ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

太陽のめざめ

2016-08-03 23:46:50 | た行

この「さじ投げたくなる度」もけっこうなもの。

だからこそ「子どもと関わる」覚悟について
考えさせられます。


「太陽のめざめ」70点★★★★


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マロニー(ロッド・パラド)が
フローレンス判事(カトリーヌ・ドヌーヴ)と最初に会ったのは
6歳のとき。

あのとき育児放棄ぎみの若い母親(サラ・フォレスティエ)は
「くれてやる!」と叫んで
マロニーを判事のもとに、置いていってしまった。

あれから10年。

結局、母親と幼い弟と暮らしているマロニーは
問題ばかり起こす不良少年に成長していた。

そのたびに
フローレンス判事はマロニーに会い、諭す。

だが、マロニーは路上で傷害事件を起こしてしまう・・・。


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手に負えない不良少年と
その成長を離れて見守る女性判事の物語。

どこか
ダルデンヌ兄弟の「少年と自転車」を思わせますが

本作はよりいっそう、実際っぽいというか
「さじ投げ加減」がMAXというか(苦笑)

それゆえに、地味な印象はぬぐえない。
でも、なんか心に残るんですよね。


いっぱいの愛に育まれたとはいえない
問題児の少年マロニーに
劇的な改善や改心などはなく、
何度いっても、衝動によるケンカや、犯罪を繰り返してしまう。


反省の気持ちや、変化の兆しを見つけても
やむを得ない事情で、また事態が悪いほうに向かってしまったり。
本当に堂々めぐりの日々なんです。

そういう子と付き合うということは
これほどに辛抱強い道のりなのだと、つくづく思わされました。


判事役のカトリーヌ・ドヌーブも実に淡々と
年月の経過を演じている。

そして
延々と、救いなく思えるし、
イライラさせられるけれど、
なぜか少年マロニーが頭から離れない。

これこそが
判事や更生担当者の心中と同じなのかもしれない。


これほど困らされても
見捨てられないんですよ。なんででしょう。

マロニーを演じたロッド・パラドが
すっごくいいんですね。リアル迷える子、な感じで。
彼はリセの職業訓練過程にいるところを
スカウトされたそうですが

マロニーの求心力で、
更正を担当する大人たちの忍耐に敬服しつつ、
そのモチベーションに共感できる。

それが、この映画の
大きな意義だと思います。


★8/6(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「太陽のめざめ」公式サイト
コメント
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