パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

人間だもの

2008-10-10 22:25:45 | Weblog
 ブックオフで、「日銀は誰のものか」を百円で購入。

 著者は中原伸之。志水、福井の両総裁の元で理事を勤めていた人で、量的緩和を積極的に推進した人だ。

 量的緩和というのは、よく知らないのだが、たしか銀行が大量に買い込んでいる日本国債を日銀が買い入れるという政策だったと思う。ということは、銀行に金が流れるということで、これが「量的緩和政策」だ。

 この中原氏の姿勢は当初孤立無援だったが、やがて支持者が増え、というか、背に腹は変えられぬということか、ともかく中原氏の提言は福井氏の総裁就任後認められ、日本経済は長期低迷を抜け出ることガできたと評価されている。

 「日銀は誰のものか」は読み始めたばかりなのだが、二ケ所ほど印象的だったところをあげると、「マスコミは日本経済崩壊とか言って人々の不安を煽るけれど、経済というのはそもそも、人々の暮らしそのものなわけだから、人々が生活するのをやめない限り、崩壊するわけがないんです」というくだり。

 なるほど、そうだ。というか、私も以前からそう思っていた。

 マスコミは、崩壊崩壊というけれど、いったい何をもって崩壊と言うのか。身長170センチの人の身長が0センチになるわけはない。

 って、変なたとえだが、まあそういうわけだ。

 もうひとつは、日銀理事をやめてから、欧米の記者たちがインタビューにやってきて、「日銀は外国の著名な経済学者の意見をなかなか聞こうとしなかったのは何故か?」「中原さんは量的緩和を主張したが、何故採用が遅くなったのか?」と聞いてくる。

 これに中原氏は、「日本ではすべてが必然的に起こるのです。ですから、私は一切説得はしませんでした」と答えたところ、欧米の記者氏は興味津々といった表情で私の言葉を聞いていた、というのだ。

 「24」なんか見ると、説得されるか、説得するかのドラマだから、「説得はしません」「やるべきことは必然的に決まるのです」という中原氏の言葉は、欧米人にはいかにも不思議に、あるいは神秘的にすら聞こえただろう。

 しかも、その日本が、ポリネシアの小さな島か何かだったらいざ知らず、依然としてアメリカに次ぐ、経済大国だものなあ。アメリカをスペシャルと考えれば、世界一だ。その国の決定システムが、説得ではない、というのだから、不思議に思うだろう。

 もちろん、中原氏の言っていることは、「満場一致システム」を哲学的に言い換えただけなのだけれど、理屈をいくら言っても駄目だが、では理屈を言わないのがいいかというと、そうでもなくって、「説得はしない」という中原氏だって、持論を伏せて言わなかったというわけではないだろう。むしろ積極的にあちこちで発表したが、それで「説得」しようとしなかったということで、実際は、「持論」をじわじわと「空気」にまで仕上げていったわけだ。

 この日本式決定システムは、現今の欧米の金融危機を見ると、もしかしたら悪くないやり方なのかもしれないとか思ったりする。「24」なんか見てると、いかにもリーダーシップが水際立っているが、成功すればかっこいいが、失敗も多いだろうと思う。

 しかし、総じて言えば、理屈を戦わせて結論を得るという方法が王道だと思うし、そうなるべきだとは思う。

 「24」で言うと、今回、大統領主席補佐官を勤めた、ちょっとおたくっぽいぽちゃぽちゃした白人の小男の言動が一番現実的だと思った。

 盗聴をしている男女がセックスを始めて、「長いな、いつ終るんだ……」とか、実に現実的な感想で……いや、これは関係なかった。

 緒形拳って誰かに似ていると思っていたら、あれだ。「人間だもの」の相田みつお先生。

 顔は知らないので似ているかどうかわからないが、人間として、似てそう。

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