「ワークライフバランス」というむなしい響きを持った言葉はありません。07年版国民生活白書が高市少子化相から閣議に提出されたそうですが、その中身は職場で長時間労働やIT化で個人の仕事量が増加して人間関係が薄っぺらになっていることから経済・社会に深刻な影響を与えると白書は警告しているそうです。職場以外に家族や地域での人間関係もやはり薄っぺらであると指摘しています。
たとえば、職場を例にとりますと白書が指摘しているとおり、長時間労働は常態化して過労による「ウツ」症状を訴えるサラリーマンや、自殺者数も右肩上がりの状況であるのに政府はこの現実を知っていながら、軌道を修正するどころかなんら対策を構じようとしていません。言葉だけ飾っているだけで「ワークライフバランス」を本気になって企業に求めていない後ろ向きの姿勢に終始している限り、益々人間関係は薄っぺらなものになること間違いありません。違法なサービス残業も見て見ぬ振りは、企業の不法行為に加担していることになります。長時間労働で若者の就業機会を奪っていることは、いかにも見苦しいことを経営者は真剣に受け止めるべきですが、カネのかからないサービス残業をさせてほくそえんでいるバカな経営者も相当数いるのです。
サラリーマン受難を助長したのは、政府は常に経済界の求める市場原理主義をバックアップして使用者に絶大な権限を与えることに専念、労働側の分断に力を注いできた結果といえます。禁じ手の労働者派遣を原則自由化したことは使用者が泣いて喜んだのです。これには民主党も手を貸しているのです。これが成立したウラには経済界特に経団連が奥田前会長時代に小泉政権に政治献金を再開、いわゆる「カネで政治を買う」ようになってからです。政府はカネのためサラリーマンを人質として売ったのです。政府与党は平気で弱い立場の人たちを裏切ったのです。
この6月から個人の市県民税が大幅に引き上げられましたが、これは定率減税が完全に廃止されたことにあります。各自治体には苦情が多数寄せられ対応におおわらわとのことです。市県民税だけでなく所得税の定率減税も廃止されることから、個人には大幅な増税が待っているのです。小泉政権のとき定率減税の廃止が決定されました。一挙に廃止すると反発が怖いと思ってか2年間で半分に分けて廃止したのです。この減税措置がなくなることにより個人は3兆円規模(市県民税8千億、所得税2兆2千億)の増税となります。すなわち国と地方に3兆円の税収入が転がり込むのです。忘れていけないのは小泉政権のとき「消費税は在任中上げない」と大見得を切っていましたが、定率減税を完全廃止したことで、実質3%の消費税を上げた計算になること記憶しておいてください。弱いものいじめて増税しているのです。
一方個人の定率減税とセットで導入された法人税減税については、そのままの税率が適用されて是正することは見送りとなりました。これは企業優遇の典型で個人そっちのけです。そして政権与党は、最低賃金法改正案を含む労働関連3法案を今国会成立を先送りしたのです。7月末に行われる参院選で経営側を刺激することを避けたいため、あえて弱い立場の労働者を切り捨てたのです。あれだけほかの法案は強行採決を繰り返し成立させたのに、労働関連法案にはソッポを向いたのです。このように政府の姿勢が「企業サイド」であることから労働者を保護することなど最初から念頭にはないのです。白書が求める「ワークライフバランス」を確立させるには「政治とカネ」を断ち切ることから始まるのです。政財界の蜜月がある限り国民生活の向上はありません。