とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

映画「人間の壁」

2008-07-16 17:50:09 | 映画
 WOWOWで映画「人間の壁」を観ました。
1959年の作品です。原作は石川達三で、かつての教師たちのほとんどが読んでいるのではないかと思うような作品です。
監督は、社会派監督と呼ばれる山本薩夫です。それだけでももう観たくなります。
この時ばかりはWOWOWに加入していて良かったと思いました。

 キャストは 香川京子(志野田ふみ子(尾崎) 宇野重吉(沢田先生) 高橋昌也 (一条先生) 宇津井健(穴山先生) などです。
実に時代を感じさせる教師集団になっています。

 作品は、戦後の時代逆行を背景にした右傾化の波を歴史背景にしています。その時代に教職員組合に対する攻撃が一気にかかります。映画の中ではS県となっていますが、実際は佐賀県をモデルにしています。
当時、教師のほとんどが加盟していた日本教職員組合(日教組)に対する不当な攻撃と分裂工作が吹き荒れていました。
山口県でも、分裂攻撃がかけられて、第二組合がスタートしたことは知られた事実です。

 映画では5年生の担任になった女性教師の目を通して歴史を認識していく流れになっています。家庭訪問を通して、子どもたちのおかれた生活の状況を把握していきます。親の失業や、劣悪な家庭環境のために学校に行きたくても行けない子どもや、自分の居場所がないために学校で次々に問題行動を引き起こす子どもの姿に心を痛めます。

 しかし、経済的な理由を根拠に退職勧奨が始まります。矛先は共稼ぎをしている女性教師に向けられます。主人公のふみ子もこの対象になります。
ふみ子の夫は組合の執行委員をしています。家庭にもあまり帰らないところをみると、専従役員なのだと思います。
でも、組合役員を出世の道具としてしか考えていない人間のようで家庭でも暴君として描かれています。

 ふみ子は、退職勧奨をはね返す闘いの中で次第に組合の役割を意識してきます。
隣の教室には、人間的にも教育実践の上でも尊敬できる沢田先生がいます。しかし、この沢田先生は、教育実践家タイプで組合の活動には消極的です。
ある日この沢田先生のクラスで事件が起こります。
障害をもっている友だちをいじめている現場を目撃した沢田先生は思わず激高して子どもたちを突き飛ばしてしまいます。
教室で訓話してその場は済んだように思いましたが、突き飛ばされた子どもの親が“暴力事件”とでっちあげて問題にしていきます。
保守的な人たちはこれ幸いとばかり大きく取り上げていきます。
「原因は戦後の民主主義がいけない!」「赤い組合がリードしているのがいけない」など一大キャンペーンを張ります。

 組合の職場会でも個人の問題にすべきか、分会として闘うか議論しますが結論が出ません。結局沢田先生は「いつかわかってもらえる。教育の真実は子どもだけだ」と退職することになりますが、その沢田先生を訪ねたふみ子に対して「一人では闘えないことがわかった。今度別の職場に勤めた時は、みんなと一緒に闘う」と伝えます。

 ふみ子は一緒に退職勧奨されていた別の教師が、退職を飲んだ事に対して校長室に行って取り消してもらうと他の女性教員を連れて校長室に向かうところで映画は終わります。

 ストーリーを追うばかりでなく、子どもたちを取り巻く環境も織り込んでいくところに山本監督のリアリズムの世界があります。

 若手の熱血漢として描かれている宇津井健演じる穴山先生があるときはピアノであるときは高らかに歌い上げる「われら~われら~われらの○○組」の歌が何ともなつかしくて、教員になったばかりの頃を思い出していました。
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