ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

靴ひも

2020-10-17 19:03:56 | か行

イスラエル発の好映画!

 

「靴ひも」72点★★★★

 

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エルサレムで小さな自動車整備工場を営む

一人暮らしのルーベン(ドヴ・グリックマン)のもとに

一本の電話がかかってくる。

それは別れた元妻が、事故で亡くなったという知らせだった。

 

葬儀に赴いたルーベンは、そこで

母親の死に大泣きしている

30代後半の一人息子のガディ(ネボ・キムヒ)と久々に再会する。

 

ガディには発達障害があり

かつてルーベンはそんな息子をどう扱っていいかわからず、

妻子から逃げ出していたのだった。

 

ルーベンはガディを受け入れる施設が見つかるまで

狭いアパートでガディと暮らすことになるのだが――?!

 

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発達障害のある息子ガディと

36年ぶりに暮らすことになった父親ルーベンの物語。

 

監督自身が発達障害のある息子の父親だそうで

なーる!と納得しました。

 

だってガディの描写が、とても魅力的だから。

 

映画の冒頭、母の葬儀で

つっかえつっかえ弔辞を読む、こののっぽの青年を

「だいじょうぶ?」と一瞬思うのだけど

観ていくほどに、愛すべき人!と思えるんですよ。

 

 

ガディは

食べ物同士がくっついているとダメ!とか

午後1時には絶対にランチ!とか、独自のルールを持っていて

予想外のことが苦手。

 

そんなガディの「個性」をなかなか理解できないルーベンは

最初こそイライラしたり、ぶつかったり。

でも、近所の食堂の女性リタや、ルーベンの整備工場のスタッフは

それをガディのキャラとして自然に受け入れる。

そして、明るくて人なつっこいガディに

フツーに魅力を感じて接していく。

 

そんな人々を見ながら、また息子と向き合いながら

ルーベンもガディを受け入れ、ともに成長していく――という展開。

 

そう、ガディのような人々は

その個性や違いを理解してくれて

サポートしてくれる人々に囲まれれば、問題なく社会生活が送れるんです。

 

それは同情とは決して異なるもので

一人一人が自らの意思で持つことができる、ある種の「人間力」だと思う。

できれば持っていたいけど、自然に、ってのがなかなか難しい。

この映画は、それを持つ人たちの素敵さをさりげなく描くことで

社会をそっと、いい方向に押してくれる気がするんですな。

 

ガディを演じるネヴォ・キムヒ氏は

監督の息子さんが暮らすコミュニティに取材に行くなどして

このキャラクターを創り上げたそうです。

 

そして中盤からの展開は

実際にイスラエルであったニュースだそう。

ラストは少々ビターではあるけれど、

これでいいんだな、とも思うのでありました。

 

残念ながら、人間力を持ち得ない人物として描かれるのが

ルーベンの弟とその奧さん。

彼らのスカしたオシャレハウスを訪ねた後の、

二人のやり取りが最高に痛快っす(笑)

 

★10/17(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「靴ひも」公式サイト


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2 コメント

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Unknown (dalichoko)
2020-10-18 05:00:16
イメージフォーラムですね。
面白そうです。
(=^ェ^=)
返信する
ぜひ (ぽつお番長)
2020-10-25 23:25:27

ご覧いただければ!
返信する

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