ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

未来を乗り換えた男

2019-01-07 23:30:09 | ま行

「東ベルリンから来た女」監督の新作です。

 

「未来を乗り換えた男」72点★★★★★

 

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現代――より少し未来かもしれない、パリ。

 

ドイツ人青年ゲオルク(フランツ・ロゴフスキ)は

ファシズムの嵐吹き荒れる祖国を逃れ、パリにやってきた。

だが、パリにもドイツ軍が侵攻し、安住の場所はない。

 

そんななか、ゲオルクはあることから

反体制的なドイツ人亡命作家を訪ねるが、作家は自殺していた。

 

なりゆきから、作家になりすまし、マルセイユへ逃亡したゲオルクは

そこで、作家の妻(パウラ・ベーア)を見かける――。

 

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最初、

いつの時代の話だかまったく読めず、設定が分からず

ずっと「??」だった。

 

原作は1942年に書かれた小説で

それを「現代」に置き換えて映画化したそう。

 

映画は予備知識ナシで!という方も

この映画に関しては、この土台は、知っておいたほうがいいかもしれません。

かなり混乱すると思うので。

 

まあ、見るうちに、なんとなくはわかってくるんですけどね。

難民問題をはじめ、不法入国者や外国人を排除する状況が

極端に進んだ現代世界の不穏を、

ナチスドイツのあの時代に重ねているのだ――と。

で、その違和感のなさに、ビビる。

 

 

そんな痛烈な風刺のなか、

自殺したある作家に成り代わった主人公(フランツ・ロゴフスキ)と

夫であるその作家を探し続ける美しい妻が出会う。

男は女を追い、女は姿なき夫を追いかける。

追っても追っても、その先が見えない切なさ。

 

「東ベルリン~」も「あの日のように抱きしめて」も、

クリスティアン・ペッツォルト監督は歴史や激動の社会を

人が持つ“愛”や”感情”に落とし込む表現を好んでいるようで

一貫してるなあと思います。

 

そして

主人公ゲオルクを演じるフランツ・ロゴフスキ氏は

いまワシがかなり好きな「希望の灯り」(4/5公開)でも

めちゃくちゃ印象的な芝居をしています。

要チェック!

 

★1/12(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかで公開。

「未来を乗り換えた男」公式サイト

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