とにかく人、人、人!(笑)
そこに浮かび上がる「アメリカ」。
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「ザ・ビッグハウス」70点★★★★
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想田和弘監督、登場人物一ケタの「港町」の次は、
10万人超のアメフト・スタジアムを観察!
想田監督が初めてアメリカで撮った観察映画、でもあり
日本映画やドキュメンタリーの研究者でもあるマーク・ノーネス氏ほか
ミシガン大学の学生たち16人と共同監督した、という点で
これまでの作品とはちょっと違ったテイストになっていると思います。
今回、観察の対象になったのは
全米最大のアメリカンフットボール・スタジアム、通称「ザ・ビッグハウス」。
ミシガン大学のチームの本拠地で、収容人数10万人以上。
そのバックヤードや観客、OBが集うパーティーなどにカメラが入っていく。
州立大学の財政がアメフト人気とOBの寄付で成り立っている実態、
多額の寄付をしたOBが座れるVIP席の風景。
父親と観戦にきた少女に
「チョコレートはどう?」と売りに来る幼い少年。
折しもトランプ大統領誕生前で、
選挙カーがスタジアム周辺にやってくる、なんてシーンもある。
ひとつのスタジアムの観察から
貧富の格差やナショナリズムなどをも内包した
まさに「ザッツ・アメリカ!」な風景が見えてくる。
そこがおもしろい。
そして、たぶん
想田監督が撮った部分はここだな、とわかった。
そこからぐっと「観察対象」が浮き上がってきたから。
(まあ、監督が対象に話しかける声も聞こえたんだけど。笑)。
そしてやっぱり「おもしろそうな人物」「おもしろそうな瞬間」のとらえ方がうまい。
優れたドキュメンタリーにおいて
撮影者が、何を撮るか、何を見ているかがどれほど重要か、が
非常にわかりやすく、明らかになった気がしました。
★6/9(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。