奇妙なほどずっと、頭から消えないんです。
「新しい街 ヴィル・ヌーヴ」71点★★★★
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1995年、カナダのケベック州モントリオール。
英仏二語が公用語であるカナダにおいて
フランス語圏であるケベック州は、カナダからの独立がこれまでに何度も盛り上がってきた。
実際、15年前の1980年にも独立投票があったが
そのときは、反対票が多かった。
主人公ジョゼフは、そんな1980年の敗北を引きずり
アルコールに溺れ、妻エマや息子と別れていた。
そしていま、
再び独立のための投票が行われることに。
賛成票が50%を超えれば、カナダからの独立を果たせる。
しかし、ジョゼフは独立運動が盛り上がる都会を離れ、
海辺の街ヴィル・ヌーヴで家を借りる。
そこは元妻エマとの想い出の地でもあった。
エマに電話をし「こっちへこないか」と誘うジョゼフ。
最初は相手にしなかったエマだが、
やがてヴィル・ヌーヴへと車を走らせる――。
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カナダ発、全編モノクロームの墨絵で描かれたアニメーション。
1995年、カナダのケベック州モントリオールを舞台に
ケベック独立運動の挫折を抱えた中年男と、その元妻の物語で
独特の淡い線で
砂のようにサラサラと消えていく人物や風景が描かれます。
そこにあるのは
社会変革を目指すも道遠く、挫折から立ち直れず
現実や妻子から逃避した中年男のグズグズ。
それを詩的に、叙情的に描き
「虚無」の感覚が、
絵とマッチして、アートに昇華されているなあと思った。
でも、最初観たときは、正直そんなに「うお!」という感じではなかったんです。
しかし、観たその夜に
この絵で、夢を見たんですよね。
で、それからずっと頭から
この寄せては返す波のように、もろく、うつろな感覚が、消えない。
この映画、ワシにとって
いま、この日本で感じているもどかしさや虚無感に
ものすごくマッチしてしまったのかもしれない・・・と思うのでした。
ちなみに本作のインスピレーションのもとになっているのは
レイモンド・カーヴァーの短編「シェフの家」だそう。
レイモンド・カーヴァーといえば、村上春樹氏の訳でけっこう読んだなあ。
★9/12(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
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