なんと見事な人生哀歌だろう!
「妻の愛、娘の時」77点★★★★
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現代の中国。
母の死を看取った50代後半の娘フイイン(シルヴィア・チャン)は
母を父と同じお墓に入れるため、父の田舎を訪れる。
だが、そこでは父の最初の妻ツォン(ウー・イエンシュー)が
頑なに父の墓を守っていた。
フイインの父はツォンと結婚してすぐに
出稼ぎで都会に出てフイインの母と出会い、家庭を持った。
しかしツォンは長い歳月、
帰らぬ夫をずっと田舎で待ち続けていたのだ。
が、ツォンの存在を受け入れられないフイインは
自分の母こそ本妻だと証明するために
両親の結婚証明書を探しにいく。
一方で、そんな母の行動に違和感を感じるフイインの娘(ラン・ユエティン)は
密かにツォンに会いに行き――?!
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「恋人たちの食卓」(94年)や
ジャ・ジャンクー監督の「山河ノスタルジア」(15年)など
多くの映画に出演してきた名女優シルヴィア・チャンが主演・監督した作品。
なんと見事に綴られた人生哀歌にして人間譚だろう!と驚きました。
おしゃれ~なブックカフェもある現代中国を舞台に
夫を待ち続けた老女(ウー・イエンシュー)と
いわば第二夫人のような状況だった母を持つ娘(シルヴィア・チャン)、
さらに彼女の現代的な娘(ラン・ユエティン)が、
それぞれの想いを胸に、自分の信念を貫こうともがく。
三世代の女性たちの苦悩や葛藤に
激変する中国の“いま”が、見事に映り込んでいるあたり
すごいなあと思いました。
登場人物それぞれのキャラも魅力的で
気の強い妻(シルヴィア・チャン)をサポートする優しい夫のやりとりが微笑ましいんですが
夫を演じているのは、なんと映画監督のティエイン・チュアンチュアン!
シルヴィア・チャンの娘役のラン・ユエティは
山口百恵か上戸彩か、という雰囲気の美人で
自身も仕事かプライベートかに揺れる現代女性を体現してる。
そして
夫を待ち続けた信念の老女演じる、ウー・イエンシューの存在感!
夫の墓に抱きついたり、いきなり暴走したりする彼女も含め
それぞれのキャラや出来事が絶妙なカリカチュアにもなっていて、随所でプッと笑わせる。
そこもいいなあと思いました。
★9/1(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。