年末のCSで「逃れの街」(1983年)を観ました。
原作は北方謙三なのであさにハードボイルドの王道です。
監督は工藤栄一 主演は水谷豊 他に島田紳助、田中邦衛、阿藤快、夏八木勲等々が出ています。
簡単なストーリーを紹介すると
水井幸二(水谷豊)は家庭電気器具の配送をするトラック運転手として平凡な生活を送っています。
“兄貴"とつきまとう同僚・米倉(島田紳助)と飲みあかしたり、競馬に夢中になったりの毎日に嫌気がさしていました。
ある日、一緒に上京してきた昔の仲間・沼田(平田満)から電話がかかり、幸二は断りきれないまま一晩彼を泊めることにします。
翌朝、沼田は殺人犯として警察に逮捕されます。
しかも、沼田が幸二と一緒に殺ったと偽りの証言をしたため、幸二は共犯者として警察に留置されます。
幸二にはアリバイがあり、その夜一緒だった遠藤牧子(甲斐智恵美)の名をあげます。
彼女が否定したために、さらに警察につきまとわれます。
この事件以来、周囲の目も一変して冷やかになっていきます。
仕事も、実入りの少ない部署に飛ばされます。
そんな幸二のところに牧子が家出までしておしかけて来て、、束の間の癒しの時間がありました。
ところが、牧子の母親と関係しているやくざの渡辺(財津一郎)という男が二人につきまとい、
渡辺は牧子とも関係があることを知った幸二は、彼女のために渡辺と対決します。
幸二と渡辺の凄まじい決闘、ついに渡辺を殺すことになります。
その後、幸二は鈴江宏というみなし児と出会い一緒に生活をするようになります。
渡辺の弟分・芝崎は、仇を討つため牧子をリンチして渡辺を殺した男を白状させます。
芝崎は宏を誘拐し幸二をおびき出しますが、逆に幸二に殺されてしまいます。
幸二は宏を親戚がいるという長野の山中に連れて行くが、叔父の鈴木勝一は選挙活動の最中で、冷たくあしらいます。
幸二は金を奪って宏と共に雪山に逃げ、閉まっている別荘に入り込み、束の間の平穏なひと時を送ります。
そして…。
という話なのですが、撮り方そのものがなかなか昔風なので新鮮でした。
ストーリーだけを追えばそんなに大したことないのに、無駄なカットが随所に出てくるのです。
幸二がどういう人間なのかを周囲からだんだんクローズアップしていく流れが何とも昔風なのです。
兄貴と慕う米倉(島田紳助)だけが関西弁で、どこから彼は流れてきたのか、どうみても正社員には見えません。
会社に住み込んでいるような田中邦衛さんも、ちょっと足を引きずっていてこの人何者?という感じなのです。
幸二は、配置転換に憤って主任とけんかになります。
この主任がもとランキングボクサーあがりでボコボコにやられてしまいます。
連れ戻された牧子を取り戻しに行きますが、やくざの渡辺にかなうわけもなくボコボコにやられます。
一瞬の隙を狙って、石で頭を殴打して殺してしまいます。
やくざの仕返しにしてもめちゃくちゃな狂気の中で殺してしまいます。
幸二は決して、けんかが強くてハードボイルドでかっこいいわけではないのです。
何ともさえない普通の男が、ある日の事件をきっかけに狂気の世界に踏み込んでしまうそういうストーリーなのです。
子どもと知り合う場面あたりから様子が変わっていきます。
部屋でスーツに着替えて、ポーズを作って出かけるシーンは、ハードボイルドそのもの主人公になっていきます。
子どもと出会うシーンのカット割りは水谷豊そのものをかっこよくするためのシーンとしか思えないほどです。
ただし、映像的には面白いシーンです。
ストーリーは、自分が好きだった女を無理やり関係してきた男に復讐するという話しなのです。
最近ブログで紹介している映画はこのパターンがやたら多いようです。
私は愛や恋をそれほど、信じるタイプではないのでそこまで切れる人たちのことがイマイチ理解できません。
しかも、守るべき相手でもない人のケースばかりなのです。
でも、こういうモチベーションが万人受けするのは昔からなのでしょうね。
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