ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

HICK ルリ13歳の旅

2012-11-24 15:21:37 | は行

HICKとは
“ウブな人、田舎者、カモ”という意味だそうです。
あられもない言いよう・・・(笑)

「HICK ルリ13歳の旅」43点★★

************************

アメリカ中西部の田舎町。

13歳になったばかりのルリ(クロエ・グレース・モレッツ)は
ともに酒浸りの
どうしようもない両親にうんざりし

家を出て、憧れのラスベガスに行くことにする。

ヒッチハイクをしたルリは
青年エディ(エディ・レッドメイン)の車に乗せてもらうが
この先、様々な試練が待っていて――?!

************************

クロエ・グレース・モレッツの
かわいさ全開!

でも、それだけ!(笑)

なので、かなり残念でした。

ルリは
映画好きで、空想好きな女の子。

彼女が映画スターになりきって、
鏡の前でセリフを言ってポーズを取るシーンとか、超カワイイし

映像の色合いもオシャレで、
衣装も小物も可愛らしい。

音楽もいい。

と、舞台装置は整えたけど、
圧倒的に貧素な脚本にうんざり。


ルリが行く先々で出会う人は
サイコ野郎だったりヤンキーの姉御みたいだったり、
定番におかしな人ばっかりだし、

そのなかで世間知らずの13歳の女の子が
「アンタ、こうなるよ」と親に脅かされるような
目にまんまと遭ってしまうという
その身も蓋もなさよ(苦笑)

原作と脚本を担当したアンドレア・ポーテスという女性の
半自伝的な話らしいですが

ということはやっぱり
若い家出娘への教訓・・・なんですかね。


★11/24(土)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。

「HICK ルリ13歳の旅」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

阿賀に生きる

2012-11-23 21:57:24 | あ行

20年前に日本で初めて
劇場公開されたドキュメンタリー。

いま、この映画を見ることには
大きな意味があります。

「阿賀に生きる」72点★★★★


「新潟水俣病」の現場となった
阿賀川周辺に暮らす人々の話。

しかし、難しく考えないでほしいんです。

“病気”をクローズアップするのではなく、
あくまでもそこに生きる「人」とその暮らしを静かに描いているので
とにかく田舎の映像も美しいし
ホッと心に染みるものがあります。


すごいのは
監督始め7人のスタッフが3年間、
集落の民家を借りて暮らしながら撮影をしたということ。

地元コミュニティに溶け込み
田んぼを手伝って撮影がそっちのけになることもあったというから
いいですねえ(笑)

いま、そんな撮りかた不可能じゃない?


そんなふうにして撮られた本作には
撮る側と撮られる側の自然な絆が、確かに感じられるんですねえ。


おおらかで遠慮のない老夫婦のやりとりに笑い
酒の入った仲間うちのやりとりに笑う。


夫婦という最小にして最強のユニットの強さと、
そんな個々がしっかりとつながった“共同体”の手応えを感じる。

そのつながりを以て
土地の恵みを得て、そこで生きる彼らには
真の豊かさと、強さを感じる。

それが現代に
20年前のこの作品を観る意味だと感じましたが、

さらに考えさせられるお話がありました。

発売中の『週刊朝日』11/30号の「ツウの一見」で
日本のドキュメンタリー映画研究家である
阿部マーク・ノーネスさんにお話を伺ったんです。

ノーネスさんは本作の英語字幕を担当していて
佐藤真監督らをよくご存じで、
「彼らはホントに貧乏で、山形国際ドキュメンタリー映画祭に来たときも、
宿泊場所がなくて、橋の下で寝てたんだ」と
衝撃の話を教えてくれました(笑)

さらにノーネスさんは
昨年の山形国際で震災を扱った多くの作品が
「現地にとりあえず行って、知らない人に質問して、帰ってきて作る」
悪く言えば“撮り逃げ”的だったと憂いてました。

3年間も現地で暮らしながら撮る、というような手法は
「阿賀~」で終わってしまったと。
でも、いまでも不可能じゃないと。

そういう手法でこそ、訴えられるものがあると
現代にわからせるためにも
この映画には意味があるんだとノーネスさんはおっしゃっていました。

すごくそのとおりだと思いましたので
長々と書いてしまった次第。

観るべきドキュメンタリーです。


★11/24(土)からユーロスペースで公開。

「阿賀に生きる」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エヴァンゲリヲン新劇場版:Q

2012-11-21 23:44:26 | あ行

さーあ、
またさっぱりわかんなくなったぞ!(笑)


「エヴァンゲリヲン新劇場版:Q」68点★★★☆

***************************

エヴァ初号機のパイロットだった
14歳の碇シンジ(声・緒方恵美)。

あるとき覚醒すると、彼は拘束されていた。

そしてシンジは知る。

いまは、かつての闘いから
14年後の世界であることを――。

なぜ、自分は変わっていないのか?
そして彼の目の前で
アスカ(声・宮村優子)が出撃していく。

「僕は何をすればいいんですか?!」と叫ぶシンジに
ミサト(声・三石琴乃)は冷たく言い放つ。

「あなたは、もう何もしないで」――。

一体、どういう意味なのか――?!

***************************


1995年にスタートした
エヴァンゲリオン。

ワシはテレビシリーズのリアルタイム世代で
(仕事柄、14歳と一緒になって夢中になったんだよねー)

その後の劇場版でなんとなく“補完”されてた人間(笑)

で、時は流れて
「序」(07年)、「破」(09年)を観て、
映像もレベルアップしたし、
ここまではなんとなく「復習」的要素も多かったんで
ついていけてましたが

「Q」はいよいよ、つうかようやく
新たな物語がスタート!となったんだな、と
なんか感慨もあり
嬉しかったんですけど

さ~あ肝心の中身がよくわからない!(笑)

テレビシリーズ当時の情熱を持って
この謎を解明していけるか、不安ですわー。


とりあえずパンフ買ってみたけど
声優さんたちのそれぞれのインタビューが載っていて

まあみなさん一様に
わけわからないまま演じているらしいというのが
心強かった(笑)

事情をわかってるのはなにやらカヲルくんだけらしいし。
しかも教えてくれないし(苦笑)


ただ
14年という時間が経過した舞台設定はおもしろいと思う。

“新”の意味があると思うし
それでいてなおループする
シンジくんの「僕はいらないの?」な事態はかなり痛々しく、
永遠の14歳のジレンマって感じ。

打って変わって
アスカが確実に次のステージに行き
よりたくましくなってるのは嬉しかった。

マリという新キャラも、
相変わらず出自などは不明ですが

アスカがこういうスタンスになることで
進行を俯瞰できるキャラとして
また
単純に「ガス抜き」として
存在意味が出てきたなあとか思いました。

でも、ホントに出てくる新キーワードや
世界の状況は全然わからない(笑)

ロンギヌスの槍と一対だった(はずの)
カシウスの槍ってなに?(笑)

最初にアスカたちがやってたことってなに?(そこから?笑)

これは、何度も繰り返し観て
解明するしかないですねえ。

実際、同時上映の
「巨神兵東京に現れる」は展覧会で観て2回目でしたが
前回より、意図するところがわかりやすかったし。

てか、ここで描かれていることが
すごくシンプルな「エヴァ」なんじゃないかと
思いたくなりますね。

自分が楽になるためにも(笑)


劇場はけっこう満員で
隣と前の座席は全員小学生の男子グループ。

見終わって「次はこうじゃね?」とか話している彼らに
のどまで出かかりました。

「ね?おばさんに解説して?ね?」(笑)

・・・ホントにわかってんのかな~
だとしたらすげーなー。


★11/17(土)から全国で公開中。

「エヴァンゲリヲン新劇場版:Q」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

綱引いちゃった!

2012-11-20 23:38:56 | た行

思ったよりイケたんですけど
冷静に考えて
誰が観るんだろう、こういう映画・・・


「綱引いちゃった!」69点★★★★

***********************

生真面目な千晶(井上真央)は
大分市役所の広報課の職員。

市長(風間杜夫)から
大分市のPRのため、女子綱引きチームを結成しろと
無理難題をふっかけられた。

そんなとき
千晶の母(松坂慶子)が勤める給食センターが廃止となり
同僚たちも全員リストラの危機に!

千晶は母とその同僚たちを
綱引きチームにスカウトするのだが――?!

***********************

「舞妓Haaaan!!」「なくもんか」の水田伸生監督と
「フラガール」などの脚本家が組んだコメディ。

最初は演出の小細工が気になったんですが
中盤から意外に盛り上がっていきました。

主人公が千晶っていうのも
何か「ん?」というものもあり(笑)

なにより
玉山鉄二がいい!(笑)

田舎の兄ちゃんの微妙な、
いやハッキリ言ってダサいファッションが似合いすぎるし

手強いオバチャン集団のなかで
孤軍奮闘する唯一の男、ということでがんばってる。
(シチュエーションは
なんか先のフジのドラマ「カエルの王女さま」とそっくりだけど(笑)

内容は
綱引きメインというよりも
寄れば下ネタ的「田舎のおばちゃん」集団のおかしさと
それぞれが抱えるいかにも“ありそうな”事情の共感度がミソ。

「下半身」という単語にいちいち反応して悶える
天衣無縫系な母(松坂慶子)と、
生真面目な娘(井上真央)の凸凹コンビも悪くない。

母が娘に言う言葉、
「女同士は白黒つけんと、グレーがいいの」という言葉に
つくづく「なるほど」でした。

だから自分、女子グループの仲間に
一切入れなかったんだな(苦笑)

8人合わせて体重500キロ以下がルール、とか
競技綱引きの「へぇ」もあり、
大分のご当地ムービーでもあります。

と、いうことで
うーん結局、どんな人にオススメなんでしょ?(笑)


★11/23(金・祝)から全国で公開。

「綱引いちゃった!」公式サイト
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人生の特等席

2012-11-19 08:59:09 | さ行

ラストの盛り返しと
エイミー・アダムスのキャラで加点!

映画「人生の特等席」71点★★★★

***********************

メジャーリーグ最高のスカウトマンと言われた
ガス(クリント・イーストウッド)。

データ重視のスカウトマンが多いなか
地道に球場に足を運んで、選手を観察する主義を貫いている。

しかし歳を重ね、
最近はさすがに体力の衰えを感じることもしばしば。

しかも、目が見えにくくなっていた――。

そんな父を心配する
一人娘のミッキー(エイミー・アダムス)だが

父と娘の間には、微妙な距離があり――。


***********************


監督のロバート・ロレンツは
「インビクタス/負けざる者たち」や「ヒア アフター」などの製作を務め、
20年の間、クリント・イーストウッドと組んできた人物。

「もう俳優業はしない」と言っていたイーストウッド氏ですが
今回はそんな盟友の初監督作に
胸を貸した、というところでしょうか。

大リーグのスカウトマンを題材に
老いの現実や世代の確執、
父と娘の無器用な絆・・・などを盛り込んだ
“王道”ドラマで

伏線の張り方とか
もっとサササッと効果的にできないか?とか
まあ多少のひっかかりもあるんですが
ラストで盛り返してくれて、逆転です。

しかし
イーストウッド氏は82歳。

ぶっきらぼうで口悪く、目も悪く
カッとなりやすい“暴走(ぎみ)老人”は板に付いていますが
(加齢黄斑変性は、早くお医者さんに行った方がいいですよ~

さすがに最初は
「彼が現役のスカウトマン?
(ポンコツすぎね?)」と、無理な気もした。

そこを補ってくれたのが
娘役のエイミー・アダムス。

父に連れられて少女のころから球場で育ち
男社会に揉まれて育ったタフなしっかり者。
しかも野球に詳しいという

快活なキャラが、よかったです。

なんつうか父娘の物語は
母娘のそれよりも
スッキリ爽やかでいい。

自分を振り返っても、そんな気がします。


★11/23(金・祝)から全国で公開。

「人生の特等席」公式サイト
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする