▼私の地域や周辺地域でも、森林の大規模な伐採が続いている。戦後、薪ストーブの燃料として、大量に伐採され荒涼とした光景は記憶にあるが、最近はそれ以上の、伐採面積のように思う。伐採されているのは主に杉だ。戦後、国が補助金を出して杉を植樹させたようだが、杉は成木になるのが60年から80年で、他の木より成長が早く、間伐もしやすいので推奨されたという。
▼戦後72年がたったので、今が伐採時なのだろう。林がなくなり見通しが良く、周囲が明るくなった開放感もあるが、漁業で生計を立てる私たちの地域は、森林の保水作用が弱くなり、大雨で土砂が海に流入しないか心配だ。以前、私の地域の道有林が伐採され、泥が海に流れ込んで海が汚れ、ウニや昆布の生育に被害が起きる心配があったので、町会連合会が道有林管理センターに請願書を出したことがあった。
▼個人の所有が主で、伐採に制限をかけるには至らないようだ。函館市も市の保有林だと思い700本を伐採したが、その木が個人所有だったことが判明する、うっかりミスを起こしている。海外の需要があり、値段も高騰しているのも伐採の要因らしいが、それにしても「あまり切りすぎではないか」という周囲の声も聞こえる。環境問題という視点で、市議会で討論されたという話も聞こえてこない。新聞も、今のところその視点は見えていない。
▼木を伐採させた人に尋ねると、業者がやってきて、近所に重機が入るので、ついでにいかがですかという話だ。育った木がお金になるので、ほとんどは承諾するが、値段の相場もわからないので業者の言うままらしい。A社が20万円と言いB社は30万円といったケースもある。中には、この木を切らなければ、強風で倒れたら近所迷惑になりますよという誘いもあるようだ。
▼お互い承諾すれば、契約は成立するが、隣接する木の伐採で、木の切り株の大きさも同じようなところで、土地面積の3倍ほど大きな持ち主が、3分の1程の伐採の金額を知り、憮然とした表情をしたのを感じた人もいたという話も聞く。高齢者世帯の多い過疎地域なので、安易に承諾してしまうからかもしれない。
▼つい最近だが、私の地域で伐採業者が、倒れた木の下敷きになり死亡した事故があった。専門業者のあってはならない事故だが、地域外の人のようなので、事故の真相は伝わってこない。この事故を含め、道内では、今年すでに3人が伐採事故で死亡しているのを、新聞の記事で記憶している。
▼地域の安全・安心とは何かを、普段考えている町会役員の一人だが、北朝鮮のミサイルに抗議する市議会決議も結構だが、もっと身近な市民の生活にも注目してほしいものだ。
▼空飛ぶ鳥たちも、眼下に森がなくなる様子を見て、何を思うだろうか。先日、伐採された付近で、200キロの大熊が捕獲された。森の混乱ぶりに、沖縄の米軍基地建設に翻弄させられる県民の気持ちを、ちょっぴり重ねてみた。