函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

野党は何のためにあるのか

2024年03月01日 14時52分55秒 | えいこう語る

▼政治倫理審査会が始まった。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を追求するためだ。つまり“脱税問題”を政治家たちで、審査する会だ。

▼脱税であれば、国税庁の仕事だ。脱税であれば追徴金が課されるはずだが、それもないというのは、脱税ではないということだ。

▼検察庁も捜査に入ったが「不起訴処分」となった。犯罪でもなく脱税でもなければ、なんのお咎めもなく、問題にすべきではない。

▼犯罪者でもない者を、世間が悪者のように扱い、マスコミで報道すること自体、法治国家ではないような気がする。

▼だが衆議院の「政治倫理審議会」に、関係者が出席し「政治倫理」が問われ、尋問されている。脱税でも犯罪でもない者が、国民公開の場で、審議されるというのは「リンチ」ではないか。

▼無罪の者を「晒し者」にするというのは、正当な法治国家とは思えない。この審議会は「政治倫理」について判断するだけのようだ。

▼そもそも政治に倫理があるなどというのを、政治家自体が判断するというのが、納得がいかない。

▼「沖縄の本土復帰」でノ―ベル平和賞を受賞した元首相佐藤栄作は、後に米国との密約(金銭の供与)があったことが明らかにされた。

▼こんな事件こそ、国家の名誉にかかわることなので「政治倫理審査会」で、ノーベル賞返還を決定するのが筋だ。

▼第一回目の審議会に、キシダ総理が立った。自民党総裁として党幹部の不祥事を謝っているのかと思ったら、総理自身がパーティー券問題での脱税で、倫理委員会で弁明していた。

▼総理自身が関与していた事件なので、国税庁も検察庁も、見逃したのかとやっと納得した。我が国では、政権与党に「治外法権」が認められているようだ。

▼では‟野党”の役割とは、何なのだろうか。政治学者で、同志社大教授の吉田徹著「野党論」(ちくま新書)から、参照させていただいた。

▼【野党は民主主義にとって、不可欠なリソースの一つだ。それが十全に機能しない限り、民主主義も安定しない。支持するか否か、投票するか否かに関係なく、野党に期待しないということは、自分たちの選択肢を捨てているのと同じことになる】。

▼全くその通りだと思う。近年田舎おやじでも民主主義の劣化を感じている。これは政権与党のせいだと思っていたが、実は野党の体たらくにも責任がある。それ以前に、国民の政治に対する関心のなさが問題だ。

▼【野党とは特定の政党ではなく、民主政治における機能と役割に還元されるものだ。それは汲みつくせぬ『民意の残余』を、政治に表出するものであり、このような「野党性」が発揮されることで、むしろ民主政治は安定し発展するのだという】。

▼『民意の残余』。そういえば、私の今までの投票は「残余」だ。その受け皿が野党だというのは納得する。野党がなければ、民主主義は崩壊する。

▼【自民党には「事前審査制」があり、原則自民党内の関係部会での了承と、総務会での全会一致の了承合意でなければ、政府は法案を国会に提出できないことになっている。これは多数派の了承をあらかじめ調達し、根回しをしておくのと同じことだ】。

▼【端的に言えば、野党には「法案修正権」を実質的には与えられていない。法案は可決されることが前提になっている】という。

▼しかし、国会開催中に議決に至らなければ『会期不継続の原則』がある。そこで与野党の「国会対策委員会」が水面下で交渉し、落しどころを探るということになる。

▼以前は、与党から野党に金銭で解決したということも、私の記憶の片隅にある。もしかして、今回の自民党による「脱税問題」も、それらの‟軍資金”調達の流れが、派閥の領袖たちの身体に、染みついていたのかもしれない。

▼こうなれば、野党はいらないのかということになりかねない。しかし自民党一党独裁になれば、どんな国になるか、国民は想像できるはずだ。

▼私の単純な予想でも、国会議員も自衛隊も胸を張って「靖国参拝」を行うに違いない。もうすでに自衛隊幹部が、靖国参拝をしたということが、報道されているからだ。

▼健全な野党がいて、民主主義は正常を保つというのなら、野党は国民を味方につけなければならない。

▼「倫理審議会」が終わったら、全国各地で『国民との対話』を行うべきだ。国民を味方にしなければ、今の日本民主主義を、健全に戻す方策はないからだ。

▼吉田徹は、現在政治学の礎を作った、米政治学者ロバート・ダールの野党論を紹介する。

▼【野党は政治において有用なツールに過ぎない。それでも民主主義にあって、野党がなぜ発明されねばならなかったのかを、知っておくことは有益だ。民主主義の長い歴史において、この貴重な発明品をどう使いこなすか、それは主権者一人ひとりの「これから」にかかっている】という指摘だ。

▼ダールは民主主義の三大発明は「議会制民主主義」と「普通選挙権」と「野党」だという。

▼総理自らも出席した「政治倫理審議会」。試されているのは‟主権者”である「国民」だという自覚が、一番必要な気がする。