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ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

2019-08-30 23:57:03 | わ行

2大スター競演の魅力も、もちろんあるけど

これが予想を超えておもしろい!

 

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」73点★★★★

 

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1969年のハリウッド。

リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は

テレビの西部劇で人気の俳優だったが

いまやピークを過ぎ、

映画スターへの転身を考え、焦る日々が続いていた。

 

リックのスタントマンで親友のクリフ(ブラッド・ピット)は

いつもリックの愚痴に付き合い、酔った彼を豪邸へ送り、

自分は小さなトレーラーハウスに帰っていく。

 

スタントの仕事に誇りを持つクリフは

そんな暮らしを悪くない、と思っていた。

 

ある日、リックの豪邸の隣に

時代の寵児であるロマン・ポランスキー監督と

その妻で女優のシャロン・テート(マーゴット・ロビー)

が越してくる。

 

キラキラ輝く二人を横目に

リックは俳優としての生き残りにかけようとするが――?!

 

*****************************************

 

タランティーノ監督×ブラピ×ディカプリオが初競演!

まあそれだけで事件ですがw

1969年に起こった「シャロン・テート事件」をバックグランドに

当時のハリウッドもろもろを描いた作品です。

 

でも

2大スターの共演!ってのはわかるけど

何の話なんだか、イマイチよくわからない!って方も多いかもしれませんので

 

内容こんな感じ、を重点的に

お知らせしてみようかなと思います。

 

まず、この映画の背景となっている

「シャロン・テート事件」については

ワシ

「ロマン・ポランスキー 初めての告白」(13年)

でちゃんと知ったかもしれない。

 

当時「ローズマリーの赤ちゃん」で大ヒット監督となっていたポランスキーと結婚した

シャロン・テートが

妊娠していたのに、屋敷を襲撃されて、殺されてしまった――という悲劇。

 

 

事件は陰惨なものなのですが、

でもね、映画はハッキリいって

この事件自体を描こうとしているわけじゃないです。

 

だから、陰惨さとかはない。

 

あくまでも事件は背景で、

夢いっぱいだったハリウッドの輝ける時代に

架空の人物である

落ち目な俳優リック(レオナルド・ディカプリオ)と

彼のスタントマン・クリフ(ブラッド・ピット)の

「オレらの人生、これから、どうする?」なモヤモヤや、それぞれの生き方を

明るく楽しくユーモラスに、フィルムに留め置こうとしてる。

 

だから、この展開とオチには

「なーるほど、こうきたか!」と誰もが思うに違いない。

その楽しい裏切りこそが「映画的」で、サイコーなんですね。

 

 

過激な血みどろ描写もほとんどなく、

大らかな時代のよき雰囲気が、ゆったりと伝わってくる。

 

映画ファン垂涎な小ネタも満載・・・・・・なんだと思います。

ワシレベルではあんまりわからんけど、でも楽しめますよ、大丈夫(笑)

 

それに

ジョージ・クルーニーとの絡みで

ブラピの笑いのセンスはよくわかってたけど

今回おもしろかったのは

ディカプリオが「自分のキャラをわかった上で笑いにしてる感」を出していたところ。

まるでトム・クルーズに通じるような、可笑しみがあるんですよ。

 

ブラピの武闘派ぶりもイケてたしねー。

さりげなーく上半身ハダカになるシーンのインパクトは強大でございました。

(あれ、CGじゃね?とちょっと疑ってしまう)

 

来日した、タランティーノ監督とディカプリオの

記者会見も、こっそり?のぞきにいったんですが

 

特にそういう話は、会見では出なかったけど

いま、この時代を描いた意味には

現状への反動もあると思う。

 

パワハラ対策も、働き方改革も、もちろん#MeTooだって賛成だし

生きにくい世の中が、どんどんよく変わっていくのは良いことだけど

でもね、正直、なーんかしんどくないすか?

 

みんながタバコを吸いまくり、

美人がもてはやされるのは当たり前。

いま考えたら「ポリティカルにライトじゃない!」ってことばかりかもしれないけど

とにかく、みんなががむしゃらに、ハチャメチャに生きてた、

こんな時代を、ワシら、愛してもいるんです・・・・・・って。

そんな、意思表明にも感じました。

 

★8/30(金)から全国で公開。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」公式サイト

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ワイルドライフ

2019-07-02 01:27:30 | わ行

ポール・ダノ初監督作。

やっぱセンスいいなあ!

 

「ワイルドライフ」74点★★★★

 

***********************************

 

1960年代、米モンタナ州の田舎町。

 

14歳のジョー(エド・オクセンボールド)は

ゴルフ場で働く父(ジェイク・ギレンホール)と

元教師でいまは専業主婦の母(キャリー・マリガン)のもとで

平穏に日々を送っていた。

 

が、ある日、父がゴルフ場の仕事を解雇されてしまう。

 

そして父はボランティアといっていいほど安月給なのに、めちゃ危険な

山火事消火の仕事に行くと言い出した。

 

ずっと父をたてていた母だが

「あなたは逃げているだけよ!」と

仲良しだった夫婦に、口論が増えていく。

 

やがて母は生活のために働きに出るといい

濃い化粧をして出かけるようになった。

 

次第に、噛み合わなくなっていく夫婦。

そんななかでジョーは、自立せねばと

地元の写真館でアルバイトを始めるのだが――?

 

***********************************

 

いや~、マジ、びっくりしました。

ポール・ダノ、初監督とは思えないセンス!このクオリティ!

 

名作「リトル・ミス・サンシャイン」(06年)で

超ナイーブな青年を演じ

その後「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(07年)で

ヤバい宣教師を快演し

私生活でもパートナーであるゾーイ・カザンとの「ルビー・スパークス」(12年)などなど

センスよし&個性派の筆頭であるポール・ダノ。

 

本作はゾーイ・カザンとの共同脚本だそうで

うん、この人、本物だった!

 

なによりまず

主演二人がキャリー・マリガン×ジェイク・ギレンホールって

おいしすぎでしょ(笑)

 

で、内容は

1960年代のモンタナ州の田舎町を舞台に、

すこしセピアがかった懐かしい雰囲気のホームドラマで

1シーン、1カットが

写真集の1ページのように大切に作り込まれてる。

 

もちろん、お話のほうも、ちゃんとしてます。

 

平凡ながら幸せな30代の夫婦と、おとなしめで優しい雰囲気の息子。

そんな優良家族が、父親の失業で少しずつ、ほころびを見せていく。

 

「心を燃やすなにか」を探し、

いまだ大人になりきれない30代の父と母。

そりゃそうですよね、30代なんてそんなもんですよ。

 

でも、子から見れば、父と母は絶対的な大人なわけで。

 

本作は少年が

「父と母」が絶対ではなく、「それぞれ、ひとりの男と、女なのだ」と気づき

嫌悪し、失望しながらも

それを認めることで

大人になっていくプロセスを

やさしく、繊細に描いているんです。

 

それが、まあ、いい感じなのですわ。

 

そしてジョー役のエド・オクセンボールド君がまた

ポール・ダノの分身か?!ってほどに

そっくりなのも興味深いのであります。

横顔から鼻のラインとか、似すぎよ(笑)

いいねえ。

 

おなじみ映画.comさんで

本作のレビューを書かせていただいております。

併せてご参考くださいませー。

 

★7/5(金)YEBISU GARDEN CINEMA、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「ワイルドライフ」公式サイト

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私は、マリア・カラス

2018-12-21 00:43:57 | わ行

この一人称スタイルは、

かなり勇気のいる決断だったと思う。

 

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「私は、マリア・カラス」72点★★★★

 

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名前だけは誰もが知っている

比類なきオペラ歌手、マリア・カラスのドキュメンタリー。

 

トム・ヴォルフ監督は5年にわたるリサーチで

大勢の人に取材をし、素材を集めたそうです。

 

しかし

そうした関係者の証言インタビューは一切使わず

本人のインタビュー映像や未完の自伝、手紙の朗読

(女優ファニー・アルダンによるこの朗読がまた素晴らしい!)という、

一人称スタイルで、この映画をまとめた。

 

それが、実に潔く、効果的なんですね。

 

 

オペラ悲劇も顔負けな波乱の人生を送ったマリア・カラス。

スキャンダルや公演キャンセルなどでマスコミに叩かれもした彼女が

「どういう人だったのか」。

それが、この方法によって自然に感じとれる。

 

 

インタビューに実に正直に答える様子、

常に傍らに犬がいる動物好きな素顔、

オナシス氏への一途な愛と、それ故に、裏切られたときの失望――

 

世紀のディーバを身近な「人」として、感じられるのが

この映画のおもしろさなんです。

 

もちろん

プライベート映像も含め、歌唱の映像もたっぷりで

その歌声の変遷もよくわかる。

 

それにしても稀代のモテ男・オナシス氏にインタビューしてみたくなりましたよ。

「なぜ、あのときジャッキーを選んだのですか?」って。

 

なので、その質問を来週発売の「AERA」12/24発売号でインタビューさせていただいた

トム・ヴォルフ監督にぶつけてみました。

その答えは?

ぜひ、誌面をご覧ください~

 

★12/21(金)から全国で公開。

「私は、マリア・カラス」公式サイト

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若い女

2018-08-22 23:52:54 | わ行

 

なんともフレッシュな才能に、出会えた喜びよ。

 

「若い女」74点★★★★

 

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フランス・パリ。

31歳のポーラ(レティシア・ドッシュ)は

10年付き合った恋人に、突然、部屋から放り出された。

 

途方に暮れたポーラは、衝動的に彼の愛猫を盗み、

友人の家に身を寄せる。

 

だが、ポーラの無神経ぶりに愛想を尽かした友人は

彼女を家から追い出す。

 

しかたなく安宿に泊まるが、そこでも猫の存在がバレて追い出される。

 

猫を連れて、パリを徘徊するポーラ。

彼女の明日は、いったいどっちだ――?!

 

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86年、フランス生まれのレオノール・セライユ監督作。

冒頭からギョッとするほど、破壊的キャラのヒロインが登場し、

しばらくはあぜんとしつつ

成り行きを見守るしかありませんww

 

 

ヒロイン=ポーラは、

自分の“人生の旬”を捧げた年上の恋人にフラレて

やけっぱちになっている。

 

しかも「彼の女」という地位に満足していた彼女には

自分自身の未来のビジョンも、行き場もない。

ゆえに、

途方に暮れ、猫を連れて、パリの街を徘徊することになる。

そんな様子を、カメラは追っていくんです。

 

 

正直ポーラって、感情移入の対象にはとてもならない人物。

エキセントリックで粗野で、自己チューで嘘つき。

 

しかし! ある場面から、猛烈に彼女に心をつかまれたんですよね。

 

それは、ポーラが友人宅からも宿からも追い出され、

にっちもさっちも行かなくなって、地下鉄の構内に佇むシーン。

 

助けを求めるような目をして、行き交う人々を、ただ見つめる。

誰かにすがりたいのに、「助けて」と声を出せない。

そんな彼女の孤独との闘いかたが映画ににじみでていて、グッとやられました。

 

全然、大丈夫じゃないのに「大丈夫」って言ってませんか?

「困ってる?」と聞かれても「ううん」と答えちゃってませんか?

そんな経験、誰にでもあるでしょ?

だからこそ、ポーラがだんだん愛すべき人に見えてくるんだと思う。

 

グレタ・ガーウィグがやりそうなキャラを

さらにアップデートした感じで演じた、レティシアがいい。

 

そして

人間はやっぱり一人では生きられない。

「誰か話す相手がいるか」がどれほど重要かを思い知らされました。

 

 

★8/25(土)から渋谷ユーロスペースほか全国で公開中。

「若い女」公式サイト

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ワンダー 君は太陽

2018-06-11 22:58:19 | わ行


「ウォールフラワー」監督。

うん、いい映画!

 

「ワンダー 君は太陽」77点★★★★

 

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10歳のオギー(ジェイコブ・トレンブレイ)は

遺伝子の疾患で、顔に特徴を持って生まれてきた。

 

ずっと自宅学習を続けてきたオギーを

ママ(ジュリア・ロバーツ)は学校に行かせることを決める。

 

いつも愉快なパパ(オーウェン・ウィルソン)と

優しい姉(イザベラ・ヴィドヴィッチ)に見守られ、初登校をしたオギーだが

奇異なまなざしをむける子どもたちの態度は容赦なかった。

 

いじめられ、孤立するオギーだが

次第に彼の頭のよさ、持ち前のユーモアセンスに、気づく子どもが現れて――?!

 

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文句なしにいい映画! 

 

お涙頂戴でなく、ピュアで爽やかで

笑いながら明るい涙を流せてスッキリします。

 

まず原作者R.J.パラシオが

この物語を書いた動機が素晴らしいんですよ。

 

彼女はあるとき街のアイスクリーム屋で、実際に顔に特徴のある少女に出会ったそうなんです。

そのとき彼女の幼い息子が、驚いて泣き出してしまった。

そして、焦った彼女はうまく対応ができなかった。

パラシオさんはそれからずっと

「あのとき、どうすればよかったのだろう」と考え続け、

その答えを物語に描いたというのです。

 

うーん、実に納得。それをまた監督がよく汲み取って描いてるんですねえ。

 

例によって予備知識ナシで観たので

ワシ、ずっと主人公のオギー少年を、そうした特徴を持つ子が演じてるのだと思って観てた(笑)。

演じているのが「ルーム」のあの天才少年ジェイコブ・トレンブレイ君と知って

二度びっくり。そしてまた納得。うまいなあ。。。

 

 

オギーはとても聡明でキュートで

家族のムードも明るいんだけど、「異質なるもの」への子どもたちの目は容赦なく

オギーは学校でいじめられ、孤立してしまう。

 

でも、心ある少年が突破口を開き、

オギーは少しずつ、世界へ踏み出していく――という展開。

 

またこの話、主人公オギーだけの視点ではなく、彼を取り巻く人々の

複数の視点で語られて進むのが、うまいなあと。

物語を多面的に、俯瞰で観ることができるんですねえ。

 

また切り取られる人物から、

ジュリア・ロバーツらビッグキャストを外したのも、心憎い。

お調子者で一家のムードメーカーなパパ役のオーウェン・ウィルソンもよくハマった。

 

それに

オギーの友人となる少年を演じるノア・ジュブ君がすごくいい。

「サバ―ビコン 仮面を被った街」にも登場してましたが

「リトル・ランボーズ」から出世した

ウィル・ポーターみたいになるだろうな。

 

多様性とは、人が人と違うことを見ないふりをしたり、お愛想の共感で流すことじゃない。

この映画で、改めて、それを教わった気がします。

 

おなじみ「AERA」でスティーヴン・チョボスキー監督とジェイコブ・トレンブレイ君に

インタビューさせていただきました。

テーマに深く共感し、演じきったジェイコブ君、やはり天才。

まるで親子? のような二人でしたが

監督曰く「いやいや!ジェイコブのパパはとーってもハンサムなんだよ!悪いよ!(笑)」だって(笑)

 

6/25発売の号に掲載予定です。

映画と併せて、ご一読ください~

 

☆6/15(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか全国で公開。

「ワンダー 君は太陽」公式サイト

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