とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

DVD「蟹工船」

2010-01-23 23:40:37 | 映画
DVD「蟹工船」を観て

小林多喜二の原作が120万部売れたり、一大社会現象を起こしたと言われる「蟹工船」の現代版のDVDを観ました。確か、流行語大賞を取ったのでは…。

映画館で観るべきだったのでしょうが、田舎では、ほとんど限られた日数の上映だったこともあって観ることができませんでした。
いつものTSUTAYAに新作で並んでいました。
これはやっぱり観なければということで借りてきました。

1953年版の映画は一度、大学の構内で観たことがあります。
俳優の山村聰の監督主演昨だと覚えています。
古い映画で画面も暗かったことであまりいいイメージは持ちませんでした。

今回の2009年版はどう描いてくるのか、気がかりでした。
原作は主人公と言われるような人は出てこなくて、群像劇のような形なので松田龍平がどういう形で出てくるのか興味がありました。

オープニングは、不思議な光景から始まります。
重たい扉を持ち上げて、眼光鋭いやせた男が目だけを出して、あたりの様子をうかがいます。
やっと扉を持ち上げたら、上空から大量の蟹が降ってきます。

ストーリーを原作からかいつまんで言うと、

 カムチャッカ沖で蟹を獲り、それを缶詰にまで加工するのが蟹工船です。
様々な出稼ぎ労働者を安い賃金で酷使し、高価な蟹の缶詰を生産する海上の閉鎖空間です。彼らは自分達の労働の結果、高価な製品を生み出しているにも関わらず、蟹工船の持ち主である大会社の資本家達に不当に搾取されています。

 情け知らずの監督者である浅川は、労働者たちを人間扱いせず、劣悪な環境の中で彼らは懲罰という名の暴力や虐待、過労と病気(脚気)で次々と倒れてゆきます。
初めのうちは仕方がないとあきらめる者や現状に慣らされた者もあったが、やがて労働者らは、人間的な待遇を求めて指導者のもと団結してストライキに踏み切ります。

映画は、過酷な現場監督と労務担当の雑夫長の2人がこれでもかというくらいデフォルメされた悪役として登場してきます。

監督・浅川を西島秀俊が演じています。
この俳優さんは最近よく使われていますが、2枚目なんだけど、それだけに役柄によってはとことん悪役に見えてきます。
『パッチギ!』2作目でもキョンジャをだます俳優として出てきていました。

蟹漁の小さなボートに乗って、仲間からはぐれてロシア船に助けられて、そこで自分たちの矛盾に気づかされて、蟹工船に戻ってから仲間を組織する漁夫新庄を松田龍平が演じます。

新庄は、仲間たちが、お互いの境遇の貧乏自慢をしているのを思い切り否定します。
新庄は、今置かれている現実を捨てて、来世に期待しようとみんなを集団自殺に追い込みます。
でも、なんだかんだで助かって「首つりはまっぴらだ!死ぬかと思った」と笑い飛ばします。
そんなカリスマ的な新庄にストライキを提案されて、みんなついていきます。
確かに松田龍平はカリスマ的な雰囲気をもっている俳優です。

もう一人印象に残っている登場人物がいます。
蟹工船でもっとも若いと思われる雑夫清水役を演じる柄本時生です。
この若者の心の揺れが、観ている者の心の揺れにつながっていきます。

柄本時生という俳優は何ともとぼけた表情の俳優です。
そのぶん、他の濃い顔の俳優さんたちの中にあって目立つ存在なのです。
実はおいっこにちょっと似ているので、いつもよく覚えているのです。
『俺たちに明日はないっす』タナダユキ監督では主演をつとめました。
この映画では現代的な怠惰な高校生をうまく演じていました。

09年版は、最近の映画ということもあってテンポ良く展開していきます。
「おかしいと思ったら文句を言うだけではだめだ!ちゃんと言わなくては!」
「自分の頭で考えなくてはいけない。ただ、考えるだけではだめ!行動しなくては!」など原則的なこともちゃんと欠かさずに表現していました。

派遣の問題であるとか、パート職員など、低賃金でこきつかわれている現代の労働者たちの問題とあわせて話題になった『蟹工船』です。

蟹工船の中では、労働者が働かなくては運営が全く成り立たないのでストライキは経営者にとって重大な問題になります。

でも、現代において「どうぞ、やめてください。あなたの後ろには大量の失業者が順番待ちをしているのだから…」という脅しの中では、なかなか労働者は団結できにくくされています。

マルクスが資本論の中で明らかにした大量の産業予備軍が労働者を圧迫しています。
派遣労働者は、現役の労働者でありながら産業予備軍的存在でもあるというきわめてややこしい存在でもあるのです。
ここにますます労働者同士の団結を妨げる要因にもなっています。

そんなことを考えるにはいい映画だったように思います。
明日もう一度観てみようと思います。
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