ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

私が、生きる肌

2012-05-25 18:32:49 | わ行

「女」を完璧に「造型」として捉えた
独特のシュールな映像と観点が、監督らしいなあと。


「私が、生きる肌」67点★★★☆

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2012年、スペイン・トレド。

形成外科医のロベル(アントニオ・バンデラス)は
人工皮膚研究の権威。

彼の屋敷には
ベラ(エレナ・アナヤ)という美女がおり、
なぜか全身をボディースーツで多い、
監視モニターでその行動を観察されている。


初老のメイド(マリサ・パレデス)が
ベラの世話をしていた。

ある日、そんな屋敷を
音信不通だったメイドの息子(ロベルト・アラモ)が訪ねてくる。

荒くれ者の息子は、ベラを発見し
彼女に襲いかかろうとするのだが――?!

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冒頭、不思議な部屋のなかで
黙々をヨガをする美女が映し出される。

それはまるでシュールレアリスム絵画のように
完璧な構図で美しい。

しかしよく見ると、素肌かと思ったものは
おかしなボディースーツ!

そんなところもだまし絵チックで
引きこまれます。


妻を失った主人公が狂気の行動に出る話で、
しかも
「皮膚」とか「外科」とかから
ちょっと血まみれを想像していましたが、
思ったほどどぎつい描写はなかった。

豪華な屋敷の様子や、怪しげな実験をするドクターなど
どこか明るくパキッとした映像と謎めいた雰囲気が
「刑事コロンボ」みたいだなあとも思いました。
(バンデラスの顔がバタ臭いところも、昔っぽくて雰囲気がある。笑)


シュールだけど話に整合性はあり、

アルモドバル監督らしいジェンダー視点も全開で
確かに突き詰めているとは思う。

思うんですが、
想定を越えて感じ入るものは特になかった。


謎いっぱいの中盤まではよかったんですが、
タネ明しのあとは少々退屈でもあったし。

でもこの映画は
何があってもネタバレして欲しくない。台無しだもん。


実は試写後、
おっきな声で未見の人に
もっとも確信部分のネタバレをしているおばさんがいたんですよ。

同業者なのか?顔は見なかったけど
恥ずべき行為!怒り心頭!


★5/26(土)からTOHOシネマズシャンテほか全国で公開。

「私が、生きる肌」公式サイト
コメント (2)
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