ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ある天文学者の恋文

2016-09-21 23:06:40 | あ行

「ああ、そういうことか!」と、わかるまで
時間がかかった自分が情けない(笑)


「ある天文学者の恋文」72点★★★★


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大学生のエイミー(オルガ・キュリレンコ)は
天文学者で大学教授のエド(ジェレミー・アイアンズ)は
恋愛関係にある。

妻子のあるエドだったが
エイミーと彼は学問を介し、深い絆で結ばれていた。

その日も授業の直前まで
エドからのメールを受け取っていたエイミー。

だが、授業が始まり
壇上の教授が告げる。

「偉大な教授、エドが亡くなりました――」

――ウソ!さっきまでメールを受け取ってたのに?!

そしてエイミーは
エドが仕掛けた「謎」を解く旅に出ることになる――。



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「鑑定士と顔のない依頼人」(13年)が
ワシ的にスマッシュヒットだった
ジュゼッペ・トルナトーレ監督の新作です。


自分が死んだ後、恋人だった教え子に
メールや郵便物、動画で
用意周到にメッセージを送り続ける天文学者の話。


教授役は安定のジェレミー・アイアンズ。
教え子で恋人役、物語を牽引するのは
「007/慰めの報酬」や「故郷よ」の美女
オルガ・キュリレンコ。

だけど、二人のシーンはほとんどなく

教授は自分撮りの動画でひとり語りをし、
彼女がそれを受け取るというスタイルなので
ほとんど彼ら二人の
“ひとり芝居”状態なんです。


トルナトーレ監督らしいロマンチックさに溢れていて
ちょっとミステリアスなところもそそられるんだけど

でもさ、
これって、残された人間には残酷だよね・・・
ちょっと引っかかりながら見ていたんですよ。

でも、ラスト近くでようやく
「意味」がわかって腑に落ちた。


これはネタバレとは違うと思うので
書いてしまいますが
この映画のキーは“天文学”の視点。


我々が目にする星の瞬きは、ずっと前に光った光。
死んだ星が、死の間際に放った光かもしれない。
このタイムラグがあるから
死んでからも、星は我々の前に生き続けるのだ――ってことなんですよね。

それが、このストーリーを
成り立たせている。

トルナトーレ監督は20年前にこのアイデアを思いついていたそうですが
当時はメールとかスカイプもなかったので
現実的ではなかったそう。

でも「いまの時代ならできる!」と映画にしたそうです。
なるほどなー。


最後の教授の語りには
確かに「これほどまでにか!」と思う愛が納得できました。

それに
エンニオ・モリコーネの音楽が素晴らしい!

これぞ「愛!」ですな。


★9/22(木)からTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開。

「ある天文学者の恋文」公式サイト
コメント
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