ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ハッシュパピー バスタブ島の少女

2013-04-15 20:51:06 | は行

もしかしたら想像するものと
かなーり違う・・・かもしれません。


「ハッシュパピー バスタブ島の少女」65点★★★☆


***************************

アメリカ、南ルイジアナ。

ここに地盤沈下で失われつつある
“バスタブ島”がある。

世界から忘れ去られたようなこの場所で
6歳のハッシュパピー(クヮヴェンジャネ・ウォレス)は
多くの動物たちと、父親(ドワイト・ヘンリー)と暮らしていた。

しかし、最近父親は
あまり具合がよくないらしい。

そんななか、大嵐が
小さなバスタブ島を襲い――?!

***************************

サンダンス映画祭でグランプリ受賞
カンヌ国際映画祭でカメラドール賞を受賞。

さらに
本年度アカデミー賞主要4部門ノミネートされた
29歳新人監督による作品。

あのオバマ大統領が「いいね!」と
広めたという話も、すんごい追い風になってます。


で、その中身はというと
非常に暗示的で、示唆に富んでいる絵本・・・という感じ。

「少女」「島」のワードから想像するものとは
えらく違うかもしれません。


まず舞台の“バスタブ島”は
ドリーミーなパラダイス・アイランドではなく
まあざっくり、ゴミ屋敷(失笑)

対岸の工場からの廃液に汚れ、
地盤沈下で、いまにも海面に沈みそうな
その場所に暮らす少女ハッシュパピー。


彼女と父親の関係は常に危なっかしげだが、
その破因は、虐待とかではない。

父親が心臓病を患っており、
ゆえに幼いハッシュパピーは、あらゆる生き物の心臓の鼓動を聴くくせがある。

やがて
破壊された自然は“災害”という形で、人間に牙を剥くんですが、
その予兆をハッシュパピーは
真っ黒い毛を持つ、獰猛で巨大な猪のような
架空の獣として見ている。

獣と対峙し、恐怖と闘い、己れの弱さを克服しようとする
ハッシュパピーの姿は

単なる“少女の成長物語”ではなく
我々すべてが直面している
この世界の行く末なのだろうな、と思います。

そして最後の審判のような大洪水あと、
ハッシュパピーはどうなるのか・・・。


破壊された自然、傲慢な人間たち、堕落した文明社会……
すべてが現代社会への警鐘のメタファであり
突きつけられるものは重いのです。

アカデミー賞主演女優賞に史上最年少ノミネートされた
ハッシュパピー役、クヮヴェンジャネ・ウォレスの
まっすぐ前を向いた、その視線に
大人たちは、いろんなものを託しているのかな・・・と思ったりしました。


★4/20(土)から全国で公開。

「ハッシュパピー バスタブ島の少女」公式サイト
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする