ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

クロワッサンで朝食を

2013-07-17 20:17:24 | か行

タイトルはなんか
中山美穂さんが出てきそうなステキ話ふうですが

ぜんっぜん違います(笑)


「クロワッサンで朝食を」73点★★★★


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雪深いエストニアの町に暮らす
50代のアンヌ(ライネ・マギ)は

夫とも離婚し、子どもたちも巣立ち、
2年間介護していた母親を看取ったばかり。

そんなアンヌに
「パリで家政婦の仕事がある」という電話が入る。

憧れのパリに降り立ったアンヌは
雇い主の老婦人フリーダ(ジャンヌ・モロー)と対面するが

彼女は一筋縄ではいかない気むずかし屋で――?!


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エストニアからパリに家政婦にやってきた中年女性と
気むずかし屋の老婦人の話。

どんより暗いエストニアの風景にはじまり、
パリの風景も華やかさとは違う“にび色”。

そう、本作の舞台となるのは
人生のたそがれ色のパリなのだ。

全てがそんな色調で、登場人物も陰気で、
ジャンヌ・モローは本当に辛辣な皮肉屋で
「クスッ」ともさせない展開で

最初は少々まいるんですが(笑)
次第に何も押しつけない、簡素で素朴な描写が心地よくなる。

摩擦も含めて、人との出会いと対峙が
自分の何かを変えるのだなあ、と話に共感できました。


それに家政婦アンヌを演じる
エストニア出身の女優ライネ・マギがすごくいいんですわ。
(余談だけど化粧っ気なさとそっけない感じが、スタイリストの堀越さんに似てるんだ。笑)


監督は1968年、エストニア生まれのイルマル・ラーグ。
自身のお母さんの経験がもとになってるそうですが、

85歳(!)のジャンヌ・モローの
凜とした歳の取り方を表現し


同時に
鏡の前でシワをのばし、ため息をつく
その小さな背中を遠くから写したりと

40代監督ならぬ、センスと深みを感じます。


そしてジャンヌ・モローのあのラストの表情!
観た価値あったなあと思えました。

それに
やっぱり“かっけー”歳の取り方です、ハイ。


映画の印象が「あなたになら言える秘密のこと」監督の
距離感や、ブルーな色調に似ているのも好みだったなー。


★7/20(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「クロワッサンで朝食を」公式サイト
コメント (2)
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