

そんなアンヌに
「パリで家政婦の仕事がある」という電話が入る。

憧れのパリに降り立ったアンヌは
雇い主の老婦人フリーダ(ジャンヌ・モロー)と対面するが

彼女は一筋縄ではいかない気むずかし屋で――?!


************************


エストニアからパリに家政婦にやってきた中年女性と
気むずかし屋の老婦人の話。

どんより暗いエストニアの風景にはじまり、
パリの風景も華やかさとは違う“にび色”。

そう、本作の舞台となるのは
人生のたそがれ色のパリなのだ。

全てがそんな色調で、登場人物も陰気で、
ジャンヌ・モローは本当に辛辣な皮肉屋で
「クスッ」ともさせない展開で

最初は少々まいるんですが(笑)
次第に何も押しつけない、簡素で素朴な描写が心地よくなる。

摩擦も含めて、人との出会いと対峙が
自分の何かを変えるのだなあ、と話に共感できました。


それに家政婦アンヌを演じる
エストニア出身の女優ライネ・マギがすごくいいんですわ。
(余談だけど化粧っ気なさとそっけない感じが、スタイリストの堀越さんに似てるんだ。笑)


監督は1968年、エストニア生まれのイルマル・ラーグ。
自身のお母さんの経験がもとになってるそうですが、

85歳(!)のジャンヌ・モローの
凜とした歳の取り方を表現し


同時に
鏡の前でシワをのばし、ため息をつく
その小さな背中を遠くから写したりと

40代監督ならぬ、センスと深みを感じます。


そしてジャンヌ・モローのあのラストの表情!
観た価値あったなあと思えました。

それに
やっぱり“かっけー”歳の取り方です、ハイ。


映画の印象が「あなたになら言える秘密のこと」監督の
距離感や、ブルーな色調に似ているのも好みだったなー。


★7/20(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「クロワッサンで朝食を」公式サイト
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SHORT PEACE

2013-07-16 23:35:22 | さ行

非ジブリなジャパニーズアニメーションにも
希望が持てますねえ。


****************************


「SHORT PEACE」71点★★★★


****************************


大友克洋氏ら4人の監督による、4編の短編アニメーションのオムニバス。

見ごたえありました。
トータル84分なのが惜しいような。

3本は江戸や昔話の時代を描く
ザ・ニッポンな作品で


「九十九」(森田修平監督)は武骨な男の“特技”に意外性があり
からくりのような仕掛けも楽しい1本。
ベースとなるテーマは「千と千尋の~」に似てますが。

「火要鎮」(大友克洋監督)は
屏風絵の遠近法を使った見事な作画で、
浄瑠璃のような世界。

これは、アートの粋ですハイ。


そして「ガンボ」(安藤裕章監督)。
昔話の鬼の恐怖を生々しく描いていて
白熊の闘いに胸が苦しくなるけど、実に心に残る。

大友克洋氏原作の「武器よさらば」(カトキハジメ監督)は
崩壊後の東京をあっかるく描き
懐かしきサイバーパンクの時代を思い出しました。

原作が描かれたのは30年前ですから!
「オブリビオン」の無人型偵察ポットはこれが元ネタだろう!て(笑)

ただ
残念なのはオープニング(森本晃司監督)。
作品がどうのではなく、
1話めと似た“仕掛け”があり、
せっかくの本編の驚きへの効果が薄れる感が。

でも、これを観ると
ニッポンのアニメーションの未来は明るい!と思えて
チョットウレシイデス、ハイ。


★7/20(土)から公開。

「SHORT PEACE」公式サイト
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする