「木靴の樹」エルマンノ・オルミ監督(84歳)の最新作!



「緑はよみがえる」74点★★★★




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1917年、冬。


第一次大戦下のイタリア北部。
雪に囲まれた高原で
イタリア軍と、敵対するオーストリア軍は
膠着状態にあった。



塹壕から一歩出れば、狙撃兵に打たれる状況のなかで
イタリア軍の兵士たちは寒さと飢え、病気に苦しめられている。


だが状況を知らない司令部から
「外に出て、通信ケーブルを引け」という
非情な命令が届き――。

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まずオープニングの
モノクロームのシーンがハッ



ロウソクに照らされるそのシーンだけで
写真集が作れそうなくらい。
しかも写っているのは
ブリキの缶やカップなど
なんでもない、貧しいものなのに。

そして、やがてそのシーンが
この映画の舞台となる、1917年、
イタリアの高原の塹壕だとわかる。

そう、この映画は塹壕で過ごす兵士たちの
たった一晩を描いたものなのです。

しかも
オルミ監督の父が従軍した第一次大戦の経験に
基づいているそうなんです。

冒頭のモノクロームの世界は
本編に入るとカラーになるんですが


雪と月明かりに照らされた風景は、ほとんど全編モノクロームのようで
悲惨だけど、冷たく美しい。


しかし実際は
外に顔を出しただけで、すぐさま狙撃されるような状況。

しかも塹壕のなかの兵士たちは
理不尽な司令部からの命令で退くことも許されない。

そのなかで、兵士たちは何を思ったのか?

どんな状況だったのか?

監督は我々を


その塹壕なかへと連れていくんです。

そこは
寒さと、絶望と、死しかない世界。

でもそのなかで
兵士たちのまだ消えない“生”の息づかいが、胸に迫る。

特に
兵士たちがベッドの枠を走るネズミや

塹壕の窓から見える


わずかな生の証や、安らぎを見出そうとする思いを感じて
切なくなりました。

84歳のオルミ監督が父から聞いた話を
ほぼ100年を経て、いま、映像化したということ。
そこに大きな意味があると思うのです。


★4/23(土)から岩波ホールほか全国順次公開。
「緑はよみがえる」公式サイト