ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

アメイジング・スパイダーマン

2012-06-24 12:04:58 | あ行

世界に先駆けて
日本で公開、ってスゴイねえ。

「アメイジング・スパイダーマン」3D版 69点★★★☆

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ピーター(アンドリュー・ガーフィールド)は
8歳のとき科学者だった父と離れ、
叔父(マーティー・シーン)と叔母(サリー・フィールド)に育てられた。

理系頭脳の持ち主だけど
学校では冴えないヤツで

クラスメートのグゥエン(エマ・ストーン)
片思いしているが、とても言い出せない。

そんなある日、ピーターは
父がかつて務めていた会社を見学に行き、
偶然、特殊なクモにかまれてしまう。

そしてその日から、ピーターの身体に異変が起こり――?!

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新たなキャスト、新たなストーリーでスタートした
「スパイダーマン」。

まず印象として、
アクションよりも
青春ハイスクールストーリーの比率が高い感じ。

これは「(500)日のサマー」監督だからでしょうかね。


あと現代におけるリアリティ作りに
気を遣ってるなと。

すべての始まりとなる
研究所のハイテク設備が最先端だったり、

敵キャラの成り立ちだったり、

ヒロインがキャーキャー騒がなかったり(笑)。


スマホにYouTubeの時代に、
都会を飛び回るヒーローがどれだけ違和感ないかの土台作りに、
かなり時間がさかれてました。


そもそも続編シリーズを見越して、
配分を「スパイダーマンになるまで」「誕生」においているわけで、

1作に全てを詰め込んで、
あとで「その後」ができるっていうパターンと、
はじめから違ってるわけですわな。

その分、7割は3Dメガネはいらないんじゃないかと(笑)


新スパイダーマンとなったアンドリュー・ガーフィールドは
華奢でヒョロヒョロだけど、
逆に身軽なスパイダーマンに思ったより似合ってました。

理系頭脳の持ち主で、メカ作りも
コスチューム作りも器用(笑)


そう考えると自分的には
トビー・マグワイアがチミチミと
スパイダーマン服を縫って、着た、
あのシーンの吹き出し感が一番好きかもしれない(笑)


★6/23(土)、24(日)3D先行上映。6/30(土)から全国で公開。

「アメイジング・スパイダーマン」公式サイト
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プレイヤー

2012-06-23 19:39:52 | は行

すごーくざっくりいうと
ノリは「ハングオーバー!フランス版」(笑)

「プレイヤー」55点★★☆

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パリ在住のフレッド(ジャン・デュジャルダン)と
グレッグ(ジル・ルルーシュ)は親友どおし。

お互い妻がいるが、
夜な夜なクラブに出かけてはナンパをし、
一夜の情事を楽しんでいる。

そんな二人はラスベガスに行く夢を
持っているのだが――。

*********************

本年度アカデミー賞を席巻した
「アーティスト」の主演&監督コンビの
“トーキー映画”ということで注目されてる本作。

トーキーどころか
多いにしゃべくってるコメディです。
ジャン・デュジャルダンの本職はコメディだそうですからね。

「アーティスト」コンビだけでなく、
数人の監督によるオムニバス映画で、

男の“浮気”にまつわる
単品エピソードを集めてあります。


最初は、はっきりとパートが分かれているふうでもなく、
同じ俳優が、いきなり別の役を演じたりするんで
混乱したけど、

わかれば「そういうものか」と。

そうした遊び心も
タイトル「プレイヤー」にかけてあるんでしょうね。


番長的には
「アーティスト」コンビより

「この愛のために撃て」(11年)の
フレッド・カヴァイエ監督×ジル・ルルーシュ主演コンビが
参加していることに注目して欲しいなー。


で、中身はというと
思いっきり遊んでる感じです。

ドタバタだったり、一芸オチだったり、
けっこう笑えるものもあり。


「男の浮気は生存本能」はいいけど、

「男が(浮気を)やれば甲斐で、女がやればアバズレ」という、
男の根本的な思考の間違いが
あらわになってるのがおかしかったり(失笑)


「アーティスト」コンビに関していえば、
この二人は徹底的に“粋な遊び心”という点で
結託してるんだなあと思ったり。


ただ全体として
あまり感銘を受ける話ではないですね。

オチがフランス的・・・かな(笑)

★6/23(土)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開。

「プレイヤー」公式サイト
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ブレイクアウト

2012-06-22 22:57:00 | は行

ニコール・キッドマンが妻っていうのが
もうさ、フツーじゃないんだよね・・・(笑)

「ブレイクアウト」58点★★☆

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ダイヤモンドディーラのカイル(ニコラス・ケイジ)は
妻(ニコール・キッドマン)と
反抗期の娘と3人で豪邸に暮らす金持ち家族。

が、その豪邸に
4人組の強盗が押し入ってくる!

一味はダイヤを狙い、
カイルに金庫を開けさせて、すぐにずらかるはずだった。

しかし、事態は計画どおりには行かなくて――?!

*******************

「評決のとき」「バットマン」シリーズなどで知られる
ジョエル・シューマカー監督作。


舞台はすべて屋敷のなか。

強盗に襲われて、
普通なら15分で済んじゃう話なのに、

いやはや
ニコラス・ケイジもタダでは従わず、
がんばるなあ、という物語です。

この「おっ」という意外性は
メル・ギブソンが誘拐犯に反撃した
「身代金」(96年)に似てるし、

シチュエーションとしては
ジョディ・フォスターの
「パニックルーム」(02年)に似てます。


どうせダイヤを奪ったら殺すつもりなんだと、
銃を突きつけられつつ、
金庫を死守しようとするニコラス・ケイジの
反撃や奮闘に「おお~~」と感嘆。


強盗にダイヤの売り方を講義したり、
アノ手この手をしてるうちに、

犯人側の事情も明らかになり、
なにやら内輪もめっぽくなってゆき、

あげく美人妻キッドマンの隠し事や
夫婦間の問題も明らかになってゆく。

まだがんばるのか。
今度はその手で反撃するのか。
ありゃ、また捕まったのか。いや、もういんじゃないか……(笑)と。

アイデアは面白いんですけど、
被害者側の反撃、ピンチ、反撃、またピンチ……の繰り返しに
ちょっと飽きてくるんですよねえ。


警備会社のセキュリティ対策も、
意外に厳重なんだなあと感心させといて、
肝心なところで詰めが甘いし(笑)

ニコール・キッドマンの美しさ
物語をかき回す役目を果たしているんですが、

しかしもう彼女って
そんなレベルじゃないでしょう、と。
ダイヤより
あきらかに彼女のほうが価値あるでしょう、と(笑)

ベテラン監督がいい役者を使った反面、
役者が話を食っちゃった、という感じも
しないでもないですハイ。

★6/23から新宿バルト9ほか全国公開。

「ブレイクアウト」公式サイト
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それでも、愛してる

2012-06-21 21:21:40 | さ行

ちょっと難しい作品でしたね~。


「それでも、愛してる」52点★★

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玩具会社の社長であるウォルター(メル・ギブソン)は
あるときうつ病になってしまう。

カウンセリングも薬も効かず
1日中寝ている夫を
妻(ジョディ・フォスター)はどうしようもできない。

そんなある日、
ウォルターはビーバーのパペット人形を拾う。

それを左手につけると、
なんとビーバーが人格を持ったように
しゃべり出したではないか!

ビーバーを操ることで
自分のホンネを話せるようになったウォルターは
明るく快活になっていく。

妻や幼い次男はよい兆しだと喜ぶのだが……。

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映画化されてない優秀な脚本=“ブラックリスト”に
2008年から入っていたものを
ジョディ・フォスターが監督&主演した本作。

しかしコレはですねえ
難しい題材なのに
さらに難しいことになっちゃってるんですよねえ。


近年、うつや精神病は映画の題材になることが多く、
観るひとの経験値も上がっている。

なのに
本作には病人のリアルさに
微妙なところがあるんですよねえ。

ビーバーのぬいぐるみを手につけて
ハイテンションになる主人公は
はたからみると
一人芝居にしか見えない奇異さで、

もはやうつ病というよりも
ほかの疾患では?と思えてしまう。(失笑)


医学的に正確かどうかは
映画にとって絶対問題ではないけど、

この場合はやはり気になるんですよねえ。

だってこの作品はファンタジーではなく、
キャストも演出も、雰囲気も
王道&マジメな家族ドラマなんだもん。

どうしてもリアリティを欠いた
印象だけが残ってしまう。

脚本そのものが難しいと思うので
よほどの魔法をかけないと
映画として成り立たなかったかなと思います。


それにいまや
うつだけじゃなく
病気をした人や、心に傷を負った人にとって

その経験から再生することが
イコール「100%もとの自分に戻る」ではないっていうのは
だいたいみんなわかってる気がするんですよ。


あくまでも
「その経験をした人」として、
ときに得がたいものを得て、
次のステップに行くものだと。

それを言いたかったとすると
ひどくまどろっこしかった。

ただ、
ラスト、高校生の長男の卒業の言葉が
いい言葉でちょっと響きました。


★6/23(土)からシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「それでも、愛してる」公式サイト
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ブラック・ブレッド

2012-06-20 23:40:51 | は行

スペインは子どもをうまく使った
映画が多いなあ。

「ブラック・ブレッド」72点★★★★

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1940年代、スペイン内戦後のカタルーニャ。

少年アンドレウ(フランセスク・クルメ)は森のなかで
親子が惨殺されるのを目撃してしまう。

被害者はアンドレウに
「ピルトリウア・・・」と、謎の言葉を残して死んでいく。
ピルトリウアとは
森の洞窟に住む怪物の名前だった。

事件を調査した警察は
アンドレウの父親(ルジェ・カザマジョ)を容疑者と断定する。

父は左翼運動に関わり、
以前から警察に目をつけれられていたのだ。

父は姿を消し、アンドレウは
その後、驚きの真実を知ることになる――。

*************************


アルモドバルの「私が、生きる肌」を押しのけて
米アカデミー賞外国語賞に選出された作品。

ファンタジーではなく
スペイン内戦を背景にしたミステリーで、

人が生きる糧とは、信念とは何か?といった
政治的、社会的な高潔を描いていて、深みがあります。

「理想を失ったとき、人は邪悪になる」という
アンドレウの父の言葉が
映画を貫いている。


なにより
スペインは子どもをうまく使った、
息を潜めるような映画が本当に得意なんだよなあ。


子どもたちは常に大人のウソを見抜き、
目と耳をそばたてて、
大人が隠しておきたい秘密を暴いてしまう。

お国柄なのか?

あるいは彼らは子どもの
あの特有のバンビのような瞳の奥に、
純真さよりも

全てを見透かされているような
居心地の悪さや、恐怖を感じるのかもしれない。


死の臭いが身近にあった時代を想像させるダークな色調で、
残酷なシーンも少しありますが、
直接的な描写は控えめでした。


ちなみに当時は階級によって
食べられるパンが分かれていたそうで、
タイトルはの「黒いパン」とは
貧乏人が食べる黒いパン、という意味です。

★6/23(土)から銀座テアトルシネマ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。

「ブラック・ブレッド」公式サイト
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