ポルトガル映画界、どんだけ奥が深いんだ・・・。
「熱波」76点★★★★
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現代のポルトガル。
中年女性ピラール(テレーザ・マドルーガ)は、
カトリックの社会活動に協力したりする
善き人物。
彼女は隣に住む
孤独でエキセントリックな老女アウロラ(ラウラ・ソヴェラル)に
なにかと振り回されている。
ある日、病に倒れたアウロラは
ピラールに「会いたい男性がいる」とピラールに頼む。
老女の妄想か、世迷い言かと思いきや、
男性は実在していた――。
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これはすごい。
オープニングから、やられました。
めちゃくちゃシュールで、エキセントリックで
でも、しっとり深くて美しい・・・。
監督は
1972年ポルトガル・リスボン生まれの
ミゲル・ゴメス。うわ、同世代だよ・・・。
どうりで、なんかシンパシーというか
35ミリと16ミリフィルムを使ったりするところや
モノクロームの風合いとか
少し前の、シネヴィヴァン的なアートが漂うというか。
まあ世代感覚は偶然だと思うんですけど、
その系譜が好きな人は絶対グッです。
第一部は現代のリスボン。
クリスマスの
「人がみな、我より幸せそうに見える日よ」(ぽつお)なムードのなか、
善人そうな中年女性ピラールの日々が映し出される。
善き人物ではあるが、
実は彼女の周囲の物事はあまりうまくまわっておらず、
どうにも寂しく、空虚な感じが漂う。
そんな彼女が気にかける、隣人の孤独な老女アウロラ。
プライド高く、女王様全としているアウロラの話すことを
ピラールは
「はいはい」と流していたが、
続く第二部で、
老女のうわ言のような語りが
すべて本当だったとわかるんですねえ。
この転換がお見事!
第一部のどんよりとした寂しさと焦燥、
第二部の熱っぽい情景と、ロマンスの対比の妙。
窓にあたる雨だれ、そこに映るシルエット・・・と
絵画のように心に刻まれる映像美。
う~ん、試していただきたい一作ですハイ。
★7/13(土)からシアター・イメージフォーラムで公開。
「熱波」公式サイト