ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

朝食、昼食、そして夕食

2013-04-23 19:48:24 | た行

はい、食いしんぼうさん
いらっしゃい。


「朝食、昼食、そして夕食」70点★★★★


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スペイン北西部にある
サンティアゴ・デ・コンポステラの街。

朝の街角で
ストリートミュージシャン(ルイス・トサル)が
音楽を奏で始める。

続いて
カフェで朝食を取る人、
夫と息子に朝食の準備をする人・・・

さまざまな朝の風景が描かれ、
やがて彼らの物語は、少しずつつながっていく――。


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タイトルどおり、
朝、昼、夜の食卓を中心に、10組以上の人々の営みが交互に描かれ、
少しずつ、つながっていく
スペイン=アルゼンチン映画。


出てくる人が多すぎるので
編集が細切れ過ぎるきらいもありますが

107分という長さはまずまずだし、

料理とそれを囲む人という
好きなテーマをセンスよく料理していて楽しめました。


まずは朝食からスタート。

夜遊び帰り(らしき)中年おやじたちがカフェにたむろしたり、
自宅で彼女ために、豪勢な朝ごはんを用意する男性が出てきたり
(トマトにモツァレラチーズに生ハム……とこれがえらく美味しそう!)

さまざまな朝食風景を
「えーと、今朝何か食べたっけ?」と自分に照らしつつ、
ニヤニヤしながら見る。

そこから各人の昼食へと
うまくつながっていく。

さあ昼からワインは当然(笑)
昼食がもっともボリューミーで、
夜はどうなることかと思いきや・・・?!

と、まあ
なかなか楽しいんです、ハイ。

監督はコンポステラ在住のホルヘ・コイラ(42歳)。

これが長編2作目で、
人物設定と場面状況だけ指定し
ほかはすべて俳優たちにお任せの「即興」なんだそう。

それを細かくパズルのように
編集したのかあ。なるほどね。


★4/27(土)から新宿K’sシネマほか全国順次公開。

「朝食、昼食、そして夕食」公式サイト
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図書館戦争

2013-04-21 14:12:12 | た行

銃撃戦でコミカル
ラブストーリーで、けっこう盛りだくさん。


「図書館戦争」60点★★★


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1988年、
あらゆるメディアを取り締まる法律が施行され、
自由に好きな本を読めなくなった日本。

そんな検閲に対抗すべく
図書館は「図書隊」を組織し、
ときには武力で本を取り上げる政府と戦っていた。

そして法律施行から30年後。
図書隊に新人の笠原(榮倉奈々)が入隊する。

だが、担当教官の堂上(どうじょう、岡田准一)は
厳しい鬼教官で――?!

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有害図書が武力で徹底的に排除されるようになった世界で
本と自由を守るために
「図書隊」が結成された・・・というフィクション設定。

荒唐無稽な設定かつ
「GANTZ」監督だけあって
けっこうハードなドンパチありの内容なのに

榮倉奈々のおとぼけキャラと
岡田准一の鬼教官の凸凹コンビによって

コミカルな軽妙さと
さらにラブストーリー要素まで入ってくる。

目まぐるしくも、努力のみえる作品でした。

いきなり岡田をチビ呼ばわりし(苦笑)
長い手足でうまく大きい芝居をする
榮倉がよい。

「なんで本で死者が出るほどの戦いが起こるの?」とか
「自衛隊推奨?」とか
世界に入れないと辛いものがあるけど

まあ、
盛りだくさんということで(笑)

有川作品はこのあと
「県庁おもてなし課」(5/11公開)もあるでよ。


★4/27(土)から公開。

「図書館戦争」公式サイト
コメント (2)
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ジャッキー・コーガン

2013-04-20 20:46:23 | さ行

“凄腕の殺し屋”を
ブラッド・ピットが演じてます。

「ジャッキー・コーガン」31点★★


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2008年、米ニューオリンズ。

刑務所から出所したばかりの
若者フランキー(スクート・マクネイリー)は
ある賭場で強盗をする。

賭場を運営する組織は
ちょいややこしい事情から、犯人捜しに手を焼いていた。

そこで“ドライバー”(リチャード・ジェンキンス)を介して
凄腕の殺し屋ジャッキー・コーガン(ブラッド・ピット)に連絡を取り、
事態の収拾を依頼するが――。


**********************

「ジェシー・ジェームズの暗殺」(07年)の監督作品。

ハードボイルドで、かつ「プッ」とさせるユーモアあり
オフビート感ある
クライムストーリー。

ブラピもカッコイイっちゃカッコイイんですが
でもね~すいません
つまんなかった(苦笑)。


最初は強盗をする
ダメダメ若造二人のチンタラ話が延々続き

ブラピが登場するも
彼と相手のチンタラ話がまたも延々続き(笑)

すべてが単調でダレ~
感じを描いているので
まあ、ハマればそういうものなのでしょう。


バックに流れるラジオやテレビニュースから、
オバマ就任前夜が舞台とわかり、
閉塞した現代をアナウンスしてるのはわかる。

でもその
病んだ状況を言うためだけの97分は辛すぎるぜ。

ま、それはともかく
レイ・リオッタって
もう出てくるだけで、何か「持ってく」感じあるよねえ・・・(笑)


★4/26(金)から全国で公開。

「ジャッキー・コーガン」公式サイト
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セデック・バレ 第一部:太陽旗 第二部:虹の橋

2013-04-19 16:32:47 | さ行

二部構成で全4時間36分!

思ったより時間を感じなかった、というのはウソじゃないけど
それでもやっぱり長かった……。


「セデック・バレ」56点★★★


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1895年、台湾。

山岳地帯に住むセデック族は
自然と調和して生きる狩猟民族。

なかでも青年モーナ・ルダオ(ダーチン)は
勇敢さとカリスマ性で評判だった。

しかし、日清戦争に勝った日本軍が
セデック族を支配しにやってくる。

モーナたちは対抗するが、日本軍の圧倒的な軍事力を前に
屈してしまう。

そして35年後。

日本統治下に置かれ
日本人として生きるように教育されてきた
モーナ(リン・チンタイ)らだったが――。

*****************************

1930年、日本統治下の台湾で起きた
原住民による武装蜂起「霧社(むしゃ)事件」を
「海角七号/君想う、国境の南」の監督が映画化したもの。

無知なことに事件自体を知らなかったので
まず話に驚き、
日本と台湾の関係について改めて考えさせられました。

モーナ・ルダオほか
登場人物たちはみな実在の人物で

一部がセデック族による武装蜂起が起きるまでを、
二部はその後、日本軍による反撃と戦いを描いてる。


映画としては
一部62点、二部50点、という感じかな。

台湾山奥のしっとりした豊かな自然など
映像が美しく

なにより
蜂起を率いるリーダー、モーナ・ルダオの
壮年時代を演じる俳優リン・チンタイのカリスマ性がそりゃすごい。
(本業は牧師だそうで、これが映画初出演とは信じられない!

伝統音楽のような悲しげな旋律にのせた
悲劇の数々は
実話だけに重みもあり、印象に残るシーンも多いんです。


なんですが、それでもやはり
歴史ものを長尺で描くのは芸がなさすぎ。

そんなに長い期間の話でもないし
(35年の間はそもそも飛ばしてある)
展開も早めなのに、
とにかくアクションシーンが多いんでしょうね。


やたら闘うだけでなく
もっと感情要素を取り入れて、
ドラマにできなかったものかなあと。

それに出てくる人出てくる人、
みんなTOKIOの長瀬氏か松岡氏か、佐藤浩市顔で
まったく区別がつかないのも非常に困りました(苦笑)


この事件とストーリーには、解説が必要かもしれない。
これこそ『週刊朝日』「ツウの一見」の本領発揮!というわけで
来週4/23発売号で
「霧社事件」研究40年(!)という
春山明哲先生にお話を伺っています。

文字数全然足りませんが(失笑)
読むと「なるほど」なことも多いかと思います。

さらに映画に合わせて春山先生の
ビジュアルコンテンツ「台湾・霧社事件への招待」(ピコハウス)
発売されるそうなのでご参考に


★4/20(土)全国で公開。

「セデック・バレ」公式サイト
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ヒステリア

2013-04-18 20:59:54 | は行

色っぽい題材のイメージとは違って
けっこうマジメな“女について”の話。
意外で、割といい。


「ヒステリア」68点★★★☆


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19世紀のロンドン。

医師グランビル(ヒュー・ダンシー)は
開業医ダリンプル(ジョナサン・プライス)のもとで働きはじめる。

ダリンプルの専門は女性特有の病とされていた「ヒステリー」=(ヒステリア)で
彼の施す“マッサージ治療”が評判を呼び
医院には女性が大勢訪れていた。

しかしダリンプルの娘で
女性の自立を目指して活動するシャーロット(マギー・ギレンホール)は

そのマッサージ治療に否定的で――?!

***********************

1880年、イギリスでバイブ(電動バイブレーター)を発明した
実在の医師をモデルにした話。

でもバイブ話がメインというよりは、
「女性解放」が大きなテーマであり、
かつ、それを叫ぶ革新的な女性(マギー・ギレンホール)と、
医師の回りくど~いラブストーリーでもある。

このテーマから想像する印象とは違い、
極めて謹み深く、上品なタッチで綴られて
クスクス笑いもあって退屈させないんですが

ただ
女性の権利を叫ぶ方向でもなく、
かといってラブストーリー全開方向に行くわけでもないので、
全体に平たい印象は否めない。

お金持ちの風変わりな発明家(ルパート・エヴェレット)とか
もっと活躍してもよかったし。

ただ
マギー・ギレンホールは「爆竹のような」活動家の女性を
ギスギスすることなくチャーミングに演じてて
いい感じでした。


★4/20(土)から全国で公開。

「ヒステリア」公式サイト
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