▼ 今朝、20センチも雪が積もった。朝に弱い妻も早起きをしての除雪が始まる。ほんのかすかに湿り気のある雪なので、雪かきはしやすい。投げやすいのだ。これより、ほんのわずかに湿り気があると、重くなり身体に負担がかかる。「雪かきに最適の雪だね」と妻が言う。「いい雪だね」。私もそう思う。若い時と違い、老体になると、雪にもいい雪と悪い雪があるのだ。
▼ 風があり、顔面に雪のシャワーを浴び、童心に返ったような気分になる。家の前はすぐ海なので、雪は海岸の方に捨てる。砂に生育する硬質の草の林に、スズメが寒風を避けるように、群れなしたたずんでいる。灰色の空にはカモメが一羽、私の頭上を旋回している。♪トンビがぐるりと輪をかいた♪とは、三橋美智也の歌だが、♪カモメがぐるりと輪をかいた♪と、思わず口ずさんでしまう私だ。
▼ なんだか、そんな光景を見て一句作りたくなった。「寒スズメ津軽海峡冬景色」 「カモメ舞う津軽海峡冬景色」。石川さゆりさんのヒット曲しか浮かばぬ、創造性に欠ける早朝の私だ。家の前の除雪が終わり、一息ついたところで「町会おじさん雪かき隊」の登場だ。主に身体の不自由な方や、独居老人家庭の除雪を行う。「すまないね、ありがとう。お茶でも飲んでいって」といわれるのが、こちらのパワーの源になる。
▼ 高齢者を狙った、振り込め詐欺が続出している。詐欺にかからないよう随分注意をしているようだが、詐欺師たちの手口は日々上達進化しているので、騙される人が後を絶たない。最近の手品もそうだ。目の前で行っても、どう凝視していても、その手口がまったくわからない。なぜこうも、日本人は騙されやすくなったのだろう。
▼ 除雪を終えて新聞を開くと、アベ総理の施政方針演説が掲載されていた。「日本を取り戻す。そのためにはこの道しかない」という。どの道なのだろうか。岩倉具視の言葉を引用し「日本は小さい国かもしれないが、国民みんなが心を一つにして、国力を盛んにするならば、世界で活躍する国になることも決して困難ではない」といい、明治の日本人にできて、今の日本人にできない訳はないともいう。今こそ、国民と共に、この道を、前に向って、再び歩みだす時だ」と力説している。
▼ ちょちょちょちょちょっと待ってんな、この道と言うのはもしかして、いつか来た道とちゃうかいな。ごっつい軍靴の足音が、坂の上めざして進むのと、なんだか、おんなじ気がするが・・・ラッスンゴレライ・ラッスンゴレライ。私もよくわからないが、最近テレビで「ラッスンゴレライ」なる意味不明の言葉で、テンポよく語る漫才師がいる。意味不明の総理がいる日本には、ぴったりの漫才師の登場のような気がするので、つい私も真似てみた。
▼ 庭に目を向けると、外は絶え間なく細雪が降っている。明日の朝も、雪かきが待っているのだろう。最後に一句、搾り出してみた。
「降る雪や明治は近くなりにけり」 三等下