ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

抱擁

2015-04-21 23:51:04 | は行

人と関わり、よく笑うことこそが
一番の薬だという実証。

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「抱擁」72点★★★★


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200本以上のテレビドキュメンタリーを手がけ、
映画「青の塔」「ネムリユスリカ」などを撮った
坂口香津美監督が

自身の母親のすちえさんを4年間撮ったドキュメンタリー。


すちえさんはパニック障害で
素人目にも、うつ症状があるとわかる。

パニックを起こすと
苦しそうにうめきながら
「息子が私をいじめる!助けて!」とわめいて
電話をかけたり

「死に場所を見つけた」と言って
深夜の公園に行こうとしたり。

どうにも辛く重い題材なんですが、
手早いカット割でリズムよく見せて、飽きさせない。

厳しい現実に向き合いつつも
客観性と、そこはかとなく漂うユーモアが
作品を、そして誰もの問題である老老時代を
救っていると感じました。


中盤、すちえさんは
故郷の種子島に帰り
妹さんのややゴーインな介護を受けることになるんですが

そこでだんだん治癒していく過程が
映画をさらに愉快にしていく。

すちえさんが
「薬より、食べなきゃ!」と妹さんに
無理矢理ケーキを食べさせられて

「美味しい・・・・・・。あ、頭痛が治った」と言い
姉妹が爆笑するシーンには、見ているこちらも大笑い。

よく食べて、人と交わり、よく笑うことこそ薬……が
よくわかります。

とはいえ
「島に帰って、すっかりよくなった!」とは当然いかない。

それでも、パニックの回数が減ったりしていて
完全に良くなっているのは事実で、

さらに製作・配給の方のお話では
いま、すちえさんは
この映画のラストより、さらに元気になっているとのこと。

よかった~と思います。

近い将来、まったくもって他人事ではない問題を
じっくり見せて考えさせていただきました。

だって、うちの母親
すちえさんにかなーりダブるんだよなあ・・・・・・(笑)


★4/25(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「抱擁」公式サイト
コメント (2)
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