強烈なタイトルとビジュアル。全米で異例ヒットのドキュメンタリー。
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「私はあなたのニグロではない」69点★★★☆
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作家で公民権運動家でジェームズ・ボールドウィン(1924ー1987)。
オバマ前大統領やマドンナも敬愛する彼の
1979年に書かれ、未完となった原作をもとにした
ちょっと変わったドキュメンタリーです。
ふつうに「人物を追う」とか「関係者のインタビュー」で構成されるのではなく
ボールドウィンが自身の言葉を一人語りしていく構成で
(語りを務めるのはサミュエル・L・ジャクソン)
当時のニュース映像や、「黒人が映画でどう描かれてきたか」など映画のシーンを引用しながら
黒人差別の歴史と、変わらぬ現実を突きつけてくる。
ボールドウィンの言葉で一本の道を作りながら
さまざまがコラージュされていく、というのでしょうか。
1957年、パリで執筆活動をしていたボールドウィンは
アメリカ南部の高校に黒人としてはじめて入学した少女の写真をみて、ショックを受ける。
白人生徒たちにつばを吐かれ、笑われながら登校する彼女の姿に触発され
アメリカ南部を旅し、公民権運動の指導者メドガー、マルコムX、キング牧師と出会う。
しかし次々と彼らは暗殺されてしまう――。
ワシがおもしろいなと感じたのは
映画やテレビCMから「差別」を考察しているところ。
コーンフレークでも住宅CMでも
「正しく美しく、幸せそうな」白人ファミリーの姿が映り、
いっぽうで黒人の役割は……と一目瞭然。
「招かれざる客」(67年)のシーンなど、改めていろいろ考えさせられた。
ただね
語られることは重要なのだけど
このスタイルは、正直かなり眠くなる確立が高い!(苦笑)ので
集中してみる必要があります。
それでもボールドウィンのピリッと真実をつくストレートな言葉は
現代にビシビシと突き刺さる。
「なにを、幸せなフリをしてるのか?」
「腹が立つのは、口先だけ(私たちに)味方する人々だ。彼らが一番大切なのは、自分と収入だ」とかね。
そして
おそらくパンフレットにも掲載されているであろう
プレスの越智道雄先生(英語圏政治・文化研究者)の寄稿がすごいので、ぜひ読まれたし!
ボールドウィン同様に
ピリッとガリッと歯切れよく真実を突いていて刺さります。
★5/12(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。